監査法人の業務についていけない?よくあるパターンと選べる選択肢とは

「監査法人についていけない」「自分だけが周りより劣っているのではないか」と悩んでいませんか?公認会計士試験という難関を突破したにもかかわらず、実務の現場で戸惑いを感じることは決して珍しくありません。
監査法人についていけないと感じたら、悩みの原因に合わせた最適な道を選ぶことが大切です。それは現在の監査法人で頑張り続けることかもしれませんし、別の監査法人への転職、あるいはまったく別のキャリアパスを選ぶことかもしれません。
この記事では、監査法人でついていけないと感じる典型的なパターンを解説し、あなたに合った選択肢を提案します。
「もうだめかもしれない」とお考えのときは、いますぐマイナビ会計士へご相談ください。あなたの現状を棚卸しし、"将来"を考えたキャリアをご提案します。

マイナビ会計士編集部
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目次
監査法人とは
今回お伝えする監査法人とは、企業が財務諸表を適正に作成しているかを独立した立場から監査する専門機関のことです。規模によって大手(BIG4)、準大手、中小に分類され、業務内容や働き方、社風に違いがあります。
これにより、「ついていけない」と感じる場合でも、別の監査法人では活躍できる可能性は十分にあります。なお、監査法人の基本や規模、どのような働き方をするのかなどについては、ぜひ下記ページをご覧ください。
監査法人でついていけないと感じる6つのパターン
監査法人でついていけないと感じる主な原因としては、以下の6つのパターンが挙げられます。
- 試験と実務のギャップに戸惑う
- 繁忙期の激務・長時間労働で体力が持たない
- 周囲と自分を比べて自信を失う
- クライアントとの厳しいやり取りにストレスを感じる
- 貢献が目に見えにくい・つまらない
- 将来のキャリアに対する漠然とした不安を抱える
試験と実務のギャップに戸惑う
公認会計士試験では、前提条件が与えられた問題を解くだけです。一方で、実務では「何が問題か」を自分で発見し、「正解」を考え、クライアントに納得してもらうという複雑な工程となります。
試験で学んだ「リスクアプローチ」(監査上のリスクを評価し、重点的に監査手続きを行う方法)が現場では形骸化していることもあり、この理想と現実のギャップに「ついていけない」と悩む人も少なくありません。
試験勉強で身につけた知識だけでは足りず、実務ではまったく違うスキル、いわゆるコミュニケーション能力、判断力、説得力などが求められるのです。
繁忙期の激務・長時間労働で体力が持たない
「こんなに働くために会計士になったわけではない」と、体力・精神の両面で限界を迎えて監査法人についていけないと悩むケースもあります。
国税庁の統計によると、日本企業の決算期としてもっとも一般的なのは3月で、全体の約20%です。上場企業ではこの割合がさらに高くなり、3月決算の企業の監査を担当する場合、4〜5月に監査業務が集中します。
この繁忙期には、月60時間を超える残業や休日出勤が当たり前となり、体力的にも精神的にも限界を感じやすくなります。監査業務には形式的な文書化作業が多く、本質的な監査よりも形式重視の風潮にストレスを感じる会計士も少なくありません。
参照:決算期月別法人数|国税庁
周囲と自分を比べて自信を失う
監査法人には、公認会計士試験という難関を突破した優秀な人材が集まります。この状況下で新人や若手は、常に周りと比較して、「ついていけない...」と自らの価値を見失いやすくなります。
「この人たちみたいには一生なれないな」と感じ、劣等感を抱くことも少なくありません。同期の仕事の速さや正確さに追いつけなくなれば、上司からの評価も気になって焦ってしまうこともあるでしょう。
実際に、「入社してみると仕事になかなかキャッチアップできない」「同期に水をあけられる」という体験談もあるほどです。体験談については、下記ページで触れています。
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「出来ない会計士」と「格の違う同期」
クライアントとの厳しいやり取りにストレスを感じる
監査という「指摘する」立場に立つことの精神的負担が、「この仕事は自分に合わない」という感覚につながるケースもみられます。
監査では企業の財務情報のミスを指摘する役割があり、クライアントから感謝の言葉はおろか、煙たがることもあります。監査基準と企業の要望の間で板挟みになり、ストレスを抱えやすい環境になりやすいということです。
指摘事項を伝える際の緊張感や、クライアントからの反発に対処するスキルが求められますが、苦手だとストレス源となります。常に緊張感のある関係性を維持しなければならないことに疲れを感じる会計士も少なくありません。
貢献が目に見えにくい・つまらない
