公認会計士が20代で転職を考える時のポイント 給与情報や需要 を解説
公認会計士が20代で転職する際は、キャリアの幅を広げやすく、チャレンジしやすいメリットがあります。
一方で、経験が短すぎると転職の難易度が高くなったり、環境の変化によって働きづらくなったりする側面があるのも事実です。
本記事では、公認会計士の資格をもつ20代の若手会計士が転職する際のメリット・デメリット、人気の業種や就業先を紹介します。
また、転職をおすすめする年齢や20代会計士の需要などの気になる情報も解説しますので、ぜひ最後までご一読ください。
公認会計士は20代が転職のタイミング?実際のデータを確認
「まだ20代だから転職を焦る必要はない」
「公認会計士になったばかりだから今の監査法人で辛抱強くキャリアを積もう」
というように、20代の公認会計士は転職とは無関係だと考えている人は少なくありません。
しかし、実態は異なっており、実は多くの公認会計士が20代~30代のうちに
自分なりのキャリア形成を目指して転職しているのが実情です。
転職時の監査法人での実務経験年数 | 割合 |
---|---|
3年以下 | 13.83% |
5年以下 | 28.72% |
10年以下 | 35.11% |
11年以上 | 22.34% |
転職時の年齢 | 割合 |
---|---|
30歳以下 | 37.04% |
35歳以下 | 35.45% |
40歳以下 | 15.87% |
41歳以上 | 11.64% |
アンケート調査の結果をみると、監査法人から転職をした公認会計士の約1/3が20代だということが分かります。つまり、20代の公認会計士でも転職活動をスタートすることは不自然なことではありませんし、転職市場でも充分に受け入れ体制が整っているということです。
したがって、現在の職場環境・仕事内容に不満があったり、進むべきキャリアプランが明確化したりする場合には、20代でも積極的に転職活動を開始するべきだと言えるでしょう。
20代前半と後半で異なる公認会計士の給与・年収
転職を考えるにあたって大きなポイントになるのが給与・年収です。
「自分が同年代の公認会計士よりも稼いでいるのか」について気になる人は少なくないでしょう。
そこで、20代前半・20代後半に分けて、公認会計士の給与・年収について見ていきましょう。
(なお、公認会計士格取得時期によって収入面に違いが生じる点はご注意ください)
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公認会計士として働く
20代前半の給与・年収平均年収500万円
20代前半は、監査法人に入所して間もない時期です。
先輩公認会計士やパートナーの指示を仰ぎながら実務訓練を積む時期であるため、平均給与・年収は低くなっています。
平均的な年収レンジは約500万円です。20代前半の平均年収 約479万円 20代前半の男性公認会計士の平均年収 約504万円 20代前半の女性公認会計士の平均年収 約332万円 -
公認会計士として働く
20代後半の給与・年収一般的な
年収レンジ年収600~900万円
20代後半の公認会計士は、監査業務などについてキャリアを積んで数年が経過した段階です。
ある程度責任をもったり、経験の浅い公認会計士を指導したりする機会も増えるため、20代前半に比べると平均年収は高くなります。
平均的な年収レンジは約600万円~900万円程度です。20代後半の平均年収 約733万円 20代後半の男性公認会計士の平均年収 約757万円 20代後半の女性公認会計士の平均年収 約580万円
公認会計士が20代で転職を考える理由
公認会計士としてのキャリアを開始して、まだ数年しか経過していない段階で
転職を検討することに抵抗感を抱く人も少なくはないでしょう。
ただ、キャリアは自分自身が主導して切り拓くものなので、
「根拠無く今の職場に居続ける必要はない」ということは覚えておくべきです。
そこで、ほかの20代の公認会計士がどのような動機・理由で転職を検討するのかを参考に、
自分自身が転職を検討するべきか否かを判断してみましょう。
将来独立するためにスキルを身に付けたい
監査法人の業務はチーム制が基本で、全般的な業務スキルを積むには不向きな環境です。
つまり、将来的に独立開業を視野に入れている人にとっては、監査法人での勤務を継続することはキャリア形成の妨げになる可能性が高いということです。
たとえば、税理士法人や会計事務所に転職をすれば、独立開業時に必要な税務・相談業務などの経験を積めますし、小規模事務所だからこそ経営フローを身近に感じることもできるでしょう。
