会計士として海外で働くには?出向と転職の違いを解説!
会計士として活躍できる舞台は国内だけとは限りません。
アメリカのビジネススクールでMBA(経営学修士)を取得した後、そのままアメリカでコンサルティングファームに就職する、勤務先の監査法人からの出向でオーストラリアの提携事務所で働く、中国の日系企業で現地採用され働く…など、海外で活躍している会計士も数多く存在します。
しかし、海外勤務は簡単にできるものではなく、実現するにはどのようなキャリアを積みたいかを見据えた上で準備することが不可欠です。ここでは、会計士が海外で働く場合のおもなルートや必要な英語力、期待できる年収の目安、国別の状況の違いなどについてご紹介します。
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マイナビ会計士編集部
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海外で働くにはどのようなルートがあるか
どのような業種でもそうですが、自国以外で働く方法としては「国内企業からの出向」と「現地法人への就職」の2つのルートがあります。
会計士の場合は、企業で働くか監査法人で働くかという選択もあるため、計4つのルートが考えられます。4つのルートそれぞれの特徴は、次のとおりです。
国内監査法人からの出向
国内Big4と呼ばれる四大監査法人(あずさ・EY新日本・トーマツ・PwCあらた)は、グローバルに活躍できる人材を育成するため、世界各地のグループオフィスや法人がメンバーとなっているグローバルファームに人員を派遣する研修プログラムや、海外赴任プログラムを実施しています。
期間は1年から数年単位が多く、派遣先も南北アメリカ、欧州、アジア、アフリカと多様です。Big4以外の監査法人でも、グローバルファームのメンバーになっていたり、海外事務所と交流を持っていたりするところはありますが、毎年一定数の人員を海外に派遣している監査法人は多くありません。
日本でこれらの監査法人に就職し、社内での選抜を勝ち抜けば、海外赴任が可能となります。現地での仕事は出向の形態により、国内と同様に監査や税務、アドバイザリー業務などを担当する場合と、日系企業の営業を担当する場合があります。
国内企業からの出向
海外への展開・移転を進める日系企業に入り、海外の子会社や本社に出向する方法もあります。近年では、特にタイやベトナム、ミャンマーなどアジアの国々へ進出する企業が多く、現地に新設する子会社の経理財務部門の責任者となる人材が求められています。
海外出向の場合、最初の3~5年ほどは日本本社の経理部門などに配属され、のちに子会社のCFOとして出向するパターンが多いようです。仕事は財務・経理業務全般から予算の立案、現地スタッフのマネジメントまで多岐にわたり、スペシャリストよりゼネラリストとしての能力が求められます。
現地の監査法人へ就職
海外監査法人の中途採用に応募し、直接現地法人に入る方法です。求人情報は、現地事務所のウェブサイトのほか、「JICPA Career Navi」(日本公認会計士協会が運営する求人情報サイト)、雑誌「会計・監査ジャーナル」などに掲載されることもあります。
地域としては、現地に日系企業が多いアメリカや中国、シンガポール、イギリス、タイ、ベトナムなどが多いようです。仕事内容としては、アメリカではおもに財務・税務を担当することが多く、アジアでは現地日系企業の営業や日系企業現地法人のマネジメントが中心になります。
期間を区切らず長く働けるのが現地法人に就職するメリットですが、日本の会計基準や事例から離れすぎると、国内の監査法人への転職は難しくなります。最終的に日本に戻ることを考えるなら、常に日本の会計業界の動向をチェックし、国内の会計士とも連絡をとり続けるなどして、日本の会計基準から離れない努力も必要です。
現地企業へ就職
海外で働くには、現地企業の中途採用に応募する方法もあります。行きたい国や地域をピンポイントで選べることや、転職先の選択肢が多いことがメリットですが、日本では現地企業の情報を集めにくかったり、国によってはビザが下りない可能性があったりするなど、デメリットもあります。
また、現地採用になるため、給与は現地の水準になることも注意が必要です。日本より給与水準が低い新興国へ行く場合、給与は現地の幹部クラスより高めに設定されていることが多いですが、国内企業からの出向者に比べれば半分以下というケースも珍しくありません。
どの程度の英語力が必要?
