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短答試験企業法
目次
公認会計士試験では、勉強した方が良い派と時間をかけても意味が無い派に二分される企業法。理論問題しか出題されないためとっつきにくく、どんな勉強の進め方をすればよいか悩む受験生も多いと思います。
そこで、本記事では「企業法ってどんな試験?」「企業法ってどんな風に準備したらいいの?」などの疑問について、初学者にもわかりやすく解説したいと思います。公認会計士試験を受験しようと考えていて、短答式試験や論文式試験の科目について詳しく知りたいという方は、是非本記事をご一読ください。
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一般的に「企業法」という単体の法律があるわけではなく、企業の会計実務に密接にかかわっている複数の法律を指す言葉です。具体的には、「会社法」「商法(一定の部分を除く)」「金融商品取引法の一部」「監査を受けるべきとされている組合そのほかの組織に関する法」が含まれます。
例えば、会計監査の法定監査には会社法監査と金融商品取引法監査があります。どちらの監査も「法定」ですので、その必要性、目的、方法等が法律によって定められているのです。
また、会計監査以外でも、企業法の内容は企業活動の基本的なルールですので、実務上非常に重要な知識となります。例えば会社法では、株式会社の組織や株主総会等の機関設計、取締役会が決定できる事項等について定められていて、その中には会計監査人の権限等の会計監査に関わる事項や、企業の資金調達やM&Aにおいて会社がどのような機関で意思決定するか等について定められています。このような知識を学ぶ科目が「企業法」です。
公認会計士試験では、短答式と論文式のどちらにも、必須科目として企業法が含まれます。本記事では、企業法について、短答式と論部式のどちらについても詳しく解説していきます。
公認会計士試験は、年二回開催される短答式試験と、年一回開催される論文式試験で構成されています。短答式試験は財務会計論、管理会計論、監査論、企業法の4科目からなり、論文式試験の科目は会計学・監査論・企業法・租税法・選択科目の5科目からなります。
企業法は短答式と論文式の両方に出題される科目です。財務会計論や管理会計論のような計算問題は出題されず、理論問題のみです。短答式試験の企業法は他の科目と比較して、安定して得点を取れると言われています。というのも、企業法は難問、奇問が出題されることが比較的少なく、典型的な問題が出題されることが多いからです。逆に言うと、短答式試験の企業法で失敗すると他の科目での取返しが厳しいことになりますので、そのつもりで勉強してください。論文式試験においても、典型論点であれば模範解答に近い精度で回答を仕上げることが望まれますので、入念な論述対策が必要です。
企業法は試験内容のボリュームが多い科目です。会社法だけでも1,000条を超える条文数があるうえ、金商法、商法の一部が範囲に含まれています。とはいえ、会計や監査に関する法律は限られていますので、試験に出やすい分野は限られています。学習のポイントとしては、試験に出やすい分野を絞ること、絞った分野をしっかり暗記することになります。
企業法の出題範囲としては、公認会計士・監査審査会から示される「出題範囲の要旨」を参考にすると良いでしょう。例えば、令和3年の企業法の出題範囲は以下の通りです。
「会社法に関しては、会社法の全体を出題範囲とする。」「商法に関しては、商法第1編(総則)及び第2編(商行為)を出題範囲とする。」「金融商品取引法については、企業内容等の開示に関する金融商品取引法第2章を中心として出題する。」
会社法は全体が出題範囲となっていますが、商法については商法第1編(総則)と第2編(商行為)が、金融商品取引法については企業内容等の開示に関する金融商品取引法第2章が中心的な出題範囲となっています。
企業法の試験は、短答式試験は試験時間1時間で100点満点、論文式試験では試験時間は2時間で100点満点となっています。どちらの試験も計算問題は無く、理論問題のみが出題されます。配点は、短答式試験では5点の問題が20問、論文式試験では50点ぐらいの大問が2問あることが多かったようです。論文式試験の配点は年度によって変わる可能性がありますが、大問1つをまるまる外して不正解(配点ゼロに近いなど)になると足切りのリスクが高まりますので、その点は留意してください。
