公認会計士に必要なスキルとスキルアップ方法
公認会計士は監査業務を扱う会計の専門家です。
3大国家資格の1つである公認会計士試験に合格するだけでもかなりの努力が必要ですが、クライアントに良質なサービスを提供するために、試験合格後も色々なスキルアップが求められます。
そこで今回は、公認会計士として希望キャリアを築いていくために必要なスキルについて解説します。
あわせて、スキルを獲得した後に拓けるキャリア選択肢も紹介するので、ご自身の展望形成にお役立てください。
公認会計士として、今後のキャリアアップを考えたい方は、お気軽にマイナビ会計士にご相談ください。最適な転職先を見つけるためのご提案をさせていただきます。
マイナビ会計士編集部
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公認会計士になるには何が必要?
公認会計士として働くためには、難関国家試験である「公認会計士試験」に合格する必要があります。
どれだけ公認会計士のキャリアアップに役立つスキルをもっていたとしても、国家試験に合格しなければせっかくのスキルを役立てられません。
そこで、まずは公認会計士資格取得に求められるスキル・公認会計士試験の概要を押さえましょう。
公認会計士の資格
公認会計士試験は短答式試験・論文式試験の2段階選抜方式の国家試験です。医師国家試験・司法試験と並ぶ三大難関国家試験に位置付けられています。
短答式試験は年2回実施され、受験資格は問われません。
年齢・性別・国籍・学歴などを問わず、誰でもチャレンジできます。
これに対して、論文試験を受験できるのは原則として短答式試験合格者のみで、実施されるのは年1回だけです。他の取得資格・過去の実務経験があれば一定範囲で試験科目が免除されますが、大部分の受験生は以下の試験科目すべてを受験する必要があります。
●短答式試験の試験科目:財務会計論・管理会計論・監査論・企業法
●論文式試験の試験科目:会計学・監査論・租税法・企業法・選択科目(経営学・経済学・民法・統計学のうち1科目)
どの試験科目も難易度が高く、最終合格率は毎年約10%の低水準であるため、公認会計士試験に合格するには、平均して合計4,000時間、約2年~3年は厳しい受験生生活を送る必要があります。
したがって、公認会計士試験合格には継続力・自己管理能力が不可欠だと考えられるので、できるだけ早いタイミングで自分なりのカリキュラムを立てるか、予備校・通信スクールなどの活用をご検討ください。
実務経験と実務補習
公認会計士として働くためには、日本公認会計士協会の公認会計士名簿への登録を受けなければいけません(公認会計士法第17条)。
そして、公認会計士名簿への登録を受けるためには、次の3つの要件を満たす必要があります。
つまり、公認会計士試験への合格だけでは足りないということです。
●公認会計士試験に合格していること
●実務経験(業務補助など)の期間が2年以上あること(改正後は3年)
●実務補習を修了・修了考査に合格し、内閣総理大臣の確認を受けたこと
実務経験とは、業務補助・実務従事のことです。
監査法人・税理士法人・コンサルティングファーム・一般事業会社の経理職などの実務歴を指し、公認会計士試験合格前の実務歴も含まれます(ただし、これらの勤務経験すべてが「実務経験」に含まれるわけではなく、監査証明業務などに関連するものだけに限られる点に注意が必要です)。
実務補習とは、公認会計士試験合格者が受ける3年間の座学研修のことです。単位制になっており、平日夜・休日に週1・2回程度実施されます。必要単位を取得した後は、修了考査に合格しなければいけません。
たとえば社会人受験生の場合には、実務経験に含まれるような職場で働きながら公認会計士試験の勉強をし、試験合格時には「実務経験」要件を充たしているのが理想モデルです。そして、試験合格後は監査法人などで働きながら実務補習をこなし、3年後に正式に公認会計士登録をすることになります。
公認会計士に向いている人|適性も診断してみよう
「受験資格を問われない」という点では公認会計士試験は極めて平等な資格試験ですが、試験科目の特殊性・難易度の高さから、試験への適性がある点を見逃せません。
もちろん、次で紹介するような適性がない人でも努力次第で公認会計士試験合格を果たすのは不可能ではありませんが、適性がある人よりも努力が必要だという点は忘れないようにしましょう。
●計数感覚(数字を読む力)
●論理的思考力
●正義感
●根気・継続力
●学習意欲・知的好奇心の高さ
公認会計士に必要なスキル
公認会計士試験に合格した後は、登録前は監査法人などで実務経験を積むのが一般的な流れですし、登録後はそれぞれが希望するキャリアを進むことになります。
そこで、公認会計士の王道的働き方である監査法人・独立開業について、それぞれ求められるスキルを見ていきましょう。
会計士試験に合格するためのスキル
