【辞めたい】監査法人、IPO業務、M&A...逃げ続けた会計士の道

これから社会に出る学生にとって、キャリアとは「思い描くもの」である一方で、社会人として様々な経験を積んできた40代以降の人たちにとって、キャリアは「振り返るもの」でもあったりする。
輝かしいキャリアを思い描きつつ、時代に阻まれて模索を続けた山田さんに会計士人生を振り返ってもらった。彼は自身のキャリアに何を見つけたのだろうか。
プロフィール
山田 幸平公認会計士
「優秀な会計士」とは言われませんが、「面白い会計士」とは言われるタイプ。2000年に中央青山監査法人に入所。会計コンサルティング会社を経て2009年に独立。現在は個人ではベンチャー企業の顧問を行いつつ、2019年に設立した監査法人のパートナーとして監査にも関与。2020年4月から大阪でコンサルティング会社を設立予定。監査法人から逃げ出し、IPO業務からも逃げ出し…

2000年10月、大学4年生の時に公認会計士第二次試験に合格した時、ヤマダは有頂天でした。「さあ、ヤマダは今日からエリートだ。自分の前には輝かしい未来しかない。日本で一番大手の監査法人に入って、大手クライアントの監査チームに配属されて、30代のうちにパートナーになって、老後まで安泰だ。」
…しかし、ヤマダはいやーな予兆を察知して逃げるように監査法人を退職。その後、その監査法人は業務停止処分を受けることになりました。
当初描いていたヤマダの輝かしい未来予想図はもろくも崩れました。ショックのあまり、25歳にして初めて茶髪にしてみましたが、まったく似合いませんでした。
独立系の会計コンサルティング会社に転職したヤマダは一発逆転を狙うべく、IPO業務の経験を積んで将来的にはストックオプションで大儲けしてやることにしました。
「名誉ある地位が得られぬならば金持ちになればいいじゃない。」
そう安易に考えたのは、まだヤマダはきっと何者かになれるはず、という自分自身への期待があるからでした。
しかし、IPO支援の現場はいきなり徹夜になるような壮絶な現場でした。これはなかなか辛いなーと。そして、IPOってそう簡単に実現できるものでもないのだなという現実を知りました。とはいえ、まだ転職して半年だし、もうしばらくは耐えねばと思っていた矢先、隣のM&A事業部の部長さんから声がかかりました。「M&Aは面白いぞ」と。
その時、会計士試験の予備校の講師も同じことを言っていたなーとふと思い出しました。しかし、当時のヤマダにとってM&Aは「乗っ取り」というマイナスイメージがぼんやりとありました。とはいえ、このままIPO事業部に居ても辛いなーという極めて消極的な理由でM&A事業部への転部を決めました。
そして、M&Aからも逃げる…その前に
M&A事業部に移るとひたすら財務DDの日々となりました。だいたい月に2本のペースでした。第1週に現地調査、第2週に報告書作成、第3週に次の現地調査、第4週に報告書作成。これが毎月続きます。花粉症で辛い春も、暑い夏も、旅行に行きたくなる秋も、寒い冬もひたすらこのペースでした。
2年経過した時点でもういやだ、辞めたいという気持ちがむくむくと沸き上がりました。
当時はもう気持ちがボロボロでした。月曜日から金曜日までボロボロになるまで働き、土日に、ハロプロのアイドルを追っかけていた時だけはイキイキしていました。「会計士は副業であってドルヲタが本業」とうそぶいていたほどです。
土日にライブで叫びすぎて、週明けには声がかすれているのが当たり前だったヤマダは、「社会人」というより「社壊人」でした。
日曜日のライブが終わると「明日から地獄が始まるのか」と悲しい気持になっていた反面、監査もIPOも逃げてきてしまったという「負い目」があったので、M&Aからも逃げるという踏ん切りがつかず、悩んでいた時期でした。
そこで、一つ目安を決めました。「財務DDを100件やったら辞める」。不思議なものでいったん目標が決まると、早く辞めたいという気持ちも働き、積極的に手を挙げて気が付けば同時並行で2~3件をこなせるようになりました。そして2008年12月末をもって退職しました。
独立したらリーマンショック。そこで得たもの

