USCPA(米国公認会計士)には意味がないといわれてしまう理由は?
USCPAはアメリカのみならず国際社会で通用する グローバルな資格ですが、「取得しても意味がない」という声もあり、取得をためらっている方も多いのではないでしょうか?この記事では、意味がないといわれてしまう理由はなぜなのか、実際のところ取得のメリットはあるのかなどを解説します。まずは、USCPAには意味がないといわれる理由について詳しく見ていきましょう。

岩波 竜太郎
公認会計士
2000年、公認会計士2次試験合格。2004年公認会計士登録。
大手監査法人ではマネージャー・シニアマネージャーとして、主として世界有数のグローバル企業の会計監査に従事。その後ベンチャー企業へ転職し、執行役員・管理本部長として人事や労務なども含めた管理業務全般を幅広く経験。
2015年5月に岩波公認会計士事務所を設立し独立。2016年10月にはアイプラスアドバイザリー株式会社を設立。決算支援や管理会計構築をはじめとする財務会計・管理会計のアドバイザリー業務に従事する傍ら、上場会社の社外役員としても活躍。
目次
USCPA(米国公認会計士)には意味がないといわれる理由

USCPA(米国公認会計士)とは、アメリカ各州で認定されている公認会計士資格のことです。USCPAには意味がないといわれる理由は、人によっては日本の公認会計士と比べて資格を生かしにくいためです。具体的には、日本での独占業務ができないことや、キャリアプランによってはアピールポイントになりにくいことが挙げられます。
日本では独占業務を行えないから
日本で働く場合、USCPAの資格を生かせる範囲が限られてしまうことが、USCPAには意味がないとされる理由の1つです。公認会計士は日本全国で独占業務に携われる一方、USCPAの場合は、自分が資格を取得した「州」でしか独占業務を行えません。独占業務とは、特定の国家資格を持っている人だけが行える業務で、公認会計士の場合は監査の業務がそれにあたります。
公認会計士より難易度が低いから
USCPAの資格試験の難易度は、公認会計士に比べて低いといわれています。それぞれの合格率を見ると、2024年の公認会計士の合格率はわずか7.4%だったのに対して、USCPAの合格率は、各科目の平均で52.9%です。このような差から、USCPAは公認会計士より難易度が低い資格であり、意味がないというイメージを持たれやすいようです。
日本での転職・キャリアアップにはつながりにくい場合があるから
USCPAの資格のみでは、日本国内で独占業務に携わることはできません。そのため、明確なキャリアプランを持たずにUSCPAを取得しても、転職・キャリアアップに有利に働かない場合があります。
USCPA(米国公認会計士)には本当に意味がない?事実を検証
USCPA(米国公認会計士)には意味がないといわれるのは、それなりの理由があります。とはいえ、それは絶対的なものではありません。ここでは、USCPAを取得しても本当に意味がないのか、より深く検証していきましょう。
英語力が転職のアピール材料になる
グローバルに展開する日本企業や外資系企業の監査においては、英語力を求められる機会が多いため、USCPAの取得が有用です。また、USCPAを取得する過程で得た知識や英語力は、ほかの業務にも十分役立ちます。転職を希望している方は、監査法人に限定せず、会計事務所やコンサルティングファームなどにも目を向けてみると、思わぬ機会に恵まれるかもしれません。
監査業務に携われないわけではない
近年では、日本の公認会計士の資格を取得していなくても、国内で監査のアシスタントとして活躍できるケースもあります。特に、USCPAを取得している場合はグローバル展開する日本企業の監査に補助者として携われることがあります。監査報告書へのサインのように、USCPAの取得だけでは行えない業務も確かにありますが、取得することに意味がないとはいえないでしょう。
資格のレベルが低いわけではない
日本の公認会計士の試験に比べてUSCPAの合格率は高いとはいえ、資格自体のレベルが低いわけではありません。まず、出題はもちろん英語なので、会計知識以外にも英語力が問われます。さらに「4年制大学卒業」「会計・ビジネスに関する単位取得」といった、日本の公認会計士には不要の受験資格もUSCPAでは必要とされます。
このように、USCPAではアメリカの会計知識だけでなく一定の学力や英語力も求められるため、一概に日本の公認会計士よりレベルの低い資格だとは考えないほうがよいでしょう。
US-GAAPがIFRSに寄ってきている

