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短答試験管理会計論
目次
公認会計士試験でも比較的難しいと言われる管理会計論。短答式試験における必須受験科目の一つなので、どのように勉強を進めるべきか悩む受験生は多いと思います。そこで、本記事では「管理会計論ってどんな試験?」「管理会計論ってどんな風に勉強したらいいの?」などの疑問について、初学者にもわかりやすく解説します。
公認会計士試験を受験しようと考えていて、短答式試験の科目について詳しく知りたいという方は、ぜひ本記事をご一読ください。
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管理会計論とは、「会計学」という公認会計士試験の基礎となっている学問の一分野です。「会計学」は公認会計士試験の中の重要な位置にあり、短答式では「管理会計論」「財務会計論」「監査論」、論文式では「会計学」「監査論」という科目として、細かい分類ごとに出題されています。
学問としての管理会計論は、企業内の会計データを経営者等の内部利害関係者へ提供し、もって経営判断や業績管理に資することを目的とします。そのため、管理会計論の試験範囲には工業簿記、原価計算だけでなく、経済的意思決定、経営管理に関する事項も含まれています。
工業簿記、原価計算とは具体的には、主に製造業等で行われる製造原価の計算方法や、棚卸資産(原材料・仕掛品等)の計算を行うといった項目です。また経営管理とは、利益管理、投資採算性の計算、戦略的マネジメント等、会計情報を利用して行なわれる経営判断および業績管理に関連する項目です。
公認会計士試験は、年二回開催される短答式試験と、年一回開催される論文式試験で構成されています。管理会計論は4科目ある短答式試験の内の1科目で、必須受験科目です。ちなみに、短答式試験の科目は管理会計論、財務会計論、会社法、監査論の4科目です。
他試験との関わりでは、日商簿記検定1級の内容に経営管理を含めた範囲が、管理会計論の範囲と一致します。したがって、管理会計論の難易度は簿記1級と同等かそれ以上になり、簡単な試験ではないことが分かります。
合格レベルの得点に達するには財務会計論ほどの時間はかからないと言われ、一般的には約300時間の学習時間が必要と言われています。財務会計論と同じようにまずは簿記2級レベルの勉強から始める人が多くなっており、多くは資格予備校のテキストに従い学習を進めていきます。
管理会計論の短答式試験の問題は、大きく分けて「原価計算」と「管理会計」に分かれていて、それぞれについて計算問題と理論問題が出題されます。「原価計算」では、製品原価の計算問題が出題される一方、「管理会計」では、会社の意思決定等の経営判断などに関する問題が出題されます。
試験はすべてマークシート方式で、原価計算や損益分岐点分析等に関する問題が8問、管理会計に関する問題が8問、計16問が出題されます。満点は100点満点で、計算問題と理論問題の比率は6対4から5対5程度であることが多いようです。
以下にて、それぞれの詳細について解説します。
管理会計論は、上述の通り会計学を財務会計論と管理会計論に二分した科目の内の一つです。短答式試験では管理会計論として1科目になっていますが、論文式試験では会計学の1コマ分が該当します。つまり、管理会計論は論文式試験における会計学の出題内容の一部なので、学習した内容は論文式試験にも活かすことが可能です。
管理会計論は、全科目の中で最も試験の時間的制約が厳しい(試験時間が足りない)と言われており、得意と苦手がはっきり分かれるため人によって得点の差がかなり大きくなります。
公認会計士・監査審査会は、毎回の公認会計試験の前に、次回の試験の出題範囲の要旨を示しています。
出題範囲の要旨は抽象的でそこまで参考にはなりませんが、具体例を挙げると令和4年公認会計士試験の管理会計論の出題範囲は、「原価計算は、材料、仕掛品及び製品等の棚卸資産評価並びに製品に関する売上原価の計算について」「管理会計は、利益管理、資金管理、戦略的マネジメント等を含み、会計情報等を利用して行う意思決定及び業績管理に関連する内容について」とされています。
