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30代で独立。公認会計士のキャリア形成に必要な3箇条とは

30代で独立。公認会計士のキャリア形成に必要な3箇条とは
現在、私は事業再生・事業承継・M&A・IPO・海外企業とのジョイントベンチャー設立・税務申告・執筆・研修講師など、独立前には想像もしなかったほど幅広く仕事を手掛けています。
このように書くと、特別な経験を積んできたように思われる方もいるかもしれませんが、監査法人勤務からキャリアをスタートし、中堅の会計事務所への転職を経て独立するという、公認会計士としてはよくある道を辿ってきました。
これからご紹介する内容が少しでも皆様のキャリア形成のヒントになれば幸いです。
マイナビ会計士編集部

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プロフィール

30代男性 公認会計士・税理士

大手監査法人に勤務の後、中堅会計事務所を経て独立。監査法人では国内監査業務に従事し、製造業、通信業、バイオベンチャー、商社、卸業、コンサルティング業等の幅広い業種を経験。中堅会計事務所では事業再生、M&A(デューデリジェンス)、申告業務等を多数手掛ける。現在は、事業再生・事業承継・M&A・IPO・海外企業とのジョイントベンチャー設立・税務申告・執筆・研修講師などを手掛ける。

結果が出ない監査法人時代

監査法人1年目の頃から会社の数字を見て、何が起こっているのかを想像しクライアントとお話をすることがとても好きでした。しかし、少し複雑な事や、新しい事に直面すると、適切に対応することができず「頭を使え」と何度も先輩方から叱られました。監査現場をほぼ切り盛りする立場になるはずの頃になっても、そのような立場は与えられず、自分としても成長を感じられない日々が続き将来に不安を感じ始めていました。

監査チームリーダーからは、「君を監査チームから外す話が出ている。今年中に結果を出してもらわないと自分としても守り切れない」とさえ言われました。そのような中、今でもお付き合いが続いている先輩から熱心に指導して頂いたおかげで、自分なりに成長したと感じ、自信を持てるようになりました。「監査法人で仕事を続けていけそうだ」そう思い始めていた時、同期の仲間たちが昇格する時に自分は昇格しませんでした。昇格しなかったのは私だけではありませんでしたが、やっと自信がついてきた時だったのでその衝撃は大きく、監査法人からの退職を意識するきっかけになりました。

昼夜を問わず、クライアントと監査チームのために尽くしてきたつもりでしたが、結果が伴わず評価されていませんでした。ここで初めて社会人として挫折を味わったのですが、今となればこの挫折が何にも代えがたい経験だったと感謝しています。

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中堅会計事務所でコンサルタントとしての基礎を固める

監査法人で挫折を味わい転職活動を始めました。当初は会計から離れたい一心で戦略系コンサルティングファームや一般事業会社の戦略企画ポジションに応募しましたが、いずれも不採用でした。正直驚きました。それまで公認会計士であればある程度転職も楽だろうと甘く考えていたのですが、現実はそうではありませんでした。彼らが求める頭の使い方、物事の捉え方に柔軟に対応できず、質問に対して的確に答える事ができなかったのです。そこで人生で初めて、「自分は何ができるのか」「何をしたいのか」「世の中は何を求めているのか」を考えました。その答えは、公認会計士としての会計の専門性をもって「中小企業の社長を支援する」ことでした。

そして、縁があって中堅の会計事務所に入所し、主に事業再生やM&Aにおけるデューデリジェンス(財務調査)を手掛けるコンサルタントとしての第一歩を踏み出すことができました。

入所前は業務内容を十分に理解していなかったこともあり、「監査法人での経験を基にすぐに結果を出せるだろう」と高をくくっていたのですが、全く戦力になりませんでした。最初の3か月間は自分の無力を嘆きましたが、「悩むより慣れろ」と先輩からアドバイスを頂き、公認会計士1年目のつもりでひた向きに仕事をしました。そんな私を見て先輩が親身になって指導してくださり、入所して1年が過ぎた頃にはある程度の仕事を一人でこなせるようになりました。そのあとは、自分が事務所の代表になったつもりで仕事に取り組むようにしたのですが、この時期に今の仕事の礎を築く事ができました。

そしてある日、とある社長さんと事業計画や会社の将来についてディスカッションしているときに「自分自身で経営を経験していないのに、説得力をもって経営の話ができるのか?」とふと疑問が沸き上がりました。自分の答えは「No」でした。「今ならまだ失敗できる。独立してみてもいいんじゃないか」、そんな思いが沸き上がってきました。実際に退職を決心するまでは半年ほどかかりましたが、一人の専門家として自分の名前で仕事をしたいという思いが強くなり、最後は妻の後押しもあって会計事務所を退職し独立しました。

独立。そしてこれから

独立前には具体的な仕事の見込みはありませんでしたが、独立直後にかつてのクライアントからお仕事を頂いたり、知人から仕事を紹介していただいたりして、何とか無事スタートを切る事が出来ました。また、独立して数か月すると、徐々に弁護士や社会保険労務士といった他士業の方々からお仕事をご紹介いただけるようになりました。

公認会計士は税理士資格も取得できるため、独立すると税務業務を担う事も多いですが、税金の申告業務は奥が深く、私の経験では不十分なため税理士の方と共同して行うが多いです。一方で、コンサルタントとして、税務面でもアドバイスを求められることも多いため、日々税務の勉強をしています。

独立することで、新しい仕事を継続して獲得しなければならないというプレッシャーは常にあり、時にはプライベートと仕事の境界線が分からなくなることもありますが、今は「独立という生き方」が自分にとっては心地よく、自分の成長を早めてくれると感じています。

仕事に対する最終意思決定者として行動することが、発言やアウトプットへの感度を高め、それが仕事のクオリティを高めてくれるのです。また、子育てに携わる時間を取れるようになり、プライベートの充実だけでなく、コミュニケーション能力も向上しています。

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最後に

冒頭にも書きましたが、私はごく普通の公認会計士として、監査法人で会計と監査の基礎を学び、これを土台として中堅会計事務所での事業再生やM&Aの経験を積み上げてきました。そして、独立することで「公認会計士としてのコンサルタント」というビジョンを描く事が出来ました。このように成長できたのは、監査法人でも中堅会計事務所でも、成長を助けて下さる先輩がいたこと、そして、日々楽しく仕事に携わり自分の成長を追い求める姿勢だけは崩さなかったこと、の2点が大きな要因だと考えています。そして独立後も充実した日々を送れているのは様々な方からご支援を頂けているからです。これらを踏まえ、公認会計士がキャリア形成するうえで必要なものは次の3つだと考えています。

第1に、毎日を楽しんでいるか
第2に、メンターがいるか(仕事面だけでなく人生面で尊敬できる人や相談できる人)
第3に、ネットワークがあるか(特に他士業)

上記は必ずしも独立を考えている方だけに当てはまるものではないと思っています。独立していても組織にいても、携わる問題が複雑化すれば他士業との協業が重要になります。また、いくつになっても自分自身を律する時にベンチマークにできるメンターは必要だと思います。そして何よりも、毎日を楽しんでいるか。プライベートの時間も、仕事をしている時間も楽しんでいるからこそ、クライアントの幸せのために心の底から頑張れる、私はそう考えています。

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