公認会計士試験後に登録しないのはあり?条件やメリット・デメリットを解説
公認会計士試験に合格し、実務補習や修了考査も終えた(あるいは終える見込みの)方は、「公認会計士登録」を行うのが一般的です。しかし、以下のように考えてはいないでしょうか。
・「監査業務をバリバリやる予定はないな…」
・「働くなら一般企業やコンサル業界がいいかも」
また、「本当に登録って必要だろうか?」、「費用がかかるから踏み出せない…」と迷っているのかもしれません。
結論からいうと、公認会計士試験後の登録は法令上の義務ではありません。監査業務を行う予定がない、あるいは一般企業でのキャリアを考えている場合、「あえて登録しない」という選択肢も十分に考えられます。
ただし、登録しなくては携われない独占業務があるほか、就職・転職で資格登録の有無が評価に影響する場合もしばしば見られます。今回は、公認会計士合格後に「登録しない」理由、そしてそのメリットとデメリットを解説します。
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マイナビ会計士では、登録しないケースではどのようなキャリアパスを目指せるのかまでご提案可能です。どちらが良いのかお悩みで、キャリアを比較しながら慎重に見極めたい方はぜひキャリアアドバイザーへお声がけください。

マイナビ会計士編集部
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目次
公認会計士の登録とは
公認会計士の「登録」とは、日本公認会計士協会に備えられている「公認会計士名簿」に、あなたの名前を登録することを指します。公認会計士法第17条に記載があり、登録を完了してはじめて法的に「公認会計士」という肩書きを使用できます。
また、監査報告書への署名や税理士業務(税理士登録も行った場合)といった「独占業務」も担えます。制度の概要や全体像について詳しくは、以下のページをご覧ください。
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修了考査合格後の公認会計士登録について
参照:公認会計士法(昭和二十三年法律第百三号)|e-Gov 法令検索
公認会計士試験の合格後に登録しないのはあり?
公認会計士試験合格後に、あえて登録しないという選択は可能です。
公認会計士法には、試験合格者が「必ず登録しなければならない」という規定は存在しないからです。監査業務や税理士業務といった独占業務を行わない限り、登録していなくても法的な問題は一切ありません。
もちろん、登録しない場合は「公認会計士」という肩書きは使えません。とはいえ、履歴書や名刺に「公認会計士試験合格者」との記載はできます。
公認会計士として登録しない人はどの程度いる?
公認会計士試験の『合格者数』と『実際の登録者数』には差がありますので、合格者のうち数百人規模の人が「登録しない」選択をしていると考えられます。こちらの表をご覧ください。
(参照:マイナビ会計士コラム、金融庁)
| 年度(令和) | 論文式最終合格者数 | 登録者数(3月末時点) | 登録者数の前年比増加 |
|---|---|---|---|
| 令和2年(2020) | 1,335 | 31,694 | (基準年) |
| 令和3年(2021) | 1,360 | 32,478 | 784 |
| 令和4年(2022) | 1,456 | 33,215 | 737 |
| 令和5年(2023) | 1,544 | 34,436 | 1,221 |
| 令和6年(2024) | 1,603 | 35,532 | 1,096 |
もちろん、公認会計士法第21条の事由(例えば退会など)に該当し、登録が抹消された方もこの増減に含まれます。それを考慮しても、毎年の合格者数(1,300~1,600人)と、登録者の純増数(700~1,200人)にはさすがに乖離があるはずです。
つまり、試験に合格してもすぐに登録していない、あるいは登録しないままキャリアを歩んでいる人が一定数存在するというのは何もおかしくはないのです。
参照:監査業界の概観|金融庁
参照:令和6年(2024年)公認会計士試験(論文式)合格発表速報|傾向と受験後の流れ|マイナビ会計士
公認会計士試験の合格後に登録しない理由
公認会計士試験の合格後に登録しない理由は、主に以下の5つが挙げられます。
- 監査業務を行う予定がないから
- 登録費用の負担を避けたいから
- 年会費の負担を避けたいから