企業法の短答式試験では、短答式試験の問題は、会社法、商法、金融商品取引法についての正誤問題のみが出題されます。例えば「〇〇とは、✕✕ということである」という4つの記述に対して正しい(間違っている)記述の組み合わせが6つ選択肢として提示されるので、その中から正解を選ぶ問題です。
論文式試験では、問題文でシチュエーションが設定され、そのシチュエーションにおいて「①✕✕の効力、②〇〇の適用可否について論じなさい。」といった問題が出題されます。
短答式試験のように答えだけ知っていてもダメで、「なぜそうなるか」を、論点や理論を用いて説明できなければなりません。試験本番では、法令基準集が配布され、法令等を調べることが可能ですが、試験時間は問題量に比して短いため、時間をかけて調べることは出来ず、確認のために基準集を活用できるにとどまります。
公認会計士試験の短答式試験・論文式試験では、4科目ないし5科目の平均得点が合格基準点を上回っているかどうかで合否が決まります。そのため、企業法1科目の合格率を計算することは出来ません。
ただし、短答式試験については、試験後、公認会計士・監査審査会のホームページ上に各科目の受験者の平均点が掲載されるため、他の科目と比較した難易度を測ることが可能です。
平均得点比率 | 2021年(※) | 2020年Ⅱ | 2020年Ⅰ | 2019年Ⅱ | 2019年Ⅰ |
---|---|---|---|---|---|
総合 | 47.3% | 46.1% | 38.9% | 42.6% | 44.2% |
財務会計論 | 47.0% | 43.7% | 33.8% | 43.0% | 38.1% |
企業法 | 40.9% | 46.0% | 34.5% | 37.4% | 44.1% |
企業法 | 52.3% | 52.2% | 48.2% | 42.9% | 54.3% |
企業法 | 47.8% | 43.5% | 44.2% | 46.4% | 46.9% |
合格基準点 | 62% | 64% | 57% | 63% | 63% |
なお、短答式と論文式のいずれでも、5科目の平均点が合格基準点を上回っていても1科目の得点率が40%を下回った場合には不合格となりますので注意が必要です。
上記の表から、企業法の平均得点は、過去5回の短答式試験では4科目中の平均前後で推移しています。そのため、短答式の四科目の中では難易度の中程度と言えます。とはいえ、しっかり勉強をしておけば高得点を取ることも可能です。確実に合格するためには、しっかりと得点源にしなくてはならない科目でもあります。
下記にて詳しく解説しますが、企業法の合格には短答式と論文式あわせて700時間程度の学習時間が必要と言われています。そのため、企業法合格のためにはまずは、短答式・論文式試験の学習期間中に一定の学習時間を確保することが必要です。
企業法では、短答式でも論文式でも理論問題のみが出題されます。勉強内容のボリュームは多く、漠然と教科書を眺めるだけでは暗記が追いつきませんし、問題が解けるようにもなりません。とにかく重要な論点・範囲を峻別することと、問題をこなしながら暗記していくことが重要と言われています。市販の企業法の理論問題集をやっても良いですし、予備校が出している模試や答練を使ってもかまいません。
短答式の勉強をする際には、論文式も見据えた学習を行うとより効率が良いでしょう。短答式では単純に企業法に関する結論がマルバツで問われますが、論文式ではその結論の背景にある理論や条文の趣旨、条文を実際のケースに当てはめて結論を導く論述力について問われます。そのため、短答式の問題の答え合わせをする際に、問題の解説をできるだけ覚えながら進めると良いでしょう。
合格には、短答式の学習時間として400時間程度、論文式の学習時間として300時間程度が必要と言われています。これは全科目の中でも財務会計論に次ぐ長時間です。