監査は同じような作業の繰り返しとなりやすく、4〜5年経つとルーティン業務に飽きを感じる人もいます。努力や成果が直接見えにくく、「この仕事に意味があるのか」と疑問を抱くことさえあります。
「作業をしている感覚」に近くなり、専門家としてのやりがいを見出しにくくなる状況も少なくありません。言い換えれば、縁の下の力持ちのような役割で、自らの貢献が目に見えにくい環境だということです。
ここで「つまらない」と感じてしまえば、この監査法人には「ついていけない」とつい考えてしまうでしょう。ただ、監査にも魅力はありますので、以下のページで見つめ直してみるのも良いかもしれません。
将来のキャリアに対する漠然とした不安を抱える
本当にこの道を目指すべきなのか、途中で別のルートに変更すべきなのか悩んでしまうことが、「監査法人についていけない」という感覚につながることもあります。
監査法人でのキャリアは「パートナー」(監査法人の経営者)が1つのゴールですが、その道のりは狭き門です。3〜5年ほど経過すると、パートナーへの道が厳しいことを実感し、このまま続けるべきか迷う人も少なくありません。
AIやRPAの台頭により、監査業務の一部を自動化する動きが強まり、「将来、監査業務がなくなるのではないか」という不安を抱える会計士の方もいるはずです。辞めたいと考えたときには冷静になり、ぜひ下記ページで触れる解決策を試してください。
監査法人についていけないと感じたときの3つの選択肢
監査法人についていけないと感じたとき、あなたには主に以下の3つの選択肢があります。
- 現在の監査法人で働き続ける
- 自分に合った別の監査法人を探す
- 監査法人以外の新たなキャリアパスを模索する
現在の監査法人で働き続ける
監査法人に入ったばかり、いわゆる新人期間はだれでも適応に苦労するものです。最初の数か月は戸惑うことがあっても、それは自然なことです。
この場合、周囲のサポートを積極的に求め、自己学習を継続できれば状況を好転できる可能性があります。「完璧を目指す」のではなく「段階的な成長」を意識することで、前向きな気持ちを保ちましょう。
つまり、環境を変えるのではなく、自分自身の適応力や能力を高めることで状況を改善する道もあるということです。入社して間もない場合や、監査という仕事自体には興味がある場合は特に検討する価値があります。
自分に合った別の監査法人を探す
現在の監査法人の環境が合わないと感じても、大手と中小、あるいは法人ごとの文化や働き方には違いがあります。「監査法人の仕事が合わない」のではなく「この監査法人の環境が合わない」という考え方をすれば、別の監査法人で活躍できます。
例えば、大手監査法人の厳しい環境に疲れた場合、中小監査法人のアットホームな雰囲気が合うかもしれません。逆に、より専門的なキャリアを求める場合は、大手監査法人への転職を検討することも一案です。
監査という仕事自体は続けながらも、より自分に合った職場環境を探すという選択肢があるのです。より詳しくは、ぜひ以下のページをご覧ください。
監査法人以外の新たなキャリアパスを模索する
監査法人そのものの業務や文化が自らのキャリアと志向性に合わない場合、別の道を探すことも選択肢の1つです。会計・監査の知識は、事業会社、会計事務所・税理士法人、コンサルティングファームなどでも活かせます。
ワークライフバランスを重視したい場合や、より創造的な仕事を求める場合は、監査法人以外のキャリアパスを検討する価値が高まります。監査業務自体に興味を失った場合や、長期的なキャリアビジョンとして監査法人以外の道を考えている場合は、この選択肢が適しているでしょう。
監査法人?それ以外?向いているのはこんな人
監査法人で働き続けるべきか、別のキャリアパスを選ぶべきか、迷っている方も多いでしょう。ここでは、それぞれの道に向いている人の特徴を紹介します。
自分自身の性格や価値観と照らし合わせて、最適な選択を考える参考にしてください。
監査法人が向いている人
監査法人が向いている人には、以下のような特徴があります。
- 監査のプロとして高い専門性を追求したい人
- パートナーという明確な目標に向かって進みたい人
- 経験年数に応じた報酬体系を望む人
- 「環境」が問題で「業務内容」は好きな人
- 3年未満の経験で、もう少し続ける余地がある人
監査法人では、明確なゴール(パートナー)があり、経験年数に応じて年収も高まる傾向があります。大手から中小へ移る、非常勤を選ぶことでワークライフバランスの改善も可能です。
監査法人以外が向いている人
監査法人以外のキャリアが向いている人には、以下のような特徴があります。
- ワークライフバランスを最優先する人
- 継続的な疲労感や体調不良を感じている人
- 監査業務自体に興味を失った人
- 経営参画や意思決定に携わりたい人
- すでに3年以上の経験があり市場価値を確立している人
監査法人以外のキャリアを選ぶと、残業時間の減少、プライベート時間の確保といったメリットを得られます。監査法人で培った知識を異なる形で発揮できる場も広がります。