また、原価計算に関する理論問題の一部は企業会計審議会が作成する「原価計算基準」から出題されますので、「原価計算基準」についても学習をする必要があります。
管理会計論は、試験時間60分、100点満点の試験です。全ての問題がマークシート方式で、計算問題と理論問題の比率は6対4から5対5程度となっていることが多いようです。
理論問題と計算問題のどちらにおいても、原価計算に関する問題と管理会計に関する問題の両方が出題されます。
公認会計士試験の短答試験は、必須受験科目である4科目(財務会計論、管理会計論、監査論、企業法)の平均得点が、合格基準点を上回っているかどうかで決まります。そのため、管理会計論1科目のみに関する合格率を計算することは出来ません。
しかし、公認会計士・監査審査会のホームページ上に、各科目の受験者の平均点が掲載されているため、他の科目と比較した難易度を測ることが可能です。管理会計論の平均得点の推移は、以下の表の通りです。
平均得点比率 | 2021年(※) | 2020年Ⅱ | 2020年Ⅰ | 2019年Ⅱ | 2019年Ⅰ |
---|---|---|---|---|---|
総合 | 47.3% | 46.1% | 38.9% | 42.6% | 44.2% |
財務会計論 | 47.0% | 43.7% | 33.8% | 43.0% | 38.1% |
管理会計論 | 40.9% | 46.0% | 34.5% | 37.4% | 44.1% |
監査論 | 52.3% | 52.2% | 48.2% | 42.9% | 54.3% |
企業法 | 47.8% | 43.5% | 44.2% | 46.4% | 46.9% |
合格基準点 | 62% | 64% | 57% | 63% | 63% |
上記の表から管理会計論は、2021年試験、2020年第一回、2019年第二回試験において4科目中ほぼ最低の平均得点比率となっており、2020年第二回、2019年第一回には中程度の平均得点比率となっていることがわかります。年によってばらつきがあるものの、得点が取りにくく難しい科目と言えるでしょう。
管理会計論は、毎年のように数問の難問が出題されると言われています。管理会計論の分野は、財務会計論における商業簿記と異なり一般に公正妥当と認められる会計基準に基づくものではないため、問題文の文章の読解力を試される出題がなされることがあります。とはいえ概ねテキストや答練に乗っている基礎的・標準的な問題から出題されることが多いので基礎を大事にすることが大事です。
実際の試験においては、問題のボリュームが多いことから時間の配分が難しいです。ゆえに全ての問題を完璧に解き切ることは不可能と割り切る気持ちをもって、点数が取れそうな問題を優先してミスなく計算を進めることがコツです。時間配分次第で、点数が大きく変わってしまうのが管理会計論の特徴です。
管理会計論の合格(短答のみ)には300~400時間程度という、財務会計論や企業法に次ぐ長時間の学習時間が必要とされています。そのため、まずは予備校や参考書を利用して勉強を継続することが必要です。前述のように、管理会計論の中には原価計算が含まれますが、簿記1級の範囲に含まれる原価計算の勉強によってもカバー可能です。
試験問題は計算問題と理論問題で構成されています。計算問題の得点を上げるためには、とにかく知識を得て練習問題をこなすことが必要です。過去問や予備校の演習問題を利用し、何度も問題を解くことで実力を身に付けられます。学習の際には、問題の解法を機械的に暗記するだけではなく、その計算が合理的である根拠を逐一理解し、応用問題に対処できるようにする必要があります。
理論問題では、上述のように「原価計算基準」からの出題が中心です。30ページ程の原価管理基準の中でも、特に試験に出題されやすい範囲がある程度決まっているため、頻出範囲を暗記することは一つの方法です。暗記によって理論問題を解く時間が短くなれば、その分多くの時間を計算問題に使うことができ、合格にぐっと近づきます。
