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海外での経験から培った会計士としての土台

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インタビュー
海外での経験から培った会計士としての土台

経済活動のクロスボーダー化や複雑化が進むなかで、公認会計士の業務フィールドも多様化しています。これからの時代に活躍できるのはどんな会計士なのか。トップ会計士はどう自らのキャリアを切り拓いてきたのか。早稲田大学大学院会計研究科の実務家教員インタビューの1回目では、監査法人時代に5年間の海外駐在を経験し、国際監査基準の設定にも携わるなどグローバルなキャリアを持つ篠原 真教授に話を伺いました。

海外赴任がキャリアの最初の転機に

私のキャリアの最初の転機は海外赴任でした。監査法人の国内部で6年ほど監査業務をしてから30代で行きました。まずはアメリカのデトロイトに2年間駐在したのですが、当時のアメリカは日本よりずっと先を行っていましたから、そのギャップに驚きました。日本では個人のパソコンもないときに、アメリカでは監査プログラムが入ったパソコンが個人に貸与されていましたから。言葉の壁にはもちろん苦労しました。英語力を身に付けるという点では若いうちに海外赴任した方がいいのは確かです。とはいえ会計士として行くわけですから、国内で会計士としての基礎をしっかり固めてからの話になりますが。

その後ロンドン赴任も経験しました。アメリカは監査現場中心でしたが、ロンドンでは日系企業のお客さんとのコミュニケーションや、トラブルシューティングが中心。日本人と英国人の間に入り、両国の会計ルールの違いを説明することもありました。間に入るというのはなかなか辛いこともあるのですが、それによって日本とは違うイギリスのものさしを持つことができたのは貴重な経験でした。

今は英語圏以外の中国や東南アジアへの赴任も増えていますが、赴任先がどこにせよ、やはり英語で仕事をするのがメインではないでしょうか。英語ができることで公認会計士としての守備範囲も広がりますし、会計も監査も欧米がリードしている分野なので、日本語に翻訳されていない最先端のものをいち早く読むことができるのも強みです。ただ、公認会計士はみんな英語ができなければならないかといえばそうではありません。海外周りの業務は会計士全体の1割、2割でできます。残りの8割、9割は国内業務。また、英語を勉強するにしても、会計や監査に関連して日本語で勉強しなければならないこともたくさんあるわけで、それよりも英語が優先するわけではないことも強調したいですね。

英語が機会に--大蔵省(現金融庁)や国際会議でも活躍

37歳で海外赴任から戻ると、いろんなところから声がかかるようになり、英語が機会につながったのかなと感じました。パートナーになった後、縁あって当時の大蔵省(現金融庁)に2年3か月ほど勤務し、会計基準や監査基準を設定している企業会計審議会の裏方のような仕事をしました。規制を受ける側から規制を考える側に回ったというのは、大きな違いでしたし、役所の世界は民間と大きく違い、海外駐在するよりも遠い世界に来た感じがしました。また、国際業務では資本市場の監督当局の国際的な集まりでもある証券監督者国際機構(IOSCO)の中で、国際監査基準(ISA)や国際会計基準(IAS)についての監督当局間の議論に参加したり、国際会議に出たりもしました。

その後公認会計士協会でも海外に関係した業務を経験し、今に至ります。国内と海外、監査法人と会計士団体、基準を守る側と作る側、民と官……。さまざまな立場で会計や監査について考えてきたことが、今の仕事にも活きていると感じています。

 

まず、「会計士としての頑丈な土台」をつくることが必要

 
海外での経験から培った会計士としての土台

若手公認会計士の方には、まず会計士としての頑丈な土台を固めてほしいですね。今自分がやっている仕事の積み上げでノウハウがたまっていくのです。たとえばアドバイザリーの仕事に将来移るつもりなら、今の会計監査の仕事の中で会社の仕組みを知って、どんどんそれを蓄積していけばいい。それがアドバイザリーになったときに生きます。最近は企業内会計士も増えていますが、会計と監査の知識がしっかりしていなければ使いものになりません。

大手の監査法人にはインフラやノウハウがありますが「みなさんそこを活かしきれていますか」と聞きたいですね。膨大なデータベースに会計監査のノウハウ、海外に行けるチャンスもあれば、監査法人内でコンサルティングや税務、M&Aの仕事に挑戦することもできます。大手の監査法人のリソースを存分に使い、力をつけてから外に出るのもいいのではないでしょうか。

アメリカやイギリスでの勤務も数えると、私がこれまで経験した職場は7つになりますが、結局は会計・監査に関係した仕事です。いろいろな経験をできたのは公認会計士という柱があったからであり、それだけ可能性のある仕事だと考えています。

      

早稲田大学大学院会計研究科の魅力は

     

早稲田大学大学院会計研究科には実にいろんなバックグラウンドを持った実務家教員がいます。学生は会計士になるために入学してくるわけで、5年後、10年後の自分は想像がついても、そのあとのキャリアパスをイメージすることはなかなかできないものです。先輩会計士である実務家教員の経歴や経験を知ることで、自分の将来像を描きやすくなるのではないでしょうか。また会計プラスワンという志向で教授陣を固めていますから、監査や財務会計といった試験に必要なものだけでなく、税務やアクチュアリーの授業や外国人教授による英語の授業もあります。さらには統計学などデータサイエンスとかAI関連の勉強ができるのも恵まれていますね。専門職大学院には実務家教員が3割必要ですが、その私たちが理論と実務をつなぐ架け橋になることで、すんなり実務に出ていける環境が整っていると思います。

       
篠原 真氏

篠原 真氏

早稲田大学大学院会計研究科教授(公認会計士)

1982年慶應義塾大学法学部卒業。1984年監査法人中央会計事務所入所。1991年から1996年米国および英国クーパース・アンド・ライブランドに出向。2000年から大蔵省金融企画局市場課、中央監査法人、新日本有限責任監査法人等を経て、2017年より現職。この間、日本公認会計士協会理事、同常務理事、企業会計審議会監査部会臨時委員、国際監査保証基準審議会(IAASB)理事、国際会計士連盟(IFAC)理事などを歴任。

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