したがって、独立開業を想定しているのなら、できるだけ早いタイミングで監査法人から転職をして、独立開業に役立つスキル・ノウハウを積める環境に身をおくべきだと考えられます。
税理士法人や会計事務所への転職をお考えの方はぜひ一度ご相談ください。
年収アップのために条件が良い職場を探す
「現在の年収に不満がある」「今以上に高額な収入を得たい」など、年収面を理由に転職を考える公認会計士も多いです。
また、比較的高い年収を得ているとしても、あまりに激務で時間単価が低いような場合にも、転職が選択肢に入ってくるでしょう。
さらに、同じ職場の先輩の様子を見たときに、昇進・昇給を期待できない状況なら、数年後を見据えて今の段階で転職を検討するのも正しい考え方です。
組織によって給与体系が異なるので一概には言えませんが、一般的には次のような職場が高い年収を設定しています。
- BIG4などの大規模監査法人
- 投資銀行
- ファンド
ただし、高い年収が約束される職場は、仕事内容がハードであったり、高い専門性を期待されたりするので、相応の努力が必要です。転職後に後悔しないためにも、転職前に職場の雰囲気・業務の流れなどについて精査しておきましょう。
マイナビ会計士では、ご希望に沿った求人のご紹介だけではなく、日程調整や条件交渉なども全力でサポートしております。転職を強要する事は一切ありませんので、マイナビ会計士にご相談ください。
今の年収が適正がどうか気になる方は「年収診断」をお試しください。
コンサルティングスキルを身に付けるために職場を変えたい
近年需要が高まっているコンサルティングファームへの転職を希望する公認会計士も多いです。
コンサルティングファームでは、監査法人よりもクライアントに寄り添ってサービスを提供できます。達成感・やりがいを感じやすい仕事環境であり、また、高い専門性を身に付けられることから、監査法人からコンサルファームへの転職は王道的な流れになっていると言えるでしょう。
なお、戦略系コンサル・会計コンサル・財務コンサル・事業再生系コンサルなど、コンサルティングファームによって特化したサービス内容が異なるため、転職活動時には将来的なキャリア像を具体化してそれに資するファームを選ぶのがおすすめです。
コンサルティングファームへの転職をお考えの方は、マイナビ会計士にご相談ください。
公認会計士が20代で転職するときの人気の業種・就業先
公認会計士が20代で転職する場合には、別の監査法人以外にも次のような転職先が選択肢に挙がります。
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コンサルティングファーム
上昇志向が強い人やクライアントニーズ実現に貢献したい人におすすめなのがコンサルティングファームです。
近年コンサルティングファームへの需要が高まりを見せているため、多くのファームが急ピッチで人材確保に動き出しています。
そのため、人材確保優先の企業なら転職難易度も低いですし、20代の若手公認会計士ならポテンシャル採用も期待できるでしょう。
たとえば、デロイト・EY・PwC・KPMGのBIG4では、M&Aアドバイザリー業務に特化したFAS部隊を組織しています。財務DD業務をはじめとするM&A関連の専門業務を経験できるので、ご興味の方はぜひ積極的にチャレンジしてください。
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投資銀行
投資銀行とは、大口顧客の証券取引業務・資金調達業務・M&Aサポートサービスなどを展開する金融機関のことです。
監査業務スキルを活かせること・高い年収が約束されることから、若手公認会計士に人気の転職先となっています。
ただし、業務内容がきわめて高度であること・激務であることから、意欲・体力・素質すべてを備えた人でなければ採用に至らない可能性が高いです。
投資銀行での経験をステップにしてさらにキャリアアップを目指す上昇志向の強い人におすすめの転職先と言えるでしょう。
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スタートアップや
ベンチャーのCFO最近では、スタートアップ・ベンチャーのCFO(chief financial officer)として公認会計士が迎え入れられるケースが増えています。経理・財務だけではなく、企業価値向上を目指した抜本的な財務戦略・経営戦略を構築することが期待されている職業です。
