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公認会計士の論文式試験とは?合格率や対策・試験前からしておくべき準備も解説

公認会計士の論文式試験とは?合格率や対策・試験前からしておくべき準備も解説

公認会計士を目指すうえで最大の関門ともいえる論文式試験は、会計学・監査論・企業法・租税法・選択科目の5科目を論述形式で解答する試験です。短答式試験に合格した人だけが受験でき、毎年8月に3日間かけての実施となります。

今回は、論文式試験のスケジュール・試験形式・配点・合格基準といった基本情報から、勉強時間の目安や科目別対策、合格後のキャリア準備までを徹底解説します。これから受験を控える方はもちろん、計画的に合格を目指す方にとっても役立つ内容となっていますので、ぜひ最後までご覧ください。

論文式試験に合格したあとは、実務経験や修了考査を経ていよいよ公認会計士としてのキャリアがスタートします。試験対策と並行して、合格後のキャリアも見据えたい方はぜひマイナビ会計士へお気軽にご相談ください。

マイナビ会計士編集部

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公認会計士の論文式試験とは

公認会計士の論文式試験とは、短答式試験に合格した人だけが受けられる記述式の試験のことです。試験は年に1回、毎年8月に3日間にわたっての実施となります。会計学は大問5問、監査論・企業法・租税法・選択科目の4科目は大問2問を論述形式で回答します。

項目 内容
試験形式 記述式(論述問題)
試験時間 会計学300分(120+180分)その他科目は120分
受験料 19,500円
合格基準 得点比率52%以上(各科目40%以上必須)
採点方法 偏差値による相対評価

合格基準は、約52%の得点比率を基準として公認会計士・監査審査会が相当と認めた得点比率です。ただし、1科目でも得点比率が40%に満たない場合には不合格となる可能性があります

論文式試験における最新試験の情報や条件等の詳細は、公式機関のWebサイトでも確認できます。

参照:公認会計士・監査審査会(金融庁)
参照:日本公認会計士協会

公認会計士の論文式試験の内容

ここからは、公認会計士の論文式試験の試験内容を以下にわけてより詳しく解説します。

  • 日程・時間割
  • 科目・配点
  • 科目合格制度
  • 難易度

日程・時間割

公認会計士の論文式試験は、例年8月中旬から下旬頃に実施となります。第3週あたりからはじまるケースがよく見受けられ、3日間にわたって行うのが一般的です。短答式試験の合格発表後から論文式試験まで、約2か月程度の準備期間があるスケジュールになっています。

例として、令和7年(2025年)の公認会計士の論文式試験は、2025年8月22日〜24日の3日間にわたっての実施でした。時間割は、以下のとおりとなります。

【8月22日(金)】
時間 着席時間 試験時間 科目 試験時間
午前 10:10 10:30〜12:30 監査論 120分
午後 14:10 14:30〜16:30 租税法 120分
【8月23日(土)】
時間 着席時間 試験時間 科目 試験時間
午前 10:10 10:30〜12:30 会計学 120分
午後 14:10 14:30〜17:30 会計学 180分
【8月24日(日)】
時間 着席時間 試験時間 科目 試験時間
午前 10:10 10:30〜12:30 企業法 120分
午後 14:10 14:30〜16:30 選択科目 120分

試験日程は毎年、公認会計士・監査審査会から正式に発表となるため、受験予定の方は必ず公式サイトで最新の日程の確認をおすすめします。

参照:公認会計士試験 試験実施情報(お知らせ・スケジュール)|公認会計士・監査審査会(金融庁)

科目・配点

公認会計士の論文式試験では、必須科目4科目と選択科目1科目の合計5科目を受験します。各科目における配点は、以下のとおりです。

区分 科目 主な内容 配点
必須科目 会計学(財務・管理) 会計理論+簿記 300
監査論 財務諸表監査の理論・実務論述 100
企業法 会社法等に基づく論述力 100
租税法 税法構造+計算、理論 100
選択科目 経営学/経済学/民法/統計学 受験者自身で1科目選択 100

選択科目では、例年、選択科目のうち経営学を選ぶ受験者の割合が高いといわれています。経営学は出題範囲の予測を立てやすく、公認会計士の実務にも活かしやすいからだと考えられます。

論文式試験で選べる科目や、それぞれの詳細はぜひ下記ページからご覧ください。

科目合格制度

公認会計士の論文式試験では科目合格制度があり、一部の科目だけ合格すれば翌年以降2年間は「該当科目の受験が免除」となります。科目合格の基準は、各科目で「その年の合格者平均得点比率以上」を取ることです。例年を見ると、約56%の得点率が基準の目安となっています。

科目免除の有効期限は、免除資格通知日から起算して2年間です。つまり、以降に受ける2回の試験までなら同じ科目の合格は不要となるため、うまく活用できれば段階的に合格を目指せます。