「ああ、自由だ!」そう思った2009年はリーマンショック後の不況の真っ只中でした。会計士だから何とかなるっしょ!という軽い気持で何の準備もしないで独立したもので、当時は自宅兼事務所でボンヤリしておりました(何件かスポットの仕事はしていたはずですが、あまり覚えていません)。
特にやりたいこともなく、ひたすら「受け身」でした。もうヤマダは名誉もお金も手に入れる可能性は無いわけで、何者にもなれないという現実にいじけるしかなかったのです。
そんな中でも一つ印象に残っているのは、とある会社更生法を適用した会社に約1年常駐したことです。最初に訪れた時に広いオフィスにいたたくさんの人たちが、徐々に減っていきます。
経理部も最初に役員が去り、部長が去り、最後に主任が退職して、独りぼっちになりました。ひとり、ガランとしたオフィスで過去の会計データを見ながら管財人からの宿題を黙々とこなす日々でした。
やがて、会社更生手続も集結し、ヤマダは事業再生に関する基礎知識を身に付けることができました。その後は、民事再生や私的整理の仕事をするようになりました。
出世や一獲千金やM&Aやといったキラキラしたものから遠ざかりたかったヤマダにとって、再生案件は心地よいもので、この分野で喰っていけるかも?と思ったりもしました。
しかし、またしても流れは変わります。2012年12月にアベノミクスが始まって、次第に再生案件が少なくなってきました。仲良しの弁護士も「暇だー」という始末。せっかく身につけた再生系の知識を活かす機会がなくなりました。
とはいえ、再生案件が減ったということはつまり好況なわけで、それならそれで仕事は来るだろう、という淡い期待もあり、実際そこからはかつて経験した財務DDなどでお茶を濁す日々が続いていました。
振り返れば、すべてが伏線だった

転機が訪れたのは2016年でした。当時は次々と20代の起業家と会う縁があったのですが、これが37歳のヤマダにとっては衝撃的でした。自分より10歳以上年下の若者が起業している。しかも事業内容も初めて聞く内容ばかりで半分も言っている意味が分からない。
自分の20代を振り返ると、明らかに目の前の若者は当時の自分よりも優秀だ。でも、彼らを支えることならヤマダにもできるかもしれない。そう思って、2016年7月、ベンチャー企業の支援に本格的に取り組むことを決めました。今まで受け身だったヤマダがようやくやりたいことを見つけた瞬間でした。
そして、事務所名を山田幸平公認会計士事務所という陳腐な名前から「LR会計」に改めました。デザイナーさんと何度も議論して、ロゴやホームページを作りました。今、当時を振り返ると、「仕事って楽しい!」という感覚を初めて得られたのだと思います。
次第に、ベンチャー企業の税務顧問の仕事が増えてきました。それまでは倒産間際の会社ばかり見ていたので、元気な会社の税務申告書はまるで違うなと面食らうこともありましたが、なんでも場数をこなせばどうにかなるものですね。
様々な社長と話す中で、ふと思い出したのは、20代後半の辛かった財務DDの日々でした。当時はひたすら修行のように案件をこなしていただけですが、不思議と当時の記憶が蘇ってきました。あの辛い4年間の経験を活かす場面が来たぞと。
魅力的な物語には伏線というものがありますが、ヤマダの人生にも伏線が潜んでいたのだと今になって分かりました。ずっとうまくいかなかった会計士としての日々を肯定することができるようになった時、ヤマダは40歳になっておりました。
「落ち込むこともあるけれど、ヤマダ、会計士の仕事が好きです。」
※記事内容などは取材時のものになります。
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