海外勤務といえば「高い英語力が必須」というイメージですが、実際どの程度の英語力が必要になるのでしょうか。
監査法人から出向する場合は高い英語力が必須
監査法人から出向する場合、赴任後に滞りなく業務を行うために英語力は必須です。TOEIC800点以上が目安となりますが、同僚とコミュニケーションをとったり、業務を遂行したりするための実践的な英語力が求められます。
一方、国内企業から出向する場合は、ビジネス会話程度の英語力が求められるのが一般的です。しかし、業務内容によっては、さほど英語力が重視されない場合もあります。また、アジア圏への出向案件では、英語または現地語のどちらかができれば可という求人もあります。
現地で就職する場合は案件次第
現地の監査法人に就職する場合は、ビジネス会話程度の英語力を求められるのが一般的です。TOEIC800点以上が目安ですが、最終的には面接などで英語力を見て判断されることが大半です。
一方、現地企業に就職する場合、日系企業であれば、業務によっては入社時の語学力不問、または日常会話程度の英語力で可というところも少なくありません。日系企業でなければ、ビジネス会話程度の英語力か現地語、またはその両方が求められることが一般的です。
海外勤務の年収は?
海外勤務の年収は、出向か現地採用かによって大きな違いがあります。
出向の場合は国内とほぼ同水準
国内の監査法人や企業からの出向の場合、年収は概ね日本と同水準であり、800万円以上が保証されていることが多いでしょう。マネージャークラスであれば、年収1,200万~1,300万円に達することもあります。
また、出向者の場合は住宅費や渡航費用なども支給され、医療費や子供の学費も会社が負担してくれるなど、福利厚生も充実しています。出向先の国によっては、物価水準が日本の5分の1程度のこともあり、国内に比べてかなりいい暮らしができる場合もあります。
現地採用の場合は「現地の人より高く、出向者よりは安い」
現地採用の場合、給与は現地水準となります。そのため地域差が大きく、例えばタイやベトナム、シンガポール、中国といったアジアの国々なら、月収にして30万~40万円、年収では400万~500万円前後であることが多いでしょう。会社によっては、住宅費や渡航費、年1~2回の一時帰宅の費用を負担してくれる場合もあります。
国内で働いた場合と比べて年収は下がりますが、物価が安い国なら生活水準はあまり変わりません。また、長時間労働も少ないためプライベートの時間が取りやすく、長期の休みもしっかり取れるといったメリットもあります。
家賃相場や為替レート、物価、所得税率などは国や地域によって異なります。海外で働く場合は、年収だけで判断するのではなく、必ずその国の生活環境を考慮するようにしましょう。
各国の状況
最後に、日本人からの出向者・現地採用者が多い、アメリカ、中国、東南アジア(タイ・ベトナムなど)の状況について簡単にまとめておきます。
アメリカ
国内からの出向の場合は問題ありませんが、現地採用の場合は就労ビザの取得が障壁になりがちです。アメリカの監査法人や企業で働くには「H-1Bビザ」を取得する必要がありますが、このビザは発行数の上限が年間85,000件と定められています(2019年度の場合)。
H-1Bビザは、毎年応募者数が多く、抽選が行われており、取得には運も必要という状況が続いています。そのため、現地の監査法人・企業はビザなしの人を雇うことに消極的であり、「今は日本にいるけれど、これからアメリカで働きたい」という人に対する求人はあまり多くありません。
日本人会計士がアメリカの監査法人・会計事務所で働く場合、チームの一員として監査・税務の実務に携わることがほとんどです。
中国
中国の監査法人・会計事務所で働く場合、日系企業のサポート専門の部署に配置されることが一般的であり、直接監査や税務に就くことはほとんどありません。おもな仕事内容は、日系企業と現地の専門家スタッフの橋渡しや日系企業への営業、コンサルティングとなります。
東南アジア
タイやベトナムなどの監査法人・会計事務所で働く場合は、中国の場合と同じく、日系企業と現地の専門家スタッフの橋渡しや日系企業への営業、コンサルティング、日系企業向けのセミナー開催などがおもな仕事となります。また、現地スタッフの教育を任される場合もあります。
一方、現地の企業で働く場合は、財務・経理の責任者として活躍が求められることもあるでしょう。
海外勤務で何を実現したいか考えよう
会計士の知識と経験を活かして海外で働く場合、まずは国内の監査法人や企業に所属して出向を目指すのか、直接海外の監査法人や企業に転職するのかを選択する必要があります。
両者の最大の違いは、海外での勤務期間です。出向の場合は期間限定ですが、現地採用の場合は期間がありません。そのため、数年で日本に帰ってきたい場合は出向、海外に永住して仕事をしたい場合は直接採用がおすすめです。
出向で訪れた国が気に入って、そのまま現地の企業に転職したり、現地企業での勤務を経て起業したりする人もいますので、「海外勤務の後に何をしたいのか」までを考慮して、キャリアを検討しましょう。
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転職された方の声
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