新人・若手の公認会計士が担うことの多い「実査」とは?
監査手続きのうち、実査について詳しく解説します。実査は、主に製造業の監査手続きでよく行われるものです。ただし、実際にどのような手続きをしているか等は、テキストのみではイメージしがたいかもしれません。これを踏まえ、1つの参考としてご覧ください。
マイナビ会計士編集部
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実査とは?
実査とは、会計監査を行う公認会計士が往査先の会社に赴き、現物が実際に存在するかどうかを確かめる監査手続のことです。その監査対象には、現金や受取手形、株券などの資産が含まれます。
実査は帳簿の通りに実在するかどうか実際に目で見て、数を数えて確かめるもっとも確実な方法です。監査論の観点からは、試算の実在性を確認するために行われます。
手続内容
実査は原則として、期末日直後に実施することが一般的です。なぜなら、監査対象の勘定科目がBS項目であることから、決算日時点の実在性を調べることがもっとも重要なため。なお、会計監査人が必要と認めた場合には、稀に監査クライアントの予告なしに実査を行うこともあります。
現金や預金証書、受取手形、有価証券等の換金性の高い流動資産については、可能な限り同時に実査するよう留意します。これは、時点が異なると流用や不正の恐れが高くなるためです。同時点に実施することで、意図的な不正を防ぐことが可能になります。
また、保管場所が複数の場合も、可能なかぎり同時に実査すべきといえるでしょう。監査にとっては負担になりますが、基本的かつ重要な勘定科目に関する手続きなので、緊張感をもって臨む必要があります。
具体的な手続きは、現金および現金等価物を実査することで、実査表に数量・金額・内容等をボールペンまたは万年筆によって記入する(または、入手した金種別在高表等と突合)ことがメインになります。
なお、実査においては注意すべき点があります。メモ書きや借用証等による仮払いが現金残高に含まれているときは、金銭出納帳と突合するとともにその内容についてクライアントの経理担当者に質問を行い、資産性の有無と会計処理の妥当性を確かめることが求められることを覚えておいてください。
次に、現金実査表と金銭出納帳を突合します。会社所有外の現金を預り保管している場合は、それらについても実査して管理簿と突合することが必要です。また、預り理由の合理性を、質問等によって確かめることも監査人として求められます。
経理担当とのコミュニケーション
ここで、現金の実査を例にとって詳しくご説明しましょう。現金に関する保管部署および保管担当者、補助元帳および記帳担当者に、口頭・文書でのコミュニケーションや確認が発生することが多くなります。
なお、実査に際しては会社担当者の立会を求め、現物返還後に実査対象物の受領書を入手することが必須です。監査法人では、実査を入所したばかりの若手会計士が担当することが多いかもしれません。しかし、新人だからといって監査クライアントに舐められないよう、毅然として対応する必要があります。
経理担当の方も、毎年監査の時期の対応として慣れている場合が多いでしょう。そのため、スムーズなコミュニケーションを心がければ問題なく終わります。今ではあまり見られませんが、株券が存在するには株券の実物を見ることで実在性の確認が可能です。複数枚の株券が存在する場合は、数と単価を乗じて評価額を計算し、間違いがないことを確認します。
実査が行われる業種
実査はすべての業種で行われます。現金はすべての会社において計上されている勘定科目です。また、その他に有価証券等の資産がある場合も、資産の実在性を確認するための監査手続きとして必須になります。
どのような業種を監査するにせよ、新人会計士が担当する監査手続きが実査です。なお、棚卸資産に対して行うのは実査ではなく、立ち合い(棚卸資産、すなわち在庫が実際に存在しているかを工場等に赴いて確認する)になりますので、間違えないようにすることが重要です。
会計士試験の知識の活かし方
会計士試験の知識では、監査論で学習した知識が活かせるでしょう。特に実査は複雑な会計処理より、ものが実際にあるかどうかをチェックするので、監査上の論点を意識しながら進めることが重要になります。そのため、会計士試験で習った監査論を中心に復習しておくと、実務でも何が監査上の論点で、なぜこの手続きをしなければいけないかがイメージしやすいでしょう。
監査調書への反映
監査調書への反映は、前期調書を見ながら進めていくことが多いでしょう。ただし、単純に監査調書のセルを埋めていくよりは、前期から大きな経営環境の変化が無かったか、重要な会計方針の変更が自分の担当している科目になかったかを意識しながら進めると、会計士としてより効果的な監査ができるはずです。
現金実査はシンプルな監査手続きになります。そのため、照合した結果を埋めていくことが重要です。ただし、監査調書はシニアやマネジャーがレビューをするので、スタッフ会計士の方はまず先輩に教えてもらいながら進めることになります。
まとめ
会計士の担う業務のうち、実査について詳しく解説しました。実査は会計士試験に合格して間もない新人、ないしは若手の会計士が担当することが多いでしょう。監査論で学習する資産の実在性、十分かつ適切な監査証拠といった基本的な論点を意識しながら進めることができるので、会計士にとっては学びが大きい業務と言えます。
なお、実査はメーカーのような事業会社のみならず、金融機関の監査でも行われます。業種にかかわらず行われる監査手続きですし、BSの中でも質的に重要性が高い勘定項目の監査手続きになります。ここで取り上げた内容を参考に、実際についてはあらかじめ理解しておくと良いでしょう。
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