USCPAのTCP科目とは?試験範囲や勉強時間・方法からREGとの違いまで解説
2024年1月のUSCPA新試験制度では、必須科目(Core科目)に加えて、選択科目(Discipline科目)へと変更になりました。そのなかでもTCP(Tax Compliance and Planning:税務コンプライアンスと計画)は、税務に特化した専門科目です。
本記事では、TCPの概要や試験範囲、勉強方法まで解説します。選択科目選びに迷っている方、どのような領域なのかを知りたい方はぜひ最後までご一読ください。
マイナビ会計士では、TCP合格を目指す方、そして既にUSCPAの科目に1つでも合格している方を、業界専門のキャリアアドバイザーがサポートいたします。無料でご相談いただけますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

マイナビ会計士編集部
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目次
USCPAのTCPとは?
USCPA試験のTCP(Tax Compliance and Planning)は、法人および個人の税務コンプライアンスと税務計画に関する知識とスキルを評価する選択科目のことです。主に、連邦税務の申告(コンプライアンス)と戦略的な税務計画に焦点を当てる内容です。
これまで個人・法人の税務はREG(Regulation)に集中し、出題ボリュームが過多となっていました。この負荷分散として2024年1月の新制度からTCPが独立し、「申告+戦略」両面の実務力を測る試験として新たに追加となっています。
参照:AICPA & CIMA
参照:NASBA
REGとTCPの違い
REGとTCPの違いは、「基礎編(REG)」+「応用実務編(TCP)」と整理できます。REGは"だれもができるようになるべき税務の基礎"、TCPは"税務を武器にするCPAの専門スキル"という立ち位置です。
REGで習得する用語・構造・申告単位の理解は、TCPの土台となるよう作られています。例えば、REGで覚えたNOL(Net Operating Loss:純営業損失)を、TCPではM&A(企業の合併・買収)や税戦略でどう使うかを問うといった具合です。
BECとTCPの違い
BECとTCPの違いは、「幅のあるBEC」と「深さを求めたTCP」と整理して覚えてください。BECは「ビジネス全体を理解するための横断的知識」、TCPは「税務を武器にする専門スキル」という立ち位置になります。
旧BEC(Business Environment and Concepts:企業環境・概念)ではIT・経営戦略・財務分析・リスク管理などを広く浅く扱い、CPAとしてのビジネス感覚や論理構成力が問われていました。一方TCPは、税務分野に特化し、申告・税務戦略・財産取引までを深く扱う実務寄りの試験です。
なお、2024年1月の新制度によってBECは終了となり、その内容は必須科目と選択科目へと分散しています。
USCPAのTCPの出題分野
USCPAのTCPの出題分野は、以下に挙げた4つの領域をカバーしています。
| 試験範囲 (Area) |
タイトル | ウェイト (%) |
|---|---|---|
| Area I | Tax Compliance and Planning for Individuals and Personal Financial Planning | 30-40% |
| Area II | Entity Tax Compliance | 30-40% |
| Area III | Entity Tax Planning | 10-20% |
| Area IV | Property Transactions(財産取引) | 10-20% |
以下では、それぞれの出題分野の詳細を解説します。
【Area I】個人税務コンプライアンスと財務計画
Area Iの分野は、個人納税者に関する税務申告の正確な処理と税負担を軽減するための計画的助言能力の双方を問う領域です。単に所得や控除を計算するだけでなく、クライアントのライフイベント(結婚、出産、教育、退職、相続など)を踏まえた中長期的な節税戦略を立てる内容です。
従来のREGで扱われていた個人税務に加え、Personal Financial Planning(個人の財務計画)という観点が新たに加わり、TCPのAreaのなかでも比重がもっとも高くなっています。
- 【出題範囲の例】
- 所得、控除、クレジットの分類と適用(Form 1040ベース)
- 税率表、代替ミニマム税(AMT)、追加メディケア税などの計算
- 配偶者、扶養家族、居住地に基づく申告ステータスの判断
【Area II】法人税務コンプライアンス
Area IIの分野は、法人、パートナーシップ、S法人など、各種事業体に関する税務申告の処理能力を評価する領域です。エンティティのタイプごとに税法上の取扱いが異なるため、CPAは組織構造・所有関係・取引形態に応じた税務処理を正確に理解し、フォーム(例:1120,1120S,1065)に反映できる力を評価します。
Area Iと同程度の比重となっており、オーナーへのフロー・役員報酬・資本構成などの取扱いといった深い理解を要する重要テーマの1つです。
- 【出題範囲の例】
- C法人、S法人、パートナーシップの課税構造の違い
- 各法人の申告書の構造と主要スケジュール(Form 1120,1065,1120S)
- 役員報酬、配当、貸付・出資の分類と税務処理
【Area III】法人の税務計画
