監査法人で挫折しリストラへ応募。壮大な回り道をした会計士の話
転職というと「キャリアアップ」という言葉を連想することが多い。そしてそれを前提として「キャリアパス」を描く人も多いだろう。もちろん、ポジションが変わるたびに今まで以上に自分の力量を試せる場に出会えるのは喜ばしいことではある。しかし、そうではないこともある。今回話を伺った公認会計士の方は、一度事業会社を経験しながら、ふたたび監査法人に再就職したという経験の持ち主。一見回り道に見えるそのキャリアは、彼に何をもたらしたのか。
プロフィール
30代後半 男性 公認会計士
2006年に公認会計士試験に合格し、地元の街に偶々あった大手監査法人の事務所に就職。監査業務に従事している途中で、東京で行われている内部統制導入のための大規模プロジェクトに参画する。2011年に同監査法人が行った早期退職プログラムに応募し、都内の大手事業会社の内部監査部門に就職するも3年後には別の大手監査法人に就職。現在、マネジャーとしてIPO支援関係の業務を中心に従事。
地方事務所でのキャリアのスタート
ジェネラリストを目指して、地元で就職
私が公認会計士を志したのは大学在学中のことでした。当時は都内の私立大学に通っていたのですが、残念ながら合格することができず、地方都市にある実家に戻ることに。そこで出会った新しい受験生仲間とともに、なんとか合格することができました。
地元に戻るまでは、監査法人=東京というイメージが強かったのですが、大手の東京事務所のように部門が細分化されているのは、大学を出たばかりで右も左も分からない自分にとっては、どれか一つの部署を選ばざるを得ないこと自体が、なにか選択肢を狭められてしまうような気がしていました。
かといって、非大手の監査法人に飛び込む勇気もなかった僕は、大手のブランドと、ジェネラリストを志向できるメリットを両取りできる地方事務所に就職することにしました…というとかっこいいですが、要は何かと煮え切らないままに近場の就職先を見つけてしまった、というのが本音です。
ある日舞い降りた、大きなプロジェクトへの参加の道
結果として、いろいろな業種の監査を経験できたことは私にとってはとてもプラス面が多かったと思います。自分はコミュニケーションが非常に苦手だったため、競争相手の多い都会のオフィスで働くよりも、気心の知れた先輩に気長に育ててもらえたということも、感謝している部分があります。
そんな僕に初めての転機が訪れたのは、キャリア3年目に入ってからのことでした。同じ事務所の上司が、大手企業の内部統制制度の導入プロジェクト、いわゆるJ-soxの案件に誘ってくれたのです。正直、クライアントが大手であることはあまり興味がありませんでしたが、とても仲良くしていただいていた先輩の一人が「一緒に行かないか」と誘ってくれたこともあり、参加させてもらうことにしました。
自分にとってそれは大きな挫折の経験でもあり、同時に、監査法人の外で活躍する道を模索しようと思ったきっかけにもなりました。その一大プロジェクトでは、グループ内のコンサルティングファームのマネジャーがプロジェクトを取り仕切っていて、その人の仕事のスピードや、新しい制度を即座にインプットする姿勢を目の当たりにして、強い衝撃を覚えたのです。会計士でもないのに、というと失礼ですが、私よりずっと内部統制の知識がありました。。資格を持っていることの意味を、いちから考えさせられる出来事でした。
事業会社にいったん転職、そしてまた監査法人へ
迷った挙句、リストラに応募することに。しかし…
そのプロジェクトで、自分のプライド(そのプライドの中には、「会計士であること」も入っていました)を丸ごと打ち砕かれた自分は、なかなか仕事の中にやりがいや生きがいを見出せずにいました。そのうち、監査法人を取り巻く環境がどんどん厳しくなり、上司から「もっと主体的に動かないと仕事なくなるぞ」と言われたりしても、どうしてもやる気が出ませんでした。
そうこうしているうちに、とうとうリストラの発表がありました。さんざん迷った挙句、それに応募して、大手の事業会社に就職し、内部監査室に配属されました。先述のプロジェクトの経験が多少なりあったおかげで、この会社では一応自分なりのバリューは出せたように思っています。公認会計士は、事業会社で活躍するとしても間接部門の業務がほとんどだと思うのですが、そういった業務でも無から有を生み出す「0→1」の仕事はあるんだな、と実感することができました。
しかし、一通りの「0→1」が終わると、毎年淡々とスケジュールに沿って仕事をこなすことが多くなり、自分にとって肌に合わないと思う部分が増えてきました。ほかの事業会社であればM&Aがあったり、事業規模が拡大したりということもあったのかもしれないですが、私の入った会社は良くも悪くも安定的で業務概要の変化も乏しかったのです。
監査法人への未練に気づいた自分
というわけで、結局、その会社も辞めることにしました。問題は「次、どうするか」でした。
J-Sox関連業務やIFRS関連業務が落ち着き、また、リーマンショックや東日本大震災などもあり、しばらくは転職の環境も厳しかったわけですが、自分が転職活動をしたころはちょうど新規上場の案件数も増えてきていて、ベンチャービジネスにチャレンジする知り合いの会計士も増えてきていました。
しかし、自分はリスクテイクをしてそういった場に飛び込む勇気がありませんでした。思えば自分は、なんとなく地元の監査法人に就職し、なんとなく大きなプロジェクトに参画し、なんとなくリストラに参加し…と、何かを主体的に考え、道を選ぶということをしてこなかったのだな、と、このころ気づいてしまいました。
東京の大学に通っているときに公認会計士を志した自分は、本当は何をしたかったのか?キャリア8年目にして、ようやく「そもそも論」を考えてキャリアを考えた結果、大手監査法人にもう一度入りなおそうと思い、前々職とは別の法人の求人に応募したのでした。
回り道も、ひとつの道だと思う
ようやく踏み始めた「一歩目」に、回り道の経験が役立っている
決してカッコよくない自分のキャリアをこうやって話してきたわけですが、意外にも自分は壮大な回り道をしてしまった自分のキャリアを、誇りに思っているのだな、と気づかされました。新しい監査法人では新規上場支援の部署に配属され、一歩目のつもりで新たなキャリアをスタートさせたわけですが、それまで得た物は決して無駄ではなかったのです。
周囲を見渡すと、とんとん拍子で大企業で出世した同級生とか、結婚して幸せそうにイクメンしている親友とか(どうでも良いですが私は独身です)、起業して大成功している、今まさにお手伝いしているクライアントの社長さんとか…順風満帆な人生をうらやましく思うこともないわけではありません。
それでも自分は自分なりの道を歩んでいるわけで、それに愛着を持っていきたいと思っているし、少なくとも今この話をしている時点では、自分は今の境遇を十分に楽しんでいられていると感じます。これからのキャリアを悩んでいる人には、とにかく「何があっても大丈夫だよ」と伝えたいですね。
※記事内容などは取材時のものになります。
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