監査法人以外に就職・転職する際の5つのポイント
監査法人から別のキャリアへの転職を考える際は、以下の5つのポイントを押さえておくことが重要です。
- 転職の目的と優先順位を明確にする
- 自らの強み・弱みを客観的に分析する
- 転職理由を整理して前向きな理由を見つける
- 監査法人出身者だからこその強みをアピールする
- 専門的な転職エージェントを活用する
転職の目的と優先順位を明確にする
監査法人から転職を考える際は、「年収」「ワークライフバランス」「業務内容」など、自分にとって何がもっとも重要かの優先順位を決めましょう。
例えば、家族との時間を最優先するなら「ワークライフバランス>年収>業務内容」に、専門性を高めたいなら「業務内容>年収>ワークライフバランス」という順位になるかもしれません。
短期的な逃避ではなく、長期的なキャリア設計を考え、自らの強みと弱みを客観的に分析してください。「ついていけない」という現状からただ逃げるのではなく、自分が本当に求める環境や働き方を明確にして、それに向かって進むことが大切です。
自分の強み・弱みを客観的に分析する
監査法人で培った専門知識やスキル、経験を棚卸しし、自らの強みを明確にしましょう。同時に、苦手な分野や足りないスキルなど、弱みも正直に認識してください。
自分自身を商品として客観的に分析し、その商品がもっとも価値を発揮できる市場(職場)を見つけること。これができれば、強みを活かし、弱みをカバーできるような職場環境を見つけられます。不安な場合は、上司や友人、転職エージェントに頼ると確実です。
転職理由を整理して前向きな理由を見つける
監査法人への転職では、「ついていけない」というネガティブな理由だけでなく、「こういう環境で働きたい」という良い目的を見つけることもポイントです。「何から逃げたいか」ではなく「何を実現したいか」という視点で転職理由を整理しましょう。
面接でも前向きな理由を伝えることで、採用担当者に好印象を与えられます。このとき、5年・10年後の自らのキャリアをイメージし、そこに向かうためのステップとして転職を位置づけてください。
「この転職が自らのキャリアにどう貢献するか」という長期的な視点で判断すると、より納得のいく選択ができます。より詳しくは、ぜひ下記ページもご覧ください。
監査法人出身者だからこその強みをアピールする
監査法人出身者が保有する「企業の財務状況を短時間で把握・分析できる能力」は、経営判断の場面で強みになります。会計不正のリスクに敏感であることは、内部統制の構築や改善に役立つ視点となります。
また、さまざまな業界・企業を見てきた経験は、幅広い知見として経営に活かせます。監査法人出身者だからこそ持っている「視点や経験」を、転職先でどう活かせるかを具体的に伝えましょう。
専門的な転職エージェントを活用する
会計士専門の転職エージェントは業界に精通しており、非公開求人の紹介や企業の内部情報など、一人では得られない情報を得られます。書類の添削から面接対策といった、転職で困りやすい部分でもサポートを受けることも可能です。
自らの市場価値や適性を客観的に評価してもらえるため、より現実的なキャリアプランが立てられるのも第三者であるエージェントだからこその魅力です。なかでも、監査法人からはじめて転職する場合は、ミスマッチを減らす手段としても有効です。
「もう失敗したくない」、「本気でやりがいのある監査法人で働きたい」とお考えでしたら、マイナビ会計士へご相談ください。あなたの"将来"を踏まえた、キャリアプランをご提案します。
監査法人についていけない人が参考にしたい転職成功事例
監査法人で働いて「ついていけない」と感じている方はあなただけではありません。
ここからは、実際に同じように悩み、転職を行った方の事例を紹介します。転職の動機や成功のポイントを学び、自分自身の転職活動に活かしてください。
監査法人から税理士法人へ
1つ目は監査法人で激務に追われ、やりがいや将来に不安を感じていた方が、税理士法人へ転職した事例です。
年収は約4割下がったものの、希望していた税務業務に挑戦し、ワークライフバランスも改善しました。冷静に労働環境を見直し、自らの人生を選び取っています。
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監査法人から税理士法人への転職成功事例
監査法人から経理へ
2つ目は、監査法人で長時間労働や出張に追われ、仕事と家庭の両立に悩んでいた方が、その他法人の経理・財務ポジションへ転職した事例です。
年収は若干下がったものの、基本的に残業のない職場環境を手に入れ、プライベートとのバランスを実現しました。監査法人だけにとらわれることなく、新たなキャリアの幅も広げています。
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監査法人から経理部門への転職成功事例