- CPDの義務が負担になるから
- 一般企業でのキャリアを優先したいから
監査業務を行う予定がないから
すでに軽くお話ししたとおり、監査、なかでも監査報告書への署名は公認会計士の独占業務を行わないのであれば登録は不要です。一般的に、監査法人以外で働く場合は監査報告書に署名する機会がほとんどありません。
例えば、以下は登録しなくても力を発揮できる代表的な業界・職種です。
- 一般企業の経理部門
- コンサルティング業界
- 金融機関 など
こうしたキャリアを考えている場合、「監査業務をやらないのに、登録する意味はあるだろうか?」と、登録の必要性が自然に薄れます。
登録費用の負担を避けたいから
公認会計士の登録には初期費用がかかりますので、公認会計士と名乗らなくても問題ない場合に見送る方もいます。具体的には、初年度で約25万円以上の金額がかかる計算です。
| パターン | 登録時の費用(目安) | 年会費(目安) | 初年度合計(目安) |
|---|---|---|---|
| 準会員→登録(東京) | 140,000円 | 114,000円 | 約254,000円 |
| 準会員→登録(他地域) | 140,000円 | 120,000〜126,000円 | 約260,000〜266,000円 |
| 準会員以外→登録(東京) | 150,000円 | 114,000円 | 約264,000円 |
参照:公認会計士開業登録の手引|日本公認会計士協会 より、3つのパターンにわけてマイナビ会計士で算出。※登録時費用には登録免許税、入会金、施設負担金などが含まれる
一般的な監査法人であれば、働いているうちに登録となれば負担してもらえますし、入社の際に負担してもらえるケースもあります。しかし、一般企業に転職したあとに登録するケースではほとんどが自己負担です。
年会費の負担を避けたいから
公認会計士に登録しないのは、年会費の負担を減らしたいからというのも理由の1つです。業務上必要であれば登録を維持しなくてはならず、以下の毎年約11〜13万円の年会費の支払いが必要となります。
| 項目 | 金額(年額) |
|---|---|
| 本部会費 | 72,000円(月額6,000円×12か月) |
| 地域会会費(東京) | 42,000円 |
| 地域会会費(その他地域) | 48,000〜54,000円 |
そして、この年会費は年2回(4月と10月)に6か月分をまとめて請求となります。たとえ監査業務や税理士業務を行っていなくても同様です。
結果として、毎年この金額を払い続ける価値が「自らのキャリアにあるか」を天秤にかけるわけです。
CPDの義務が負担になるから
公認会計士試験後に登録しない理由としては、継続的専門能力開発(CPD)の履修義務にかかる「時間」の負担も挙げられます。継続的専門研修制度(CPE)として知られていた制度ですが、2023年度から名称を変更しています。
現在の要件では、当該事業年度を含む直前3事業年度で合計120単位以上を取得、かつ当該事業年度に最低20単位以上を取得しなければなりません。また、必須科目として「職業倫理」2単位、「税務」2単位、さらに法定監査業務に従事する会員については「監査の品質及び不正リスク対応」6単位(うち2単位以上を不正事例研修とする)の取得も必要です。
ただでさえ忙しい日々を過ごしながら、能力開発に割く時間を用意するには従事先の理解が必要です。ときには、監査業務に直接関連しない仕事をしている場合、「今の仕事に必要かな...」と履修自体が負担に感じてしまう方もいます。
一般企業でのキャリアを優先したいから
そもそも、公認会計士試験後に登録しない方のなかには、「必要性をまったく感じていない」というケースも含まれます。一般企業で経理や財務、経営企画などの業務に従事する場合、実務能力やマネジメント能力である傾向が強いためです。
もちろん、「公認会計士」という肩書きも評価の対象となります。しかし、独占業務等に関係なければ「公認会計士試験合格者」のままでも業務に差し支えはなく、無理に評価を上げるための登録は必要ないのです。
むしろ、「公認会計士」という専門職のイメージを持たれてしまい、かえって事業会社でのキャリアの幅(例えば営業やマーケティングなどへの異動)が狭まるのではないか、と考える方もいます。
公認会計士試験の合格後に登録しないメリット
公認会計士試験の合格後に登録しないメリットは、以下の3つです。
- 登録・維持費用を節約できる
- 空き時間でスキルアップできる
- 自由に就職・転職先を選べる
