クライアントのためにコツコツと

公認会計士の独占業務である監査業務は、この国の資本市場を縁の下で支えるとても重要なものである。表舞台に立つことのないその仕事は、誰も気づかないところで粉飾を看破したり、不法行為を未然に是正したり、ひそかにこの社会に大きく貢献しているものである。最近独立した伊奈さんも、大手監査法人時代にご自身がもらったクライアントからの感謝の言葉が未だに支えになっているという。
プロフィール
伊奈 元気(仮名)30代男性
2008年公認会計士試験合格後、大手監査法人に入社。国内企業監査業務等を経て、2018年に独立。現在、個人事務所の形態で税務業務や決算業務、監査業務補助などに従事している。
障がいを抱えながら、会計士の道へ
眞山:伊奈さんが公認会計士を目指すことにしたのは、どういった理由からですか?
伊奈:知的労働がしたかった、というのが端的な理由です。実は私、よく見ていただくとわかるのですが体の一部に障がいを負っています。そのため、そもそも普通のキャリアを目指すことに制約があると思いこんでいました。資格さえとればそんなハンディキャップは気にしなくても良いし、職場で変に気を使われずに済むかもしれないと思い、通っていたのが経営学部だったこともあって公認会計士を志しました。
眞山:その後大手監査法人に入られてからは、ご自身の抱えるハンディキャップを感じたことはありますか?
伊奈:いい意味で、ハンディキャップをまったく意に介さずに仕事を任せてもらえていたとは思います。苦労したのはやはりクライアントとのコミュニケーションでした。障がいがある分、クライアントとの会話に時間がかかるし、多人数のミーティングなどの場で割って入ることもしづらかったので、そういう意味での苦労はいつもありました。結果として少しふさぎ込むというか、割り当てられた仕事を黙々とこなすことに集中してしまって、寡黙なスタッフだと思われていたんじゃないかと思います。
法令違反を事前に防いだことが自信に
眞山:黙々と仕事をする、という側面は、割とどの会計士の方にも多少なりある気がしますが、逆にそういう伊奈さんの特徴が良い方向に働いたことはありますか?
伊奈:あります。ある年の監査で純資産の部の検討を担当していた時に、その会社が予定していた配当額がいわゆる蛸配当(配当可能限度額を上回った状態)になっていることに気づき、経理部長の方に慌てて報告をさせてもらいました。最初、経理部長は「そんな決まりあるんですか?」という感じでしたし、日本の企業で配当可能限度額を超えてまで配当金を払おうという会社もまぁ珍しいと思うので、監査上の検討項目としても必ずしも重んじられない傾向があるのですが、上司に頼まれるでもなく黙々と調書を作った結果、会社を救うことができたので、クライアントからも、監査チームの上司からもものすごく感謝されました。
眞山:すごくいい話ですね。
伊奈:はい。自分のようなスタイルの仕事の進め方でもちゃんと会社の役に立てるんだという手応えを得ることができ、自信がつきました。また、クライアントに喜んでもらえるという経験は実は監査業務ではめったにできるわけでもないので、そういう意味でも非常にラッキーな経験ができたと思います。
自分らしく働くために独立を選ぶ
眞山:その後、伊奈さんは独立を決意されるわけですが。
伊奈:いいも悪いも、色々な理由がありました。障がいを抱えた身として、大きな組織に守ってもらいながら自分のできる範囲で貢献するという選択肢も勿論あったと思うのですが、それでも専門家集団である以上、いわゆるUp or Out(キャリアには昇進するか、転職するかの2つしかないという、コンサルティングファーム等に見られる人事慣行)の雰囲気も強かった。後輩たちに先を越されるのを横目で見ながら、隅っこでポツンと仕事をするようなキャリアはやはり望んでいなかったので、思い切って独立するのもありかな、と思っていました。先ほど話したようなクライアントに感謝される経験が、最終的に自分の背中を押してくれたと思います。
眞山:独立した後はどんなスタイルで仕事をしていますか?
伊奈:もともと関東の近郊都市の出身でして、地元に根付いた仕事をしようと思い、税務業務をしながら、時折先輩が開所している監査法人に助っ人スタッフとして呼ばれたり…という形でのんびり働いています。税務業務も監査業務もいわゆる年中行事的な仕事なので、私のようなものでもペース配分がやりやすいのが助かっています。
眞山:大手監査法人にいたころと今とを比べたときに、精神面などを含めたコンディションや仕事の環境などはどうですか?
伊奈:ストレスはかなり軽くなりました。自分の体と相談しながらクライアント数、要は忙しさの度合いをある程度コントロールできるので。また、クライアントも私の体のことを分かってくれたうえで契約をしてくれていることもあり、理解を得ながら自分らしく働けているという点も大きいですね。
眞山:伊奈さんのように独立して自分のペースを確立するのって、簡単なようですごく難しいんじゃないかと思います。伊奈さんなりの秘訣があれば教えてください。
伊奈:自分の仕事のスタンスを理解してもらうことは大事ですが、だからこそ、仕事を受けさせていただいた以上クライアントのことを第一に考えて、コツコツと仕事をするという「当たり前」を崩さないのが大事だと思います。ハンディキャップがあることって、誤解を恐れずに言えばそれ自体が営業効果を持っている面が、正直あるんですよ。どうせ同じ顧問を雇うなら、この先生を助けてあげたい、というような優しさが働くので。でも、ひとたび契約を結んでからは、良くも悪くも私はただのプロとしてクライアントと接するべきだと思っています。独立したり起業したりを目指す人って、会計士の中でも山っ気があるというか、派手なことを好む人が少なからず混じっていると思うのですが、ぱっと見仕事ができそうな雰囲気を出しておきながら大したパフォーマンスを出せずに終わるより、四の五の言わずにコツコツとベストを尽くすことが大事なんじゃ?と思います。
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