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「見えない資産」経営コンサルティングとは?

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監査法人からコンサルティング企業へ。そんなキャリアイメージを描いている公認会計士は多いのではないでしょうか。一方で「監査法人からコンサルティング企業に行って活躍できるのか」という疑問を持っている方もまた多いのではないでしょうか。

そこで今回は、2006年に公認会計士試験に合格後、大手監査法人の国内監査部門に約5年間勤務、決算支援を行っているコンサルティング会社を経て、平成29年8月から株式会社バリュークリエイトに在籍し経営コンサルタントとしてお仕事をしている公認会計士、坪井信之氏に話をうかがいました。

マイナビ会計士編集部

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プロフィール

坪井信之

坪井信之株式会社バリュークリエイト勤務

東京都出身。1996年慶應大学経済学部卒。写真家を目指し渡仏し、パリの写真学校で学ぶ。写真家の道に挫折した後、ニートの時期を経て、社会復帰を目指し公認会計士試験に挑戦し、2006年公認会計士試験合格。有限責任監査法人トーマツを経て、2011年コンサルティングファームに転職し日系企業のアジア地域でのコンプライアンス体制構築支援、連結決算支援業務を経験、その後、坪井信之公認会計士事務所設立。現在は株式会社バリュークリエイトにて経営アドバイザリー、IRコンサルティング、IRツール制作のディレクションを行っている。

編集部:今働いていらっしゃるバリュークリエイトさんとは、どんな会社なのですか?

坪井(敬称略):現在在籍している会社は設立から17年、従業員数が20名弱の会社です。もともとは公認会計士と証券アナリストが設立して、そこに広告制作出身者が加わった会社で、社名の通り「企業価値創造」をテーマに企業の内部(経営)に関するアドバイスから、それを外部(マーケット)に対してどのようにコミュニケーションするかをアドバイスしています。

編集部:坪井さんはそこでどんなお仕事をしているのですか?

坪井:バリュークリエイトは規模的にはまだ小さい会社なので、社内の管理部の業務から、クライアントの統合報告書などの投資家向けのツール作成のディレクター、経営コンサルティングまで、チャレンジできることは何でもやっている感じです。

管理部の業務としては管理会計のシステム導入のプロジェクトをメインに行っています。バリュークリエイトの従業員はほとんどがIRツールの製作を行っているデザイナーなので、当然管理会計などといった考え方はありません。IPO準備どころか、もっとそれ以前の段階で、会社として収益管理を見えるようにしましょうというレベルです。ただ、ホントに何も形がない状態からかかわることができましたので、クライアントにアドバイスする前の実験場として色々な実験をしてしまっています。大手の監査法人や上場企業と異なり自分の意見やアイデアですぐに動きだせるというのは規模の小さい企業の魅力です。

一方、経営コンサルティング業務では何をやっているかというと、正直よくわかりません(笑)。今は経営コンサルタントを名乗っていますが、もともとは経理業務の支援だったり、アドバイスだったりをしていて、その中で、楽しく仕事をしている経理の方って少ないなと感じていて、それならば、と楽しくない仕事にかける時間を少なくできるように経理業務の標準化・効率化のアドバイスをやりだして、それで残業時間は減ったけど、やっぱり皆さん楽しそうじゃない。イキイキとしていない。

この人たちをイキイキさせるにはどうすればいいんだろうって考えるようなって、そうなると会計のコンサルティングの枠ではおさまりきれなくなり、現在行っている「見えない資産」経営コンサルティングに行きつきました。

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編集部:「見えない資産」経営コンサルティング??

坪井:「見えない資産」経営のフレームワークは簡単に言うと企業文化などの「組織資産」と「人的資産」、「顧客資産」という財務諸表に載らない資産を見える化し、それを戦略と成果に結びつけるというものです。特徴的なのは人的資産の分析で、「誰もがみんな成長する」というアプローチではなく、「成長する人をより成長させる」というアプローチをとっている点です。人にはそれぞれ特質があるので、それにあった形で人材を活用するという考え方で、みんなが成長する訳ではないが、誰もが「イキイキ」と働く環境がつくり、それが価値創造につながるというのが面白いところです。

編集部:ところで、ご年齢から逆算させていただくと、学校を卒業されてから公認会計士になるまでの間に空白があるように思うのですが。

坪井:私自身のキャリアの話をすると、大学を卒業したあとに就職はせずに写真家になろうとパリの写真学校に通って、日本でカメラマンのアシスタントをしたりして10年ほど過ごしました。写真家になる夢をあきらめて公認会計士を志したのは30代になってからです。会計士になろうと思った理由は色々あるのですが、パリで出会った会計士がとても優雅に暮らしているのを目の当たりにしたこと、会計士のような難関資格を取得すれば社会人として格好がつくだろうと思ったことなどが、主な動機と言えるかもしれません。