成長途上の企業に所属するため安定性には欠けますが、企業を成長させるという使命感を得られたり、経営ノウハウ全般に触れられたりするので、先駆的な仕事に興味がある人におすすめです。
また、ストックオプション付与によって将来的な年収大幅アップも期待できるので、夢のあるキャリアと言えるでしょう。
公認会計士が20代で転職するメリット
「20代の段階で転職するのは焦り過ぎではないか」と考える公認会計士も少なくはないでしょう。
確かに、20代公認会計士が転職するには一定のデメリットが存在するのは事実ですが、
20代公認会計士の転職だからこそ次の3つのメリットが得られる点を見逃すべきではありません。
キャリアの幅を広げやすい
20代の若い段階で転職をすれば、公認会計士としてのキャリア幅を広げやすいというメリットが得られます。
その理由は次の3点です。
- 若くて吸収力のある段階で非監査業務に触れた方が成長スピードを期待できる
- 若い段階の転職だからこそ会計監査以外の選択肢にチャレンジしやすい
- 30代以降になるとライフイベントの増加などによって冒険的な転職に踏み出しにくい
もちろん、生涯監査業務だけに集中して監査法人から出る予定がないのなら、20代の段階で焦って転職活動をする必要はありません。
ただ、「監査以外の業務にもチャレンジしたい」「海外赴任など、今しか出来ないことを経験したい」などの希望を抱いているのなら、20代の段階で監査法人を出た方がやりやすいのは間違いないでしょう。
ポテンシャル採用が期待できる
20代の公認会計士なら「ポテンシャル採用」が期待できるので、希望する組織に転職しやすいというメリットが得られます。
そもそも、20代の公認会計士は会計監査中心の基本業務が定着した段階でしかありませんし、転職市場側もそのような状態であることを理解してくれています。つまり、20代の公認会計士はスキル・経験が不十分でも、将来的な成長可能性を見越して採用される可能性が高いということです。
これに対して、30代以上の公認会計士の転職活動では、実務経験・具体的なスキルなどを有する「即戦力」が要求されるため、ポテンシャル採用は期待できません。
したがって、希望するキャリアプランを着実に歩みたいのなら、20代公認会計士の特権とも言うべき「ポテンシャル採用」を狙って、早期に転職活動をスタートするべきだと言えるでしょう。
チャレンジしやすい
若い時期だからこそ失敗を恐れずにチャレンジしやすいものです。
たとえば、30代以上の公認会計士の場合、私生活・仕事などすべての面において何かしらの責任を負う場面が増えてきます。自分の選択が他者にも影響するとなると、保守的な転職活動しかできなくなるのは当然でしょう。
これに対して、20代の公認会計士は、まだスキル・経験も未熟ですし、背負うものもほとんどない状況です。つまり、失敗することが許されているので、少し背伸びをしたような環境にでも身を投じやすいということです。
年齢を重ねるにつれて冒険はしにくくなります。アグレッシブなキャリア形成を希望するのなら、20代の段階で積極的に挑戦していくことをおすすめします。
公認会計士が20代で転職するデメリット
20代という若い段階で転職をした方が公認会計士は色々なチャレンジをしやすいですが、
だからと言って明確なビジョンなく転職活動に踏み出すのは危険です。
なぜなら、公認会計士が20代で転職することには、次の3つのデメリットがあるからです。
経験が短すぎると難易度が高くなる可能性がある
現在の職場の勤務歴が短すぎると、転職難易度が高くなるリスクがあります。
なぜなら、「嫌なことがあるとすぐに辞める人材の可能性がある」と評価されかねないからです。
たとえば、前職での勤務歴が1年以内の場合には、転職活動時に「正当な理由があること」をはっきりと伝えるようにしましょう(ただし「会社との相性が合わなかった」「職場の人間関係でトラブルが発生した」などの理由は誤解を招くおそれがあるので厳禁です)。
また、早めのタイミングで転職する際には、以下の点をアピールすると優位になります。
- TOEICの高得点
- ファイナンス関連のその他の資格(証券アナリスト、CFAなど)
一般企業への転職は年収が下がりやすい
転職先として一般事業会社を選ぶ場合には、年収が下がる可能性が高いので注意が必要です。
なぜなら、一般企業と比較すると監査法人の年収は高水準に設定されていることが多いからです。
特に、20代後半の公認会計士の場合、平均年収は600万円~900万円にもおよびます。一般事業会社に入社していきなりこの水準の給与を得られる可能性は限りなく低いでしょう。
どれだけやりがいを得られても、年収ギャップに抵抗感を抱くと転職を後悔することになりかねません。