参照:公認会計士試験に関するQ&A|    

難易度

公認会計士の論文式試験の難易度は短答式試験と比べると高く、記述力や応用力が求められます。短答式試験がマークシート方式で「知っていれば答えられる」のに対し、論文式試験では理解した内容を論理的に説明しなければならないからです。

繰り返しとなりますが、科目合格制度をうまく使えば段階的に受験できます。各科目に特化して学び、知識が万全な状態であれば難易度を下げられます。では、合格率はどの程度なのかも次で見ておきましょう。

公認会計士の論文式試験の合格率

公認会計士の論文式試験の合格率は、過去5年間で約35〜37%で安定して推移しています。2024年の論文式試験では、4,354名が受験し、1,603名が合格、合格率は36.8%という結果でした。

年度 受験者数 合格者数 合格率
2020年 3,719名 1,335名 35.9%
2021年 3,992名 1,360名 34.0%
2022年 4,067名 1,456名 35.8%
2023年 4,192名 1,544名 36.8%
2024年 4,354名 1,603名 36.8%

※合格率は各年の「合格者数 ÷ 受験者数」で計算。小数点以下第2位を四捨五入。

合格率を見ても、直近5年間の論文式試験における難易度には差がないと考えられます。とはいえ、短答式試験を乗り越えたうえで「約3〜4割の合格率」だとするなら、簡単な試験ではありません。合格率が気になった方は、ぜひ以下のページもご覧ください。

公認会計士の論文式試験に必要な勉強時間の目安

公認会計士の論文式試験の合格には、一般的に2〜4年、合計3,000〜6,000時間以上の勉強を要します。時間の分配の目安は、短答式試験に約1,000〜2,000時間、論文式試験は残った約2,000〜4,000時間です。

つまり、短答式試験に約1/3、論文式試験は約2/3を充てるのが一般的な配分で、短答式試験の2倍はかかる計算で考えて計画を立てておくと安心です。より細かい年数や勉強時間は、以下のページで詳しく解説しています。

短答式試験の合格から使える期間

公認会計士の短答式試験の合格から使える期間は、免除となる翌年から2年間です。同年に実施となる論文式試験を含めれば、最大で3回の論文式試験を受験できます。

これまで、短答式試験の学習をしてきたのであれば、2年の間に「論文式試験の対策だけ」に集中して合格を勝ち取らなくてはなりません。年に1回しかないチャンスを逃さないよう、計画的なスケジュール管理が重要です。

科目別の時間配分

公認会計士の論文式試験の時間配分は、以下のとおりです。あくまで例ですが、会計学が全体の43%を占めている状態を鑑みて、ほかの科目より2倍以上の時間を配分しておくと安心です

科目 勉強時間の目安
会計学(財務+管理) 850〜1,700時間
監査論 300〜600時間
企業法 300〜600時間
租税法 300〜600時間
選択科目(経営学など) 300〜600時間

ほかの4科目は14%ずつの均等配分が基本ですが、苦手科目があれば調整も必要です。例えば「企業法が苦手 → 監査論より多めに配分する」といったカスタマイズも有力な戦略となります。

スケジュールの例

ここまで、論文式試験の時間配分をお伝えしました。これまでの内容を踏まえて、新たに時間を設ける方向けにスケジュールの例を作成すると以下のような配分となります

【平日編(フルタイム勤務 + 勉強)】
時間帯 内容
6:00〜7:00 起床・朝食
7:00〜8:00 出勤前学習(1時間)
8:00〜9:00 通勤中:音声講義・理論の確認
9:00〜18:00 勤務
18:30〜19:30 帰宅・夕食・仮眠
20:00〜22:00 夜学習(2時間)
22:00〜22:30 軽い復習・整理
23:00〜 就寝
【週末編(土日)】
時間帯 内容
8:00〜12:00 模試・過去問(アウトプット重視)
12:00〜13:30 昼食・休憩
13:30〜17:00 理論科目(監査・企業法・租税法)
17:00〜18:00 夕食・休憩
18:00〜20:00 弱点補強 or 論点整理

同スケジュールであれば平日に3時間、土日に8時間として「年間で1,612時間」の勉強が可能です。目安の2,000〜4,000時間に届かせるなら約2年を要する計算になります。期間としてはギリギリであるため、スキマ時間や余裕のある日は多めに時間を用意してください。

