仮想通貨の会計ルールが決定――ASBJ
日に日に存在感を増す「仮想通貨」。
会計士にとっても「どのように会計を行うか」など、問題意識をもって捉えている方も多いと思います。
そんななか、先日はASBJ(企業会計基準委員会)が仮想通貨の会計ルールを正式決定しました。どのような内容なのでしょうか?
マイナビ会計士編集部
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仮想通貨の会計ルールが決まるまで
新たな通貨として大きな注目を集めている仮想通貨ですが、その新しさゆえに、“危うさ”も伴っているというのが現状です。
最近は、仮想通貨交換業者の「コインチェック」から仮想通貨NEM(ネム)が約580億円分流出したことがニュースになりました。どのように流出したかを追跡する報道もされていましたが、NEMの国際団体「NEM財団」は3月20日にNEMの追跡を停止したと発表しました。
その理由は、すでに350億円相当がほかの仮想通貨に交換されていて、これ以上の追跡効果は高くないからということでした。
この事件を受け、金融庁は仮想通貨取引所への立ち入り検査を実施し、チェックの目を強化。その流れを受け、新たに仮想通貨取引所として登録を考えていた数社は登録申請を取り下げたといわれています。また、すでにある取引所に対しても、金融庁は業務停止や業務改善命令の指示を出しています。
また、仮想通貨を利用する側からも「どのように会計処理をして、税の申告をしてよいかわからない」という声が多数あがっていました。ルールの整備が追いつく前に大変な盛り上がりとなった結果、数々の混乱が生まれてしまったといえるでしょう。
ただ、新しく生まれるものに混乱はつきものです。ルールが明確に決まり、チェック体制が強化されれば、混乱は減り、さらに世の中に定着していく可能性は十分にあります。
そして、先月にはASBJが「企業における仮想通貨の会計ルールを決定した」ことがニュースになりました。それがどのようなものなのか見ていきましょう。
<ココまでのまとめ>
・仮想通貨は注目度が高いが、コインチェック事件など、混乱も伴っている。
・利用する側も会計処理をどのようにするかなど、わからないことが多々あった。
「仮想通貨」会計ルールの内容とは?
ASBJは3月9日に企業が仮想通貨を利用する際のルールを正式にまとめています。
平成28年に公布された「情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための銀行法等の一部を改正する法律」(平成28年法律第62号)により、「資金決済に関する法律」(平成21年法律第59号。以下「資金決済法」という)が改正され、仮想通貨が定義されたうえで、仮想通貨交換業者に対して登録制が導入されました。
これを受けて、ASBJでは、仮想通貨の会計処理及び開示に関する当面の取扱いを明らかにすることを目的として審議を続けてきました。
そして公表されたのが、実務対応報告第38号「資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱い」というルール。企業には2019年3月期から適用されます。
これによると、
・仮想通貨は原則として最も頻繁に利用している交換所の価格で貸借対照表(BS)に計上する。企業は期末に改めて時価で評価する。差額は損益とする。
・取引の少ない仮想通貨は取得時価格でBSに計上する。期末に換金性の有無などから処分見込み価格を改めて算出する。
・取得原価を下回る場合は損失計上する。仮想通貨の取引記録に協力して報酬を受け取る採掘も対象となる。
といったルールが決められています。
また、仮想通貨取引を行う個人に対しては、国税庁が2017年12月に「仮想通貨に関する所得の計算方法等について(情報)」という資料を発表し、「仮想通貨の取引で得た利益は雑所得に分類され、利益が20万円を超える場合は確定申告の必要がある」ということを明確にしています。
今後も仮想通貨のルールは改正が繰り返される可能性があります。会計士は常に状況をチェックして、対応する体制を整える必要性があると言えるでしょう。
<ココまでのまとめ>
・企業に2019年3月期から適用される仮想通貨の会計ルールが決定した。
・個人に対しても国税庁は2017年12月に資料を発表している。
仮想通貨の「未来」
仮想通貨は今後どのようになっていくのでしょうか?
その未来を予測して、今回のコラムを終えたいと思います。
「仮想通貨の未来」に関しては、多くの人がさまざまな展望が示しています。明るいものもあれば、暗いものもあるという状況ですが、まずは前者から紹介しましょう。
「デジタル先進国」と呼ばれる欧州の小さな国エストニアでは、政府主導で「エストコイン(Estcoins)」と呼ばれる仮想通貨を発行する計画があるというニュースが流れました。エストニアのほかにも、トルコや英国領のジブラルタル、東欧のベラルーシは仮想通貨に重点を置いて政策を進めているといわれています。
日本国内に目を向けても、最近は「地域仮想通貨」なるものが出てきています。これは文字どおり、地域で使える仮想通貨のことで、地域活性化に役立つと注目を集めているようです。
このような動きを見ると、仮想通貨は今後もますます広く普及、浸透していき、「当たり前にある通貨」として使われる日が来るかもしれません。
ただ、ネガティブな展望もあります。
それは冒頭で紹介したコインチェック事件のように、リスク対応を高めていかなければ金融安定の危機をもたらすというもの。金融安定理事会(FSB)の議長は「サイバースペースにおける強靱さや市場の統合性、運営上の実質的な改善がないまま、仮想通貨の利用と相互の連結が拡大した場合、信頼感への影響を通じて金融安定のリスクをもたらす」と警鐘を鳴らしています。
仮想通貨の未来、今後も注目して見ていきたいと思います。
<ココまでのまとめ>
・エストニアでは国家主導で仮想通貨をつくり、普及される計画もあるという。
・ただ、リスク対応をしっかりしていかないと、金融不安をもたらす一因になりうる。
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