したがって、転職活動をする際には、転職後の給与での生活水準・昇給イメージを明確にしたうえで、転職先を選びましょう。
環境の違いで息苦しさを感じるケースがある
監査法人・一般事業会社・コンサルティングファームなど、どの組織にもそれぞれカラー・風土があります。
そのため、転職後の職場環境の雰囲気が肌に合わなかった場合には、息苦しさから「転職しなければ良かった…」と後悔することにもなりかねません。特に、社会経験の浅い20代の段階は、相性のよくない職場環境への対応力が少ないと考えられるので、職場選びは慎重であるべきでしょう。
したがって、転職活動を進める際には、年収・福利厚生条件・業務内容などの客観的な雇用条件だけではなく、職場の雰囲気・働いている人たちのコミュニケーションの様子・具体的な仕事の進め方などについても調査をしたうえで、相性の良い転職希望先を見つけるべきだと考えられます。
マイナビ会計士で紹介する案件では、採用面接時以外でも会社訪問などの機会を取れる場合があります。転職後に後悔するリスクをできるだけ避けたい人は、ぜひ転職エージェントサービスを積極的にご活用ください。
公認会計士が20代で転職するときの豆知識
最後に、公認会計士が20代で転職するときに押さえるべき豆知識を紹介します。
20代会計士に需要はある?
20代の若手公認会計士は転職市場で非常に高い市場価値があります。
人材不足の課題を抱える監査法人だけではなく、M&A案件やコーポレートファイナンス・コンサルティング業務を扱うファームなどからも重宝されるでしょう。
自分が希望するキャリアを明確にしたうえで、ファームが求める人材像とマッチする企業を選ぶのがおすすめです。
転職するなら何歳頃が良い?
20代の公認会計士が転職を検討するのなら、26歳~29歳が適したタイミングです。
なぜなら、監査法人である程度の業務経験を積んでいることが転職市場でのアピールにつながるからです。
もちろん、20代前半の若い段階でも、積極的に非監査業務にチャレンジする姿勢を見せることは間違いではありません。
どの時期に、どのような理由で転職を決めるかは人それぞれです。ご自身にとって適切だと判断できるタイミングで転職活動に踏み出しましょう。
また、自分だけでは転職時期を決められないという悩みを抱えているのなら、ぜひマイナビ会計士までお問い合わせください。会計業界専門のキャリアアドバイザーが転職の適否・転職選択肢などあらゆる不安に丁寧にお答えさせていただきます。
20代会計士の転職体験談は?
最後に、20代から実際に転職した方の声を紹介しますので、
ご自身の目指すキャリアや転職に向けた考えなどと照らし合わせながら、ぜひ参考にしてください。
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20代公認会計士の転職体験談①
監査法人からFASファームへ転職。M&A業務未経験からのチャレンジでしたが、転職エージェント主催の1日特別選考会にアプライし、無事に内定を獲得できました。現在はFAS勤務を通じて専門スキルを磨いています。
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20代公認会計士の転職体験談②
FASから投資銀行へ転職。FAS在籍時でもDDやFAなどのM&A業務経験を積むことはできましたが、投資銀行でのM&Aアドバイザリーに関心をもったために転職を決意しました。転職準備として力を入れたのが英語学習です。英語力とキャリアアップへの熱意をアピールしたことで、無事に内定を獲得できました。
まとめ
20代の会計士は、早めに会計士試験に合格しているというアドバンテージを活かして、 様々なキャリアを目指せます。
- ● 将来独立するためにスキルを身に付けたい
- ● 年収アップのために条件が良い職場を探す
- ● コンサルティングスキルを身に付けるために職場を変えたい
と考えている方は、体力と気力のある方は、よりチャレンジングな職種で活躍するのも可能でしょう。
マイナビ会計士では、業界専門のキャリアアドバイザーが最適なキャリアプランをご提案します。ご自宅からでもお電話でキャリア相談できますので、お気軽にお声かけください。
マイナビ会計士編集部
マイナビ会計士は、公認会計士・試験合格者・USCPAの方の転職サポートを行なう転職エージェント。業界専門のキャリアアドバイザーが最適なキャリアプランをご提案いたします。Webサイト・SNSでは、公認会計士・公認会計士試験合格者・USCPAの転職に役立つ記情報を発信しています。