<公認会計士 特別インタビュー>AIに仕事を奪われるのは、心意気を失った時だ
AIに奪われる仕事として会計周辺の領域が筆頭に上がることは多い。公認会計士が手掛ける監査業務もその多くが自動化され、確かにAIに取って代わる領域は少なくないのかもしれない。そんな中、多様化する公認会計士のキャリアの中で、敢えて生涯を監査に捧げると肚を決めた人がいる。井上さんの肝の据わった話をぜひ聞いていただきたい。
プロフィール
井上 慎太郎(仮名)20代男性 公認会計士
都内私立大学在学中に公認会計士試験に合格。現在、大手監査法人のマネジャーとして、国内監査部門のクライアントを対象に財務諸表監査・内部統制監査を手掛ける。
多様なキャリアの中で選んだ「監査一筋」
眞山:井上さんは在学中に公認会計士試験に合格されたということですが、もともと公認会計士という資格にはなぜ興味を持ったのですか?
井上(敬称略):もともと資格に興味があって色々調べていたんですけど、大学の学部が理系だったということもあって、大量の記憶を要求する法律系の資格よりも数字を扱う資格のほうが自分に向いていると思い、将来性やキャリアパスに明るい展望が持てる資格として公認会計士を目指すことにしました。
眞山:ということは、公認会計士になったら色々なことができるという思いがあったわけですね。
井上:ありますね。実際、自分の同期の多くは既に独立していて、自分で事務所を開いたり、起業している人もいます。コロナ禍になる前は同期で集まっての飲み会もたまにやっていましたが、会うたびに誰かが肩書が変わっているという面白さはありますね。
眞山:そんな中、井上さんはまだ大手監査法人にいらっしゃるわけですけど、いずれは何かやってみたいことはあるのでしょうか?
井上:ないです(笑)。私はもう、監査をやっていこうという気持ちが固まってしまっているので。
自分が変わらないことで、多様なニーズに応えられる
眞山:井上さんの年齢ですでにそこまで肚を決めているのもすごく珍しいですね。井上さんにそこまで監査をやっていこうと思わせるものが何だったのか、凄く興味があります。ここでいったん、これまでのキャリアについて教えてください。
井上:キャリアと言っても、大手監査法人の国内監査部門で、監査をずっとやっているというだけなんですよね。ただ、そんな中で色々な業種の企業を見ることができました。あまり詳しく言うと私が誰なのかがバレてしまうので(笑)、ほどほどに話すと、食品系の製造業だったり、人材系の企業だったりです。また、適用する会計基準もほとんどは日本の会計基準ですが、IFRSに準拠している会社もあります。
そういう会社に、決算や内部統制の監査人としてかかわりを持っていくと、どんどん引き出しが増えていく自分がいるわけです。そして、自分がマネジャーになるころには、CFOと呼ばれる立場の方や、社長や監査役といった立場の方と直接話をするようになるので、彼らがどういう気持ちで何千人という従業員にご飯を食べさせて、どんなふうに顧客のニーズに応えていこうとしているのか、というものに触れることもできます。それって十分すぎるほど魅力的な仕事だと思うんですよ。
公認会計士の試験に合格した時から、色々なことに取り組んでみたいという思いや、色々なことができるはずだという展望はもっていたのですが、なんてことはない、自分が大手の監査法人の一員としてやるべきことをやっていると、おのずと色々な企業に出会うことができるということが分かったんですよね。
眞山:確かに、公認会計士という仕事の大きな魅力の一つはそこにあるでしょうね。だからこそ、そこに一生をささげようと思ったわけですか。
井上:はい。世の中が今の監査法人なり私という人を必要としてくれているのであれば、ずっと関わっていきたいですね。眞山さんや自分の身の回りにいる会計士のように多才さを発揮する道ももちろんある。でも自分は監査人としてひたすら引き出しを増やし、知見を高め、そしてそれを後進にもちゃんとトランスファーしていくことで、組織としての実力を高めることに貢献する…という職人的な生き方が向いているんだと思います。
心意気というバトンを渡し続けたい
眞山:あまりにも真っ直ぐな気持ちを聞かされたので、すこし意地悪な質問をしたいのですが(笑)、そんな井上さんが「監査を辞めたい」と思ったことはありますか。
井上:それはもう、まちがいなく最初の繁忙期です(笑)。試験に受かって初めての4~5月は地獄のような日々でしたね。忙しくなると先輩たちも捕まえられなくなるし、事務所で見つけたとしてもヘトヘトな顔をしているので頼れない。いっぽう、新人の僕はもう何をしたらいいか分からず、とりあえず監査マニュアルを読むんだけど、これ本当に日本語か?というくらい意味が分からない(笑)。仕方ないから去年作られた監査調書をもとに自分なりに…いや、実際には去年の調書をそのまま追いかけるように手続を終えてレビューを受けると、その去年の手続をやった張本人から「この手続じゃだめだよ」と怒られる(笑)。
この字面だけ追うとパワハラみたいに見えますし、自分も「もしかしたらとんでもない組織に入っちゃったんじゃないか」という気持ちになったことも何度かあります。
眞山:その時はなぜやめてしまおうとしなかったのですか?
井上:新人の会計士のまま監査法人を出ても使ってくれるところなんてなさそうだし、少なくとも修了試験を終えるまでは我慢するしかないと思ってその年は乗り切りました。それで、翌年になって自分が後輩から質問を浴びせられる側になって、「この手続じゃだめだ」といった先輩の気持ちがやっと理解できたんですよね。1年前の自分がそうであったように、先輩も余裕がない中、何とかその場しのぎの手続をやるしかなかった。でも、自分に経験と時間的な余裕さえあればもっと工夫できたのに…そういう思いがあるから、その場しのぎの調書を見てOKを出したくないんです。
その時に同時に思ったのが、僕たちはこうやって先輩たちのバトンを受けとりながら仕事をしているんだな、ということなんですよ。多様なキャリアが広がっていることを否定するつもりは全然ないのですが、誰かがバトンを受け取り続け、渡し続けないと、監査という仕事の本当の価値、本当の面白さってたぶん見えてこないのかな、と思います。
AIに奪われる仕事の筆頭に監査があがることもありますし、事実、先ほど紹介したその場しのぎの手続にしたって、自動化したり、アウトソーシングして効率化したりできるものです。でも、僕がバトンを渡したいのはその「手続き」の部分じゃなく、うんうん唸りながらあるべき手続を考えたり、その苦悩を知ったうえで後輩にダメ出しをするような「心意気」の部分なんですよね。自動化することでそれが失われたとき、私たちは本当の意味で仕事を奪われるのかもしれないけど、心意気を持った職業人であり続ける限り、僕たちはAIを使いこなす側に回れるんじゃないかと思っています。
※記事内容などは取材時のものになります。
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