そういった背景もあるので、もともと自分にとっての公認会計士の資格というのは、普通の社会人に戻るために必要な肩書という感覚でしたし、社会人としては10年の空白がありましたので大手監査法人に入所した当初から普通のキャリアパスで進んでも面白くならないなと考えていました。

監査法人からの転職を考えたきっかけは、監査業務ではインチャージまで経験させてもらってひと回りしたころで、その時点で監査法人に残って更に監査業務を極めていくか、それとも監査法人での知識や経験を活かして、監査法人以外に活躍の場を求めるかを考えたことでした。

そのころの自分にとって監査業務は内向きの作業に見えていて、クライアントの中に入って一緒に問題を解決したり、何かを作り上げたりしてクライアントに感謝されたいと月並みに考えていました。また、タイミング良く、当時在籍していた監査法人で希望退職制度があったこともあり、お世話になった監査法人からコンサルティング会社への転職を決断しました。

編集部:若手の公認会計士からよく「将来コンサルをしたいけれど監査経験はコンサルの役に立つのか?」と質問されます。この質問についてどう思いますか?

坪井:コンサルタントとしての今の自分のキャリアのベースとなっているのは、監査法人での経験であることは間違いありません。監査業務では多くの会社の経営の中心部分に触れることができますので、そんな経験ができるのは監査法人だけだと思います。また複数の会社を同時に比較しながら見ることもできるのも良い経験になっています。

当然のことですが、クライアントがコンサルタントに求めるのは「第三者の目線」と「専門的な知識」です。クライアントの話を聞いて、データを分析して見えるようにして、ソリューションを提案する。こういったことはまさに公認会計士の得意なところだと思います。

コンサルティング業務を行っていて感じるのは公認会計士の持つ経験やスキルは公認会計士自身が考えているよりも社会にとって価値があるものであるということです。監査法人にいるとCFO、財務経理の方との付き合いがメインになると思います。今はCEOや事業部長から営業部の方とも接点がありますが、会計士が普通に考えていることが、実はクライアントにとって普通ではなく、こちらにとってはちょっとしたことでも、クライアントからは目からウロコということが良くあります。

編集部:公認会計士にとってちょっとしたことでも、クライアントにとっては目からウロコ。そんなことがあるのですね。

坪井:例えば公認会計士になるための試験科目である管理会計では損益分岐点、セールスミックスと、貢献利益とかって基本的なこととして勉強したと思います。監査の現場でも最初に増減分析して、利益率を分析して、そこから製品だったり、得意先だったりにブレークダウンして分析していますよね。でも実際には、そういったことを見える形で考えて、実践している会社の方が少なかったりします。だから実りの少ない事業や顧客にリソースをかけて、一生懸命頑張っているのに会社の利益は良くならないなんて状態になっている。

そんな会社に「この数字の意味ってこういうことなんじゃないですか」ということを言ってみる。するとやっぱり納得していただける。頑張っても成果が出ないのは、能力がないからじゃなくて戦略が間違っていたからだって気づく。そこに気づくと急にイキイキしてきて、色々なチャレンジを始める。コンサルタントをやっていて充実感を感じるのはそんなクライアントの変化を感じた時です。また、痛い指摘をすると経営者の方にムッとされることもあるのですが、実はそんな瞬間も好きです(笑)

編集部:最後に、公認会計士はこれからの時代に夢のある仕事、資格だと思われますか。若手に何かメッセージをいただけますか?

坪井:世間で盛んに言われているように「人生百年時代」になってきて、特にプロフェッショナルである公認会計士のキャリアパスはこらからもっと多様になっていくと思います。長いキャリアの中で、自分がどんな仕事をしていくことが将来も価値を生み出していけるのか、何よりもどうしたら自分がもっとイキイキと働いていけるのかを考えていくことが大切だと思います。イキイキ働くために、転職という選択もあります。転職というのはエネルギーをたくさん使うし、時にはリスクをとらなければいけない出来事だと思います。だた、監査法人もコンサルティング会社も事業会社も長いキャリアの中の通過点の一つで、公認会計士であることも皆さんの要素の一部分にしか過ぎません。それを一つの武器として、イキイキと働きながら、同時に社会に貢献できるようにチャレンジしてみてください。

偉そうなことを言いましたが、実は私自身が監査法人のスタッフだった頃は、目の前の業務に忙殺されてなかなか5年先10年先の自分の姿を考えることはできなかったのですけれどね(笑)

公認会計士は業務を通じて社会に貢献できる仕事だと思います。自分達が社会に対して貢献することができる存在であることを意識し、自分達の価値を発信していくことが大切です。そうすることで公認会計士が活躍できるフィールドは無限に拡がっていくと思います。

株式会社バリュークリエイト:http://www.valuecreate.net

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