Area IIIの分野は、主に事業体の税務における戦略立案能力を問う領域です。エンティティの選択(C法人かパススルーか)、資金調達・利益分配の手法、再編・合併・清算に至るまで、経営判断が税務におよぼす影響を的確に理解・説明できるレベルが求められます。
特に中小企業オーナーへの助言能力や、企業価値を最大化するための構造設計力を問います。
- 【出題範囲の例】
- 法人形態の選定と税務的有利不利の分析(C vs S vs Partnership)
- 配当、留保利益、役員報酬の最適化と税務効果の比較
- オーナーシップ構造(持分割合、家族間移転等)と課税への影響
【Area IV】財産取引
最後のArea IVの分野は、資産の処分に関する連邦税務コンプライアンス問題を扱う領域です。資産の取得・処分に関する課税処理を扱い、譲渡益・損失の計算だけでなく、特別規定(Section 1231,1245,1250など)の適用判断も評価します。
主に、資産の種類や保有期間、使用目的によって課税方法が変わるため、複雑な判断が発生します。また、1031交換や1033適用など、取引に対する税法上の優遇措置の理解も必要です。
- 【出題範囲の例】
- キャピタルアセットの分類(長期 vs 短期、1231資産など)
- 譲渡益・損失の計算方法(調整基礎、取得費、売却費用)
- 減価償却資産売却時のリキャプチャ(Sec.1245、1250)
USCPAのTCPで求められる3つのスキルレベル
TCPでは、Bloom's Taxonomyにもとづいて、以下の3つのスキルレベルでの評価となります。
| スキルレベル | 出題比率 | 主な評価目的 |
|---|---|---|
| Application(適用) | 55-65% | 税法を正確に処理に落とし込む力の確認 |
| Analysis(分析) | 25-35% | 複数の税務選択肢を比較し、判断を下す能力 |
| Remembering & Understanding(記憶・理解) | 5-15% | 基礎知識の保持と概念理解の確認 |
以下では、もう少しわかりやすくどのような能力・スキルなのかを解説します。
Application(適用)
Application(適用)は、わかりやすくいえば「知識を税務処理に変換する力」です。Applicationが出題比率の過半数(55-65%)を占めるのは、税法が「知っているだけでは意味がない」領域だからです。CPAに求められるのは、「この所得はどこに記載するか」「この控除はだれに使えるか」といった、知識を実務へどう展開できるかとなります。
税法は文言こそ複雑ですが、最終的にはフォームに数字として反映します。TCPは、その過程を「実際に再現」できるかを見ているわけです。例えば、「Form 1040に医療費控除をどう記載するか」という問いは、記憶ではなく適用の領域です。
Analysis(分析)
Analysis(分析)は、文字どおり「数値を分析する力」です。分析能力の比重が高まっている理由は、CPAは複数の選択肢から分析によって得られた洞察にもとづいて、顧客へ最適な提案を行う職業だからです。
例えば、節税策には常に以下のようなトレードオフがあります。
- Roth IRAかTraditional IRAか
- 法人化すべきか個人事業のままか
- 配当を出すべきか留保すべきか
このような問いに対して、単なる計算ではなく、状況の比較とその解釈が求められます。TCPではこうした「実務判断の訓練」を問うため、Analysisの領域の学習も不可欠です。
Remembering & Understanding(記憶・理解)
Remembering & Understanding(記憶・理解)は、そのまま「覚える力・理解する力」を評価します。基本的には、税法の条文や規則を覚えているか、内容を正しく理解できているかという単純な知識問題です。
この出題比率が低いのは、「知っているだけ」のCPAよりも、使える技術を持った人材を評価する実務の現実に即しているからです。税法は定期的な見直しによって変わる一方で、その都度、調べて理解できます。
よって定義問題や税率の丸暗記が基本となるTCPの比重を減らし、その知識をどう使うかの領域に焦点を当てています。ほかの科目(例:ISCやFAR)と比べても特徴的であり、TCPはより「クライアント・ファースト」な試験設計になっているのです。
USCPAのTCPの合格率・難易度
USCPAのTCPの合格率は、2024年の新制度から約70%台で推移しています。例えば、2025年の第1回では74.94%という結果でしたので、合格率を単純にみれば難易度が低いと感じるかもしれません。
しかし、USCPAの科目合格のラインは75点以上を基準とし、合格率はそれを超えた人の割合を示すものです。そして、TCPを選ぶ受験生は、税務分野の実質的なバックグラウンドを持っています。
結果として、レベルの高い方が受けるほど合格ラインを超える割合も増えるため、高い合格率になっていると考えられます。単純に合格率が高いからTCPを選ぶのではなく、将来のキャリアから逆算して自らの糧になる選択科目を選んでください。
参照:Learn more about CPA Exam scoring and pass rates|AICPA & CIMA
USCPAのTCPに必要な勉強時間の目安
USCPAのTCPに必要な勉強時間の目安は、200〜270時間です。TCPがREGの延長線上にありながら、より高度で複雑な税務問題を扱うためです。
もし、すでにREGに合格しているのであれば勉強時間は短くなりますし、あまり経験のない方であれば上限の270時間程度を確保しておくのが無難です。REGでの学習内容を、どれだけ実務レベルで使える技術として定着しているかが学習時間に影響します。
USCPAのTCP合格を目指す5つの勉強方法