登録・維持費用を節約できる
公認会計士試験の合格後に登録しなければ、初期費用(約15万~20万円)と、毎年の維持費(約11万~13万円)を支払う必要がありません。その分のお金を、ほかの資格取得や自己投資、あるいは生活費に回せます。
就職・転職先に何を求められるのかにもよりますが、監査業務を行う予定がないのであれば費用を支払い続けるメリットが小さく、無理に登録する必要はありません。
空き時間でスキルアップできる
公認会計士試験に合格後、登録しなければ継続的専門能力開発(CPD,旧CPE)を受ける義務もありません。「当該事業年度に20単位以上」かつ「直近3事業年度で120単位以上」という能力開発に時間と(場合によっては)費用を割く必要がなくなり、自らのペースで本当に今の実務に必要なスキルだけを学ぶ余裕を得られます。
例えば、一般企業で働くなら自社の業界動向やデータ分析、マネジメントスキルの研修を自由に選択できます。何か目標があるなら、こうした時間に融通が効くのは見逃せないメリットになるはずです。
自由に就職・転職先を選べる
登録した公認会計士は、日本公認会計士協会の職業倫理規定にしたがわなければなりません。裏を返せば、登録しなければ制約を受けずに、より自由に職業選択ができるということです。
例えば起業や副業、複数の企業での兼任(顧問など)といった、多様な働き方を追求したいのであれば検討してみる価値は十分にあります。
公認会計士試験の合格後に登録しないデメリット
公認会計士試験に合格後、登録しないデメリットとしては以下が挙げられます。
- 独占業務を行えない
- 税理士として登録できない
- 就職・転職先に制限を受ける
独占業務を行えない
試験後に登録していない場合、法的に「公認会計士」という肩書きを使用できません。あなたがどれだけの実務経験を積んでいても、監査報告書への署名、監査および税務などの「独占業務」に携われなくなります。
こうした対応できない領域が減ってしまう結果として、希望する就職・転職先へのアピールできないケースもちらほらでてきます。主に監査法人を目指している方であれば、自然に登録の必要性が高まるのです。
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公認会計士の仕事内容とは?
税理士として登録できない
大元の公認会計士として登録していない場合、当然ながら税理士登録もできません。「将来的に税務もやりたい」となった場合に、自らで会計士として登録してからとなるのです。
例えば、監査法人で働いて登録料を負担してもらえるケースでは、自己負担ゼロで『税理士にもなれる権利』を得られます。しかし、一般企業に移ったあとだと「自らに数十万円の費用」がかかってしまいます。
就職・転職先に制限を受ける
合格後に登録しない場合、監査・税務の専門家としてキャリアアップする道や、独立、特定のハイクラス求人において制限を受けやすくなるのもデメリットです。「公認会計士登録」が法律上・ルール上の必須条件となる職種や業務があり、これらは登録しない限り対応できないためです。
必然的に、募集要項に応募資格として「公認会計士」と明記している求人は対象外となります。実際の現場では「登録しているかどうか」よりも「実務能力」や「試験で得た知識」を重視するとはいえ、そもそも要件を満たせないケースも出てくるのです。
登録するかどうかを判断する3つのポイント
公認会計士試験に合格後、登録するかどうかを判断するポイントは以下のとおりです。
- 監査業務に携わる予定があるか
- 税理士業務を行いたいか
- 費用の負担を許容できるか
監査業務に携わる予定があるか
監査法人で働く予定がある、または将来的に独立して監査業務を行いたいのであれば、登録は「必須」です。独占業務に対応しなければならないほか、独立するにも登録が必須要件として含むためです。
もちろん、一部の監査業務(システム監査や内部監査など)であれば対応できるものもありますが、目指すキャリアの到達点によっては当然として必要な対応ともなるのです。
税理士業務を行いたいか
公認会計士試験に合格後、登録しておけば税理士としての登録要件も満たせます。税務を行いたい場合に限らず、独立開業を考えているなら対応業務を増やせるメリットは測り知れません。
公認会計士が独立する場合、収益の柱は「監査」と「税務」です。登録しなければ、この2大独占業務が行えないため、「会計コンサル」や「記帳代行(税理士法に抵触しない範囲)」といった非常に限定されたサービスしか提供できません。
費用の負担を許容できるか