学習期間としてみると、公認会計士試験に合格するための必要学習時間は、全科目合計で3000時間から4000時間と言われています。2年間の学習で試験合格を目指す場合、一日あたり4時間~5時間程度の勉強が必要になります。このことから、企業法単体の学習期間は、2年間のうちに短答式と論文式を合わせて4か月から5か月間程度の学習を要します。
もちろん上記の勉強時間はあくまでも目安で、より短時間で済んだ・長時間かかったという人もいます。さらに、本番の試験問題との相性で点数が上下する可能性もありますので、時間のみにとらわれるのではなくしっかりした理解を積み重ねることが重要と考えられます。
前述の通り、企業法では短答式試験でも論文式試験でも理論問題のみが出題されます。そのため、テキストを中心に各論点を理解し、場合に応じてボリュームの多い法律の条文を読み込んでいくことが必要であり、各条文の立法趣旨等を踏まえて知識として定着させることが有効です。
短答式試験では、理論問題集や予備校の練習問題等を繰り返し解く勉強方法がおすすめです。単純にマルバツ問題によって知識を増やすことが出来ますし、抽象的理論がどのように問題に落とし込まれているかを知ることで、教科書や基準等の学び方もわかるようになるからです。予備校の講義を受けている方は、講義の進捗と合わせてその範囲の短答問題を解いていくと学習効果が高まります。
論文式試験でも同様に、理論問題集や予備校の練習問題等を解く方法がおすすめです。自分で書いてみることで暗記の効率も良くなり、論点を絞った学習で実際の答練や本試験でも試験委員ウケの良い答案を作成することにもつながります。
企業法の試験本番の短答式試験では、普通に理論問題を解いていくだけでむしろ時間が余ることが考えられます。回答が早く終わった場合には見直しをして、勘違いが無いかや感が得たらわかる問題が無いかなどを確認するようにしましょう。短答式試験の企業法では可能な限り高得点を目指すことが最重要です(できる人は90-100点満点で合格していきます)
論文式試験では、問題がどの論点について聞いているかを、落ち着いて考えましょう。論点を全て暗記したとしても、使う論点を間違えたら点数は入りません。学習の際には、法律の要件を軽視せず、頭にフローチャートを描きながら理論を構築していってください。
なお、企業法の試験会場では、会計基準等がまとめられた「法令基準集」が配布されます。ただし、試験中に時間をかけて法令中の文言を調べている暇はありません。理論などを暗記する際には、条文の内容や条文番号までしっかり覚えて本番中すらすらと出てくるようにしてください。
企業法は会計監査に関わる法律を学ぶ科目です。そのため、監査法人にて業務を行うにあたって直接扱うことはあまりありませんが、業務の根幹には常に法律の裏付けがあるため関連性が無いわけではありません。例えば、決算スケジュール、計算書類の確認、組織再編の会計処理等の業務では、会社法に関わる知識が活用可能です。監査論程ではありませんが、ある程度実務には役立つ科目と言えるでしょう。
事業会社の社内会計士となる場合でも、経理部門、財務部門等では、連結および単体の決算において会社法や金商法に関わる計算書類作成業務があるため、企業法を知っておくことで業務の全体像は把握しやすくなります。
投資銀行のM&Aチームやプライベートエクイティファンドで働くようなプロフェッショナルになる場合では、弁護士程ではないものの、株主総会や取締役会の決議が必要な事項を頭に入れていたり、金商法上の規制がある程度頭に入っていたりするかどうかで、プロフェッショナルとしての信頼感の向上につながります。
公認会計士として働く上では、弁護士や司法書士のような他の専門家と協力して仕事を行う場合が多くあります。このような際に、企業法に関する知識を持っていると、他の専門家とのコミュニケーションが円滑になることも期待されます。
以上の通り、企業法は理論問題のみで構成されており、試験範囲が非常に広いため、勉強の進め方が分かりづらい科目ですが、重点項目の絞り込みをきちんと行った上で効果的な学習を積み重ねれば、ある程度の高得点を狙えます。監査だけでなく、ビジネスの世界で活用可能な知識なので、是非習得してみてください。
本記事を参考に、学習を進められたという方が一人でもいれば幸いです。
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