昨今では、IFRS(国際的に共通する会計基準)が浸透しており、US-GAAP(アメリカで採用されている一般的な会計基準)もIFRSに内容が寄ってきています。言い換えれば、US-GAAPとIFRSの差はなくなりつつあり、会計基準の統一化はどんどん進んでいます。日本においてもIFRS適用会社は年々増加傾向にあり、業務や転職において、USCPAを生かせる機会は、日本を含めアメリカ以外でも増えていく可能性が高いといえます。
USCPA(米国公認会計士)を取得するメリット
意味がないと思われがちなUSCPA(米国公認会計士)ですが、実際は取得するメリットが多く存在します。
- 英語力を証明できる
- グローバル企業に評価されやすい
これらのメリットについても詳しく見ていきましょう。
英語力を証明できる
USCPAに合格していれば、会計知識と同時に「ビジネスで使える英語力がある」という証明にもなるのは非常に大きなメリットです。USCPAは会計に関する資格試験ではあるものの、受験では一定の英語力が求められます。具体的には、TOEIC®スコアで800点以上を獲得できる程度の英語力があると望ましいとされています。
外資系企業・グローバル企業に評価されやすい
USCPAを取得するメリットとして、外資系企業やグローバル企業など、英語力を必要とする企業では高い評価が期待できる点も挙げられます。また、数字を見る素養があるという意味では、経理だけでなく財務や経営企画で活躍できるケースも多いといえます。
監査法人に限らず、幅広く転職先を探している人や国際的な会計人材として活躍したい人にとって、USCPAは強い武器となるでしょう。
USCPA(米国公認会計士)の取得はこんな人に向いている
USCPA(米国公認会計士)は、希望する就職先やキャリアアップの内容によって「向いている人」と「向いていない人」に分かれます。ここでは、USCPAを取得すると有利になりやすい人について紹介します。
海外で会計業務に携わりたい人
USCPAは、海外で会計士として働きたい人に向いている資格です。取得したアメリカの州で会計士として働けるほか、USCPAにはMRA(相互承認協定制度)という制度があり、MRAを締結している国ならアメリカ以外でも働くことが可能です。具体的には、アイルランド、オーストラリア、カナダ、ニュージーランドなどがあります。
外資系企業・グローバル企業で働きたい人
外資系企業やグローバル企業への転職にも、USCPAは有利です。米国会計基準に精通しているうえに、ビジネスに対応できる英語力も持つ人材は、日本国内では希少だからです。USCPAを取得すれば、経理職だけでなく、海外のクライアントとの交渉や海外の子会社の管理など、活躍の場が広がる可能性があります。
大手の監査法人・会計事務所で働きたい人
現在は一般企業の経理・会計職などに就いているものの、将来は大手の監査法人・会計事務所へのキャリアアップを目指したい人にも、USCPAの取得は役立ちます。なぜなら、大手の監査法人はアメリカ現地法人をクライアントに抱えていることも多く、米国会計基準の知識や英文の財務諸表を読解できる人材を求めているためです。また、前述のように、日本企業の監査に補助者として携わることも可能です。
同様に、国際税務部門や国際事業部門を持つ会計事務所にも、USCPA取得者への需要はあります。より成長できる環境を目指している人にとって、USCPAは大手企業へつながる手だてとなり得るでしょう。
働きながら資格取得したい人
既に社会人として働いているなかで、勉強時間を確保して資格を取得するのは難しいことですが、USCPAは働きながらでも比較的取得しやすい資格といえます。USCPAは、1科目ずつ受験できる「科目合格制度」を採用しており、1科目に合格した後、30か月(約2年半)以内に残りの3科目全てに合格すれば資格を取得できます。
また、USCPAの試験は土日を含めほぼ毎日受験できるので、計画的に勉強を進めていけば社会人からの資格取得も決して不可能ではないでしょう。
まとめ
取得しても意味がないといわれがちなUSCPA(米国公認会計士)ですが、英語圏でグローバルに活躍したい方や国内で英語力を生かしたい方にとっては有力な資格であり、決して意味がないわけではありません。また、今後多くの企業が国際化していく可能性を考えると、将来性も高い資格といえます。
キャリアイメージに合っていると感じた方は、取得を検討してみましょう。また、既に取得している方は、USCPAを生かしたキャリアアップや転職を考えてみてはいかがでしょうか?
マイナビ会計士は、会計士・試験合格者・USCPAを専門とする転職エージェントです。USCPA取得者を積極的に採用する外資系企業の経理やコンサルティングファームなど、非公開の企業情報もご紹介します。応募書類対策やスケジュール調整についてもサポートしますので、キャリアにお悩みの方はぜひお気軽にご相談ください。
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