登録に必要となる初期費用の約25万円に加え、年間維持費である約11〜13万円を許容できるかも1つの判断基準です。たとえ公認会計士以外で対応できる仕事であっても、登録している間は一定のコストがかかり続けます。
こうした費用を負担してでも、先ほど挙げた登録するメリット(肩書き、信用、独立など)を得たいかどうかを考えてください。監査法人に在籍中であればしてもらいやすいため、その間に登録を済ませてしまう、というのも1つの賢い判断です。
公認会計士試験の合格後に登録しない場合のキャリアパス
公認会計士試験に合格後、登録しない場合でも以下のような多様なキャリアパスが存在します。
- 一般企業の「経理」部門で活躍する
- 一般企業の「財務」部門で活躍する
- コンサルティング業界で専門知識を活かす
- 金融業界で財務分析の仕事に従事する
- 起業して独自のビジネスを展開する
- 海外でグローバルキャリアを築く
会計士としての知識は、日次の会計処理から月次・年次決算、さらに上場企業やIPO準備企業であれば連結決算や開示業務など、専門知識が求められる場面で大いに活躍できます。
マイナビ会計士は、目指すべき道に迷っている方に向けてキャリアプランのご提案からご相談まで幅広くサポートいたします。登録するかでお悩みで、キャリアを比較しながら見極めたい方はキャリアアドバイザーへぜひお声がけください。
よくある質問(FAQ)
最後に、公認会計士試験に合格後、登録しない選択肢で迷われている方からよく寄せられる質問へ回答します。
公認会計士試験合格後の有効期限は?
公認会計士試験に合格後は、有効期限がありません。試験合格の事実は生涯有効です。何年経過しても、登録要件(実務経験・実務補習・修了考査合格)を満たしていれば、公認会計士として登録できます。
公認会計士の登録期限は?
公認会計士試験の合格後に行う登録申請には、明確な期限が設定されていません。修了考査に合格した後、ご自身のタイミングでいつでも登録申請を行うことができます。試験合格から何年経過しても、要件を満たせば登録可能です。
公認会計士の年会費を払わないとどうなる?
公認会計士として登録した後、年会費を滞納し続けると、日本公認会計士協会から督促が行われ、最終的には抹消となる可能性があります。抹消となれば「公認会計士」と名乗れなくなり、独占業務も行えなくなります。
登録しない場合、CPD(旧CPE)の履修は必要ですか?
登録しない場合、CPD(旧CPE)の履修は一切必要ありません。同制度は、あくまでも「登録した公認会計士」にのみ課される義務だからです。ただし、会計基準や法令は頻繁に改正されます。登録していない場合でも、自主的に最新の情報を学び続ける姿勢は、どのキャリアに進むにしても非常に重要です。
まとめ
公認会計士試験に合格した後、公認会計士として登録するかどうかは義務ではなく、あなたの「選択」です。どちらを選んだとしても、キャリアパスは無数に開かれています。
例えば、合格後に登録すれば監査業務や税理士業務といった独占業務ができ、独立開業の道も拓きやすくなります。一方で登録しない場合は、初期費用・年会費やCPD履修などの負担、そして職業倫理規定による制約を受けずにキャリアを形成できるのです。
もし、公認会計士への登録に迷いがあるなら、ぜひマイナビ会計士へご相談ください。どちらのキャリアパスを選ぶべきか、今ならどこで働けるのかなどを丁寧にご提案いたします。
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転職された方の声
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進路について適切なアドバイスをしてもらえました!自分の進路について明確な答えが出せていなかったものの、どの業種に進んだら良いかなど適切にアドバイスをしてもらえました。どういったキャリアを積んでいけばより市場価値を高められるのか、候補の会社がどう違うのかを具体的に説明していただけました。(30代/会計士) -
求人の提案力と面接のフィードバックが良かった!タイムリーな求人の紹介とフィードバックの提供が良かったです。面接前の情報提供では、自分のアピールしたい強みが、面接先企業のどこに符号しており、今後の展開をどう捉えているかの思考の整理をする際に役立ち、安心して面接を迎えることが出来ました。(30代/会計士)
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