監査法人から教育出版系の上場企業へ
3つ目は、育児が落ち着き社会復帰を目指した34歳女性会計士が、教育出版系上場企業へ転職した事例です。
監査法人での経験を活かしつつ、勤務時間に柔軟性のある働き方を実現しました。年収は下がったものの、当初の希望を上回る条件で、仕事と家庭を両立できる環境を手に入れています。
監査法人から業界トップの事業会社へ
4つ目は、大手監査法人で監査業務に従事していた若手会計士が、ワークライフバランスを重視して業界トップクラスの大手事業会社へ転職した事例です。
第三者ではなく企業の中からビジネスに関わりたいという思いを叶え、年収を維持しながらも安定した環境で新たなキャリアを築いています。「ついていけない」と考えたら、主体性を求められる事業会社も転職先の1つとして考えましょう。
監査法人から自動車メーカーへ
5つ目は、監査法人で約7年間監査・コンサル業務に従事していた方が、ワークライフバランスを求めて上場企業の内部監査ポジションへ転職した事例です。
年収は下がったものの、残業が大幅に減り、じっくりと腰を据えて働ける環境を手に入れています。面接対策や退職までのサポートも活用し、着実に転職を成功させました。
よくある質問(FAQ)
最後に、監査法人でついていけないと感じている方からよく寄せられる質問へ回答します。
監査法人を辞める割合は?
一般的には、入所してから7年~10年以内に約50%が離職するといわれています。監査法人を辞めるのは特別なことではなく、むしろキャリアの選択肢として一般的な道となっています。なぜ辞めたいと考えるのか、その理由とタイミングについては、以下のページをご覧ください。
監査法人の年収はBIG4でどのくらいですか?
監査法人勤務の公認会計士の平均年収は、約706万円といわれています。役職別に見ると、スタッフ職で500万円程度、シニアが600万円~、マネージャーなら800万円~1,000万円の年収を見込むことができます。年収を知りたい方は、下記ページをご覧ください。
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監査法人勤務の会計士の年収
監査法人で年収1000万円になるのは何年目ですか?
一般的にBig4監査法人では、マネージャー昇格後の約7〜8年目あたりで年収1000万円に到達する見込みです。ただし、法人や部署、個人の評価によって個人差があります。マネージャーへの昇格は通常、入社後5〜6年程度で、その後の評価や担当クライアントによって年収が上がっていきます。
監査法人を1〜2年で辞めるのはキャリア的に問題ありますか?
監査法人を1〜2年で辞めることのメリットは、自分に合った環境へ早く移れることと、若いうちなら転職市場での評価も得られることです。
一方、デメリットとしては、「すぐに辞める人」と警戒される可能性や、実務経験として認められる3年の壁、修了考査の学習時間確保の難しさなどが挙げられます。短期間で辞める場合は、中小監査法人など監査経験を評価してもらえる環境への転職がおすすめです。
まとめ
監査法人で「ついていけない」と感じることは決して珍しくなく、同じ悩みを抱える会計士の方は少なくありません。その原因は業務の専門性、長時間労働、人間関係、単調な業務などさまざまです。
監査法人についていけないと感じた場合の選択肢としては、現在の監査法人で働き続ける、別の監査法人に転職する、監査法人以外のキャリアを模索するという3つの道があります。いずれにしても、監査法人以外も踏まえて、自らの状況に合わせた対処法を選ぶことがもっとも重要です。
「ついていけない」とお考えでしたら、長期的なキャリア設計の視点で判断するためにもマイナビ会計士へご相談ください。あなたの現状を棚卸しし、"将来"を考えたキャリアをご提案します。
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進路について適切なアドバイスをしてもらえました!自分の進路について明確な答えが出せていなかったものの、どの業種に進んだら良いかなど適切にアドバイスをしてもらえました。どういったキャリアを積んでいけばより市場価値を高められるのか、候補の会社がどう違うのかを具体的に説明していただけました。(30代/会計士)
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求人の提案力と面接のフィードバックが良かった!タイムリーな求人の紹介とフィードバックの提供が良かったです。面接前の情報提供では、自分のアピールしたい強みが、面接先企業のどこに符号しており、今後の展開をどう捉えているかの思考の整理をする際に役立ち、安心して面接を迎えることが出来ました。(30代/会計士)
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