公認会計士の論文式試験の勉強方法

公認会計士の論文式試験に合格するために、推奨したい勉強方法は以下の3つです。

  • 各科目のポイントを押さえる
  • 出題傾向の高い問題の理解度を高める  
  • 直前まで過去問を解き続ける

各科目のポイントを押さえる

まず、論文式試験では各科目の特徴を理解し、科目ごとに対策を立ててください。傾向を踏まえておけば、学習の無駄がなくなる分だけ時間の短縮を図れます。

例えば、会計学では計算(簿記)と理論(財務諸表論)の両方から出題され、論文式試験では理論問題の比重が高くなります。他方、管理会計論は原価計算などの会計システムに関する科目であり、計算方法を十分に理解してから理論を学ぶ流れが理想です。

より詳しいポイントは、以下のページでまとめたのでご覧ください。

出題傾向の高い問題の理解度を高める

次に、公認会計士・監査審査会が公表する「出題範囲の要旨」の重点項目を確実に押さえてください。出題傾向の高い問題の理解度を高めるだけで、「どのように回答すべきか」という引き出しが増えていくからです。

論述を求められる試験では、思考力、判断力、応用能力、論述力などを重視した問題が中心であり、単純な暗記ではなく理解に基づく学習が肝要です。自分で重要項目のリストを作成し、1つずつ確実に理解していく方法だと漏れがなくなります。

「公認会計士試験の出題範囲の要旨について」に記載(イエローマーカー)があるため、以下の公式から該当の年数のページを選んで閲覧してください。

参照:公認会計士試験|公認会計士・監査審査会(金融庁)

直前まで過去問を解き続ける

最後に、論文式試験の直前期には、本番のシミュレーションとイメージトレーニングとして過去問を活用します。普段であれば簡単に解ける問題が試験の独特な雰囲気に呑まれ、だれでもいきなり解けなくなるからです

時計も用意して、どの問題から解くか、難題に当たったときの対応、全体の時間配分などを細かくシミュレーションしてください。特に緊張しやすい人は、できるだけ細かく試験当日を想定した練習を積み重ねた経験が「本番での実力発揮」につながります。

公認会計士の論文式試験の試験前からしておきたい準備

公認会計士の論文式試験の合格後には、実務補習と実務経験(3年)、修了考査の3つのステップが必要になります。なかでも実務経験は3年と長期間にわたるため、働きながら学ぶか、試験後すぐに実務経験を開始すると効率が良いです

目の前にある論文式試験の勉強との並行は厳しいかもしれませんが、将来の転職先についても情報収集をはじめておけば、合格後にスムーズなキャリアをスタートできます。働きながら資格の取得を目指すのも可能ですのでぜひ求人をチェックしてください。

合格後の転職方法は?

公認会計士の論文式試験に合格したあとの転職活動は、合格発表当日から約2〜3週間の短期決戦となります。監査法人は合格発表と同時に、説明会や採用活動を開始するためです。

先に触れたように情報収集として、業界研究、志望動機の準備、面接対策などを受験前から少しずつ進めておけば、合格後に慌てずに転職活動を進められます。より具体的な方法や開始日について詳しくは、以下のページをご覧ください。

公認会計士の論文式試験に関するよくある質問(FAQ)

最後に、公認会計士の論文式試験について多く寄せられる質問にお答えします。

公認会計士の論文式試験は何回まで受けられますか?

公認会計士の論文式試験の受験回数に制限はありません。ただし、免除期間中という条件であれば短答式試験の合格から最大で3回まで(今年・翌年・翌々年)となります。論文式試験は年に1度しか実施しないため、いつ受験するのかを考えてスケジュールしてください。

公認会計士の論文式試験の合格発表はいつ?

公認会計士の論文式試験の合格発表は、例年、試験実施から約3か月後の11月中旬あたりです。例えば、令和6年であれば11月15日(金)に合格者が発表となりました。

合格発表は金融庁のWebサイトで公開となるため、以下のページから該当年数における合格発表スケジュールの公開をお待ちください、また、合格通知票での郵送でも確認できます。

参照:公認会計士試験|公認会計士・監査審査会(金融庁)

会計士試験の論文式試験の過去問はどこにある?

公認会計士の論文式試験の過去問は、公認会計士・監査審査会の「過去の試験結果等」のページで確認できます。各年度のページの下部に論文式試験がまとめられており、「試験問題および答案用紙について」から閲覧・ダウンロードが可能です。実際の試験問題を確認し、出題傾向や問題形式を把握してください。

参照:過去の試験結果等|公認会計士・監査審査会(金融庁)

まとめ

公認会計士の論文式試験は、会計学・監査論・企業法・租税法・選択科目の5科目を論述形式で解答する記述式の試験です。合格率は約36%で推移し、短答式試験よりも高い合格率となっていますが、論述力や応用力が求められる難しい試験となります。

科目合格制度をうまく活用しつつ、短答式試験の免除期間中に約2,000〜4,000時間の勉強時間を計画的に学べるようにスケジュールしてください。また、論文式試験の勉強と並行して、合格後の転職活動の準備も進めておけばスムーズなキャリアスタートも可能です。

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