公認会計士になるには、最難関といわれる公認会計士試験に合格しなければ始まりません。
会計士試験合格のためには、膨大な学習範囲を網羅しなければならず、2~3年以上かけて合格することが一般的です。長期にわたって、計画的に学習を続ける必要があります。自分で立てた計画を実行していく継続力と自己管理能力がないと難しいでしょう。
また、公認会計士は財務諸表や帳簿などの数字をチェックする機会が多いため、「数字を読む力(計数感覚)」があるにこしたことはありません。
しかし、試験勉強においては物事のロジックを理解する「論理的思考力」を求められることが多いといえます。論理的思考力は試験勉強を通して養われる部分もありますが、普段から筋道を立てて考える習慣が身についている人はより伸びやすいかもしれません。
監査法人の仕事で求められるスキル
監査法人での仕事は監査が主流になります。監査は膨大な資料を決められた期間内にチェックし、不備や問題点を洗い出して確認していく作業の積み重ねです。高度な会計知識と正確性を備えていることが前提となります。
加えて、効率よく業務を進める処理能力、効率よく仕事を進めるためのPCスキルをはじめとするITリテラシーの高さは不可欠です。前述の数字を読む力(計数感覚)に長けていると、監査業務では特に強みとなるでしょう。
そして、指摘事項の確認や必要な情報を引き出すためには、交渉力も必要になります。ヒアリングや監査結果の説明などで上場企業の経営層と接する機会もあり、コミュニケーション能力が求められます。監査以外のコンサルティング業務では、業務改善や問題解決を提案する企画力、プレゼン能力が必要になります。
独立開業するために必要なスキル
独立開業する場合、公認会計士としての業務だけでなく、仕事を獲得するための営業活動を自分で行わなければなりません。リスクヘッジのためにも、営業活動は継続的に続けておくべきで、営業力や人脈を形成するための人間関係構築のスキルが重要になります。
また、従業員を雇用するようになれば業務だけでなく人事面でのマネジメントや、事務所運営といった経営能力が必要になります。
<ココまでのまとめ>
・会計士試験合格のために必要なのは継続力、自己管理能力、論理的思考力など。
・監査法人の仕事では、業務処理能力、ITリテラシーの高さ、交渉力など。
・独立開業では、営業力、マネジメント、経営能力など。
公認会計士がプラスしたいオプションスキル
公認会計士としてキャリアを積むためには、多様な顧客ニーズに対応できるだけのスキル・実績を積み重ねていく必要があります。公認会計士試験に合格した段階で成長が止まると、せっかく苦労して資格を取得したのに仕事がなくなりかねません。
そこで、公認会計士としての仕事幅を広げていくためには、次のようなオプションスキルの獲得を目指すのが望ましいと考えられます。
●英語力
●税務
●ITスキル
英語力
外資系企業だけでなく、グローバル展開に対応するため、経営幹部として海外の人材を迎えたり、英語を社内公用語にしたりする企業が増えています。
そうしたクライアントを担当する会計士は当然、語学力を求められることになります。
税務
企業にとって会計と税務はひとつの流れであり、切り離して考えることはできません。
監査業務では、税務に関する処理も監査対象となりますので、知識は必要になります。
さらに、独立して会計事務所を起こす場合には、税務に関するニーズがメインになるため、税理士登録と税務知識は必須と考えるべきです。
ITスキル
企業の会計処理にシステムを利用することが常識である現在、財務報告を作成するシステムを監査する「IT監査」が行われています。会計や業務知識に加えて、プログラムなどのITの知識が求められます。
IT監査の需要に対してITスキルをもつ人材は少なく、募集する法人は多いため、転職を考える際には有利になります。また、会計とITの知識を活かして、IT分野の商品企画やコンサルティングへの転身も考えられます。
<ココまでのまとめ>
・英語力は外資系企業だけでなく、グローバル展開する企業の仕事に必要。
・税務は、会計事務所を起業する場合は必須。
・ITスキルはIT監査のほか、IT業界へのキャリアチェンジの道も。
公認会計士のスキルアップ方法
監査業務のメインスキルだけではなく、公認会計士に不可欠なオプションスキル獲得を目指すのなら、1つの監査法人内で日々淡々と業務をこなし続けるのではなく、多様な業務にチャレンジするのがおすすめです。
たとえば、公認会計士の代表的なスキルアップ方法として次のようなものが挙げられます。
●海外赴任を経験する
●マネージャー職に就く
●他職種に転職する
海外赴任を経験する
ひと口に海外赴任といっても、クライアントの状況により、求められる英語力のレベルは異なります。
日本企業の海外子会社などでは、英語の会話力よりIFRS(国際財務報告基準)やUSGAAP(米国会計基準)の知識を重視する場合もあります。
