<公認会計士 特別インタビュー>自分を掘り当てる旅

プロフェッショナルという言葉には一匹狼的な響きがある。公認会計士を含む士業の人たちも、もちろんプロフェッショナルと呼ばれる立場にいる。その一方で、士業の人数は決して少なくない。3万人を超える公認会計士の中で、自分だけの色を出すにはどうしたら良いのか。井野さんが公認会計士試験に合格してからの数年間はまさにその答えを探し続ける時間だった。彼がもがき苦しんだキャリアと、その向こう側について、話を聞いた。
プロフィール
井野隆一さん(仮名) 30代男性 公認会計士
東京都内の私立大学を卒業後、1年間の浪人生活を経て公認会計士試験に合格するも、監査法人の空気になじめずに転職。現在、大手ソフトウェア開発会社の経営企画室長として、中期経営計画の立案などを手掛ける。「プロフェッショナル症候群」に苦しんだ日々
眞山:あらかじめ、前置きしておく必要がありそうですね。今回、井野さんには今までとはかなり毛色の違うインタビューをさせていただいています。井野さんが是非「自分の苦悩について語りたい」ということで(笑)
井野(敬称略):そうなんです(笑)。こんな機会を頂けて嬉しいです。一昔前、「サザエさん症候群」っていう言葉が流行りましたよね。月曜日が近づくにつれて憂鬱になる、という。私もそれに非常に近いものがありました。
眞山:仕事がつらかったんですか?
井野:大きな意味では、そうですね。もっと詳しく言うと、「これは俺の仕事じゃない」という感覚がいつもありました。せっかくプロになっているのに、なんで(当時勤めていた大手監査法人の)マニュアルに沿わなきゃいけないんだろう、みたいなことをずっと思ってました。
NHKで「プロフェッショナル~仕事の流儀~」っていう番組があって、あの頃は月曜日の夜10時くらいからやってたんですけど、あれを見るたびに凹んでました(笑)。この人たちは自分だけの道を突き進んでいるのに、僕は組織人を続けちゃってるな…という気持ちです。サザエさん症候群ならぬ「プロフェッショナル症候群」でした。
眞山:なるほど…少しわかるような気がします。もともと公認会計士を志したのは、そういったプロフェッショナルにあこがれていたんでしょうか。
井野:そうです。私大の文系学部に進んで、みんなが同じようなタイミングで就職活動を始めるころに、自分は心情的にどうしてもその流れに乗れずにいました。
両親からは、道に迷うなら大学院に行ったらどうか?と言ってもらったのですが、モラトリアムを引き延ばすのも嫌な気がしたので、それなら何か資格を取りたいと相談したら「公認会計士はどうか」となり、調べてみたら、色々な活躍の形があって「これは楽しそうだ」と思って、よし目指すぞ!と思いました。
眞山:ご両親の理解があってのことだったんですね。
井野:そうですね。感謝しています。世の中はリーマンショックで揺れていたころで、就職できない学生が当時多かったことも、進学を進めたりや資格取得を認めてくれた一因かもしれません。
迷い続けたキャリア
眞山:その後、大手監査法人に入ったら、先ほどのような「プロフェッショナル症候群」になったわけですね。
井野:そうです。あの頃はもうとにかく早く修了考査を終えて、公認会計士登録したらすぐ転職したいと思ってました。補習所でやるビジネスゲームとかが面白くて、何かビジネスアイデアを考えたら起業したいとも思ってましたね。
眞山:結局は起業ではなく、転職を選んだわけですね。
井野:そうです。結局のところ度胸がなかったんでしょうね。せっかくとった資格だし、自分は起業はできないけど、起業した人を支えることは出来るだろうと思って、ベンチャー起業のCFOのポジションを探していました。でも公認会計士としての経験が3年しかないと、いきなりCFOは難しく、ひとまずキャリアを積むつもりで経理ポジションを見つけて大手のソフトウェア開発会社に転職しました。
眞山:CFOになるための修行期間のような位置づけですね。
井野:うん…そういうことになりますが、プロフェッショナルになりたいと言いつつ、いろいろな言い訳を固めて、結局プロフェッショナルから遠ざかるキャリアを選んだのかも、と思います。修行したければ、そのまま監査法人にいればよかったわけで。
眞山:でも、得た物もあったんじゃないですか?
井野:結果的には、そうですね。上司と食事に行った時に、相も変わらず「プロフェッショナルになりたい・いつか起業したい」ということを言ったんですけど、バカにせずに聞いてくれて、「それなら経理よりも経営企画がいいんじゃない?」とポジションを変えてくれました。
それで、ある日、中期経営計画を作るにあたって研修を受けてこいと言われました。そしたら研修の講師も公認会計士でして…まぁ、当たり前と言えば当たり前ではありますが。
その人はたぶん40代後半くらいだったと思うんですが、研修の講師をやるくらいだから経営計画のことをずっと突き詰めてきたんだろうと想像して、自分は今のままで本当に良いんだろうか?とか考えちゃって。
目を覚ました一言
眞山:でも、その職場には結局今もいらっしゃるんですよね?
井野:はい。先ほどの上司に正直に「ほかのポジションを探している」と言ったらさすがに慰留されました。その時に「一日一日の積み重ねがプロフェッショナルを作るんだぞ」と言われて、ああ、僕はこういう一言に出会うために転職したのかも、と思いました。そして「一緒に中期経営計画を作って、それを見届けるまで頑張ってみろ」と言われて、その通りに足かけ6年働いています。
眞山:なるほど、やはり転職の成否は年収とかだけじゃなく、どんな人と出会えたか、という点が大きいでしょうか?
井野:少なくとも僕にとってはそうですね。監査法人を飛び出していなかったら、今頃どれくらいのポジションになって、どれくらい稼いだんだろう…とか想像したりしますが、あの上司との出会いはお金で換算できるものではなかったです。
眞山:ありがとうございます。それでは…最後に聞かせてください。井野さんにとって「プロフェッショナルとは」?
井野:え、それ訊いてくれるんですか(笑)うーん、自分の歩いた道に誇りを持てる人だと思います。僕のキャリアチェンジの動機はあまりカッコよくないし、その後も何度も迷ったり悩んだりしましたけど、でも結果として、自分だけの道を歩いたんだな、という実感があって、他でもない自分の強みは、そういう自分だけの道のりが生み出すものなんじゃないかと思います。
あの上司はもう定年を迎えて退職したので、いつか僕みたいな迷える子羊がうちの会社に来たら、彼がしてくれた話をしてあげようと思っています。
※記事内容などは取材時のものになります。
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