管理会計論の合格(短答のみ)には300~400時間程度の学習時間が必要とされていて、これは財務会計論の600時間(短答のみ)・企業法の400時間(短答のみ)に次ぐ長時間です。前述の原価計算の問題に対応するため、ある程度簿記の勉強を行う必要がありますが、300時間の内100時間程度は工業簿記に費やすことが想定されます。
公認会計士試験の必要学習時間は3000時間から4000時間と言われています。これは、2年間の学習で試験合格を目指す場合、一日あたり4時間程度です。管理会計単体の学習時間を考えると、2年の間に3ヵ月程度は管理会計の学習を行う必要があります。
1年間で短答式に合格、1年間で論文式に合格というスケジュールで進めるのであれば、1年間で4科目(財務会計論、管理会計論、監査論、企業法)を合格レベルまで持っていく必要があります。そのため、4科目を同時進行しながら管理会計論には3カ月程度の時間を割かなければなりません。
もちろん上記の勉強時間はあくまでも目安であり、より短時間で済んだ・長時間かかったという人もいます。さらに、本番の試験問題との相性で点数が上下する可能性もありますので、時間のみにとらわれるのではなくしっかりした理解を積み重ねることが重要と考えられます。
前述の通り、管理会計の問題は原価計算と管理会計に分かれます。
原価計算の勉強方法の方法は、王道ですが、①基礎知識の定着、②計算の問題演習です。①基礎知識の定着のためには、予備校の参考書や過去問レジュメを用意しある程度時間をかけて覚える必要があります。原価計算は日商簿記1級と繋がりが深いため、余裕があれば簿記1級の教科書を参考にすることも可能ですが基本は予備校のテキストを完璧にすることが求められます。②計算の問題演習には、とにかく練習問題を繰り返し書くことがおすすめです。数をこなすことで解答のスピードと正確性が上がることも期待できます。
管理会計論は原価計算より計算の割合が下がり、理論の割合が上がります。抽象的な問題がより多くなりますので、苦手とする人も多い分野です。勉強するにあたっては、やはり参考書・問題集は欠かせません。学習の際には、理論といえども必ず練習問題と並行して学習を行い、どんな形で試験に出題されるかを理解することが必要です。計算問題は一度解法をマスターすれば忘れにくいので、理論問題より先に勉強を進めても良いでしょう。
原価計算の理論問題の内、原価計算基準からの出題は必ず正解し点数を確保していきましょう。これにより、時間の制約が厳しい計算問題を落ち着いてこなすことが可能になります。難問が出題されることも多く、問題との相性によっては全く解けない場合もあります。試験中には、解けない問題を深追いしないように注意してください。
試験は16問で、2020年第Ⅰ回短答式試験では理論8問、計算8問が出題されました。試験時間は60分ですので、理論問題を10分~20分程度で解き、計算問題を残りの時間で解くというのが一般的な配分方法です。
問題を開けてすぐに問題にざっと目を通し、解くべき優先順位をつけることが攻略のコツでしょう。
監査法人では管理会計の知識は製造業の監査の際には必要になります。監査業務においては、原価計算、在庫管理、予算実績管理等の知識があれば製造業の監査においても監査上のリスクを判断することが必要です。
一般事業会社等では、経理、財務、税務部門はもちろんのこと、経営企画、事業企画、事業統括といった経営に携わる部門で投資の採算性の判断や予実差異分析を業務に活かすことが可能です。
経営・戦略コンサルタント等のプロフェッショナル職でも、コスト分析や利益構造の把握をする際に管理会計論の知識が役立ちます。管理会計は経営と深い関係にあるため、監査業務以外にも活躍できる分野が広がっているのです。
以上の通り、管理会計論は、勉強時間こそ財務会計論や企業法ほど多くないものの、会計学の中心的な分野であり、原価計算と管理会計のどちらに対しても深い理解が必要とされる難易度の高い科目です。
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