英会話に自信がもてない方は、TOEICのスコアやUSCPA取得で海外赴任のチャンスをつかみ、より実践的な語学力を身につけるのもひとつの方法です。
マネージャー職を経験する
監査法人におけるマネージャー職は、業務を把握しチーム全体を管理するほか、クライアントとの窓口となって、さまざまな折衝、交渉を行います。
担当するクライアントの契約更新や新規案件の開拓などの営業的な役割も期待されるポジションです。
マネージャーとしての、独立開業に必要な営業力や経営管理能力、人脈形成に役立つでしょう。
他職種に転職する
将来的にコンサルティングや経営に携わりたい場合には、監査業務だけでは経験不足となる傾向があります。事業会社での会計責任者やIPOなどの経験はコンサルティングに活かせます。
<ココまでのまとめ>
・海外赴任の経験でより実践的な語学力を身につける。
・マネージャー職を通して営業力や経営管理能力を身につけ、人脈を形成する。
・事業会社での会計責任者やIPOなどの経験はコンサルティングに活かせる。
公認会計士のスキルを活かせるキャリア
公認会計士として誇れるスキルを獲得した後は、そのスキルを活かせるキャリアを見つけましょう。
公認会計士には、監査法人以外にも次のようなキャリア選択肢が用意されているので、
数年後・数十年後の姿をイメージしながら身を置くべき場所を見定めてください。
●会計事務所・税理士法人
●コンサルティングファーム
●事業会社
●金融機関
会計事務所・税理士法人
会計事務所・税理士法人に転職する場合、監査のスキルを活かす機会は少なくなります。クライアントの多くは中小企業や個人事業主で、経理や決算業務、税務申告などが中心になります。
中小企業の税務や経営コンサルティングを経験することができ、独立開業の準備段階としては有効です。
コンサルティングファーム
M&Aなどを手掛けるコンサルティングファームでは、デューデリジェンスで、監査法人での経験を活かせます。一方、コンサルタントは、クライアントの課題解決を提案する仕事であり、 課題発見や問題解決を企画立案する能力が求められます。監査スキルがそのまま生かせることは少ないですが、監査を通じて多くの企業に接した経験は活かせるでしょう。
事業会社
事業会社で会計士のスキルが活かせるのは、主に経理部門や監査室です。
IPOをめざす企業がCFOとして公認会計士を迎えることも多く、監査法人への対応、M&Aなどのデューデリジェンス、資金調達など、IPOのための各種業務が考えられます。経営参画のチャンスもおおいにあります。
金融機関
金融機関では、IFRS導入などを見据えて社内の経理部門で公認会計士を採用しており、経理職以外に、内部監査やリスク管理、経営企画などのポジションをめざすことができます。
M&A、事業承継などのサービスを内製化する傾向もあり、会計士のスキルが活かせる場は多いでしょう。
<ココまでのまとめ>
・会計事務所や税理士法人では監査スキルを活かせる業務は少ない。
・監査スキルを活かせるのはM&Aのデューデリジェンスなど。
・事業会社では経理部門、内部監査のほか、IPO準備企業のCFOや経営参画のチャンスも。
・金融機関では会計知識、監査などを幅広く活かせる場がある。
まとめ
公認会計士にとって必要なスキルは幅広く、すべてをバランスよく身につけられることが理想ですが、どのようなキャリアを選択するかで優先順位は変わってきます。同じ公認会計士でも、監査法人での監査業務、コンサルタント、事業会社のCFOでは仕事内容がまったく違うように、必要とされるスキルも異なります。
どのようなポジションで、どんな仕事をしたいかというビジョンを定め、ご自身のキャリア戦略にあわせてスキルを磨いていきましょう。
マイナビ会計士を利用して
転職された方の声
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進路について適切なアドバイスをしてもらえました!自分の進路について明確な答えが出せていなかったものの、どの業種に進んだら良いかなど適切にアドバイスをしてもらえました。どういったキャリアを積んでいけばより市場価値を高められるのか、候補の会社がどう違うのかを具体的に説明していただけました。(30代/会計士)
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求人の提案力と面接のフィードバックが良かった!タイムリーな求人の紹介とフィードバックの提供が良かったです。面接前の情報提供では、自分のアピールしたい強みが、面接先企業のどこに符号しており、今後の展開をどう捉えているかの思考の整理をする際に役立ち、安心して面接を迎えることが出来ました。(30代/会計士)
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