USCPAのTCP合格を目指す勉強方法は、以下の5つが挙げられます。
- Blueprintで出題意図を理解する
- 分野ごとの時間配分と出題比重を意識する
- Applicationスキルの形式を経験する
- Analysisスキルを磨くための"比較思考"を鍛える
- 実務イメージでつなぐ
USCPAのTCPに合格するには、「税法を知っている」ではなく、「税法を使って、何を選び、何を提案するか」を学ばなければなりません。Blueprintの詳細を見る限り、学習者は「知識→思考→選択→助言」の「過程」「経過」「手順」「工程」などに変更するかを検討の訓練がマストとなります。
Blueprintで出題意図を理解する
まず、TCPの勉強ではBlueprintの「Area別 → Content Group → Topic → Representative Task」の構造の精読からはじめてください。各代表のタスクを見て、「この設問では自分に何をさせたいのか(計算か?比較か?助言か?)」を言語化します。
精読によって「試験がCPAに何をさせようとしているか」を理解できれば、問題演習時のアウトプット力も高まります。単純な計算問題ではなく、実務判断を求める問題の比重が高いため、手をつける前に出題意図の理解が勉強の第一歩です。
参照:Learn what to study for the CPA Exam|AICPA & CIMA
分野ごとの時間配分と出題比重を意識する
TCPの勉強方法の計画を立てる際には、出題ウェイトに応じた時間割を意識的に設計します。具体的には、以下のような目安で取り組み、苦手な領域にやや時間をかけるといった具合です。
| 出題エリア | ウェイト | 推奨学習比率 |
|---|---|---|
| Area I(個人税務+計画) | 30-40% | 全体学習時間の40%前後を確保 |
| Area II(事業体コンプライアンス) | 30-40% | 約30% |
| Area III(事業体計画) | 10-20% | 約20% |
| Area IV(財産取引) | 10-20% | 約10-15% |
必須科目とは異なり、選択科目は限られた学習時間を点数効率の高い領域に集中投下するイメージを持つと計画しやすくなります。特にArea Iは最重要の領域ですので、個人・財務計画を徹底的に押さえてください。
Applicationスキルの形式を経験する
USCPA試験のTCPの勉強では、実際にForm 1040、1120、1065、1120Sなどの主要申告書を「一度は埋めてみる」のも良い方法です。また、過去問・予備校教材の計算問題も「手を動かす」前提で反復してください。
いずれにおいても、減価償却・キャピタルゲイン・配当処理は重点的に訓練したい対象です。出題の過半数を占めるApplication領域(55-65%)で点を取り切るためにも、実務に即した経験の模擬体験をおすすめします。
参照:Forms, instructions & publications|米国内国歳入庁(Internal Revenue Service, IRS)
Analysisスキルを磨くための"比較思考"を鍛える
TCPでApplicationに次いで比重の高いAnalysis(25-35%)では、数値を見るだけに限らず"比較思考"を鍛える勉強方法が役立ちます。分析・選択・提案型の問題で「根拠ある選択」ができる状態に仕上げ、得点力を上げるためです。
法人形態(C法人 vs S法人)、配当 vs 給与、Traditional IRA vs Roth IRA などの比較表を自作してみたり、「AかBか」で迷う設問に慣れ、選択肢の長所・短所を言語化して比較したりしてください。また、ケース問題に対し、複数案を列挙してから選択理由を論理的に検討してみるのも良い練習になります。
実務イメージでつなぐ
最後にTCPの勉強では、問題を「数字処理」ではなく「助言依頼」だと仮定し、実務をイメージして解く癖をつけます。例えば、「この納税者にとって、退職プランとしてどちらが有利か?」という問いに、自らの言葉で説明できるように訓練するといった具合です。
TCPの試験意図(=CPAの実務判断力)を体現する力を育成するという点ですので、この実務視点での学習はシミュレーション(TBS:Task-Based Simulations)対策にもつながります。
USCPAは科目合格の時点から価値がある
USCPAの各科目合格は、その分野の専門知識を証明し、転職市場でもアピールできる価値があります。TCP科目の合格であれば、税務コンプライアンスと計画における高度な専門性を示すものとして評価してもらえるわけです。
例えば、TCPの領域であれば税務アドバイザー、ファイナンシャルプランナー、税務コンサルタントなどの職種で特に重宝します。日本国内でも、外資系企業や海外事業を展開する企業では、US-GAAP(米国会計基準)への対応や国際税務の知識が必要とされ、アドバンテージとなるでしょう。
働きながらUSCPAの資格を取得したい、実務経験を積みながらすぐ登録できるように進めたい、とお考えでしたら、ぜひ以下のページもご覧ください。
まとめ
TCP科目は、2024年1月の新制度から追加となった税務特化の選択科目です。REG科目の延長線上に位置し、より高度で実務的な税務コンプライアンスと計画を学習範囲とします。
現在74.94%という高い合格率を示していますが、これは税務バックグラウンドを持つ受験者の割合に起因すると考えられます。科目を選ぶ場合には、将来のキャリアプランから逆算して必要となるかを慎重に判断してください。
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