強まる会計基準の国際化の流れ。IFRS15号の導入による影響は?

日本でも国際会計基準(IFRS)の存在感が確実に強まっている現在。
グローバルにビジネスを展開する大企業を中心に、IFRSを導入する国内企業は右肩上がりで増えています。
そこで今回は、「IFRSの現在」に着目します。

監修
マイナビ会計士編集部
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IFRS導入企業が200社に迫る
金融庁が昨年発表した資料「国際会計基準をめぐる最近の状況」によると、日本におけるIFRS導入企業は年々、確実に増加しています。
具体的に見ていくと、国内で導入がスタートした2010年は3社でしたが、2011年は4社、2012年は10社、2013年は25社、2014年は54社、2015年は99社、2016年は133社になっています。
今年度は導入企業が200社に迫る勢いで、これらの時価総額を合計すると、じつに東京証券取引所の約3割に及ぶそうです。
導入企業は、住友商事、花王、日本電気、日立製作所、日本たばこ産業、伊藤忠商事、武田薬品工業など、日本の大企業群で、さらに現在は、業績好調のソニーをはじめ、トヨタ自動車などもIFRSの導入検討を進めているといわれています。
そもそも、日本国内企業が採用できる会計基準は、①日本基準、②米国基準、③JMIS、そして④IFRSの4つがあります。現時点で最も多いのは、①日本基準ですが、説明したとおり、④IFRSが確実に存在感を増している状況です。
大企業を中心にIFRSの導入が増えているおもな理由は、グローバルにビジネスを展開するうえでメリットが多々あるからでしょう。
各国に展開する複数の子会社で会計基準が異なっていると、会計処理が複雑になるうえ、正確な評価が難しくなります。
そのため、グローバルビジネスを展開する企業は、もはや“世界基準”となりつつあるIFRSに「変更せざるをえない」というのが正直なところでしょう。
今後は国内でもさらに導入企業が増えていくことが予想されています。
<ココまでのまとめ>
・国内のIFRS導入企業は右肩上がりで伸びていて、今年度は200社に迫る勢い。
・今後もグローバルビジネスを展開する大企業を中心に導入が増えていくことが予想される。
IFRS15号とは?
IFRSは2018年度から新たな基準「IFRS15号」が適用になりました。
IFRS15号は、収益を認識する取引の出発点を「契約」としていて、契約上のいずれかの当事者が義務を履行している場合は、企業の財またはサービスを提供する義務の履行と顧客の支払いの関係に応じて、財政状態計算書上、「契約資産」または「契約負債」として表示することが求められています。
さらに、対価に対する無条件の権利は「債権」として区分表示する必要があります。
契約資産とは、企業が顧客に移転した財またはサービスと交換に受け取る対価に対する企業の権利のことをさし、契約負債は、顧客に財またはサービスを移転する企業の義務のうち、企業が顧客から対価を受け取っているものです。
また、債権は、対価に対する企業の権利のうち、無条件のものと定義されています。
つまり、IFRS15号では売上高を認識するタイミングまたは金額が変わる場合があるということで、これまでは契約ごとに売上を計上していたものが、サービスを提供した時期などによって計上する必要が出てくる可能性があります。
このIFRS15号はIFRS導入企業だけにあてはまるものではなく、日本基準への導入も予定されているそうです。
国内の企業会計基準委員会(ASBJ)は2021年4月からIFRS15号を意識した“新収益基準”を適用し、2022年3月期からは強制適用になるという見込みです。
<ココまでのまとめ>
・2018年度から新たな基準「IFRS15号」が適用される。
・日本基準への導入も予定されていて、2021年に新収益基準が適用される見込み。
IFRS15号による国内への影響は?
IFRS15号が日本基準にも適用された場合、モノを販売する業界(小売業や製薬業など)に大きな影響が出るといわれています。
たとえば、百貨店の場合、これまでは「販売額=売上高」として会計処理することが一般的でしたが、IFRS15号が適用された場合、「販売額-仕入れ額=手数料」の手数料を売上高として計上することになります。
こうなっても「利益」は変わりませんが、「売上高」は大きく減少すると考えられます。
IFRSによって対応を迫られることになる日本企業ですが、IFRSが“世界基準”となりつつあるいま、それは仕方のないことでしょう。
金融庁の資料「国際会計基準をめぐる最近の状況」を見ると、世界149法域のうち、「全てまたは大部分の主要企業に対してIFRSを強制適用」した法域は119にのぼり、これはじつに全体の約8割にのぼります。
日本政府が発表した「日本再興戦略2016」においても、
・IFRSの任意適用企業の拡大促進
関係機関等と連携して、IFRSに移行した企業の経験を共有する機会を設けるとともに、IFRSに係る解釈について発信・周知することにより、IFRS適用企業やIFRSへの移行を検討している企業等の実務の円滑化を図り、IFRSの任意適用企業の拡大を促進する。
・IFRSに関する国際的な意見発信の強化
のれんの会計処理やリサイクリング(その他の包括利益に計上した項目を、純利益に振り替える会計処理)等に関して、我が国の考える、あるべきIFRSについての国際的な意見発信を更に強力に行う。
との記述があり、国全体でIFRSの導入拡大を促進していることがわかります。
今後もIFRSの動向に注目する必要があります。
<ココまでのまとめ>
・IFRS15号が日本基準にも適用された場合、小売業や製薬業などは大きな影響を受ける可能性がある。
・世界の約8割の法域で、IFRSの導入が進んでいる状況がある。
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