公認会計士試験

短答試験監査論

公認会計士試験では、勉強した方が良い派と時間をかけても意味が無い派に二分される監査論。理論問題しか出題されないためとっつきにくく、どんな勉強の進め方をすればよいか悩む受験生も多いと思います。

そこで、本記事では「監査論ってどんな試験?」「監査論ってどんな風に準備したらいいの?」などの疑問について、初学者にもわかりやすく解説したいと思います。公認会計士試験を受験しようと考えていて、短答式試験や論文式試験の科目について詳しく知りたいという方は、是非本記事をご一読ください。

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監査論とは?

監査論とは

監査論とは、「会計学」という公認会計士試験の基礎となっている学問の一分野です。会計学は、「財務会計」「管理会計」「監査」等の分野に細分化されています。

「財務会計」は投資家や債権者等の外部のステークホルダーに対して、会社の財務情報を正しく伝えることを目的とします。「管理会計」はその逆で、経営者に対して業績向上に資する有益な財務情報を伝えることを目的としています。「監査」とは公認会計士の独占業務のことで、会計の結果を独立した第三者の立場からチェックする行為を指します。特に証券取引所に上場している上場会社においては金商法上要求されるプロセスと位置付けられているため、会計学の一分野に入れられることが多いです。

公認会計士試験では、短答式の「管理会計論」、「財務会計論」、「監査論」、論文式の「会計学」、「監査論」が会計学にあたる科目です。本記事では、会計学の一部である「監査論」について詳しく解説していきます。

監査論の特徴

公認会計士試験は、年二回開催される短答式試験と、年一回開催される論文式試験で構成されています。短答式試験は財務会計論、管理会計論、監査論、企業法の4科目からなり、論文式試験の科目は会計学・監査論・企業法・租税法・選択科目の5科目からなります。

監査論は短答式と論文式の両方に出題される科目です。財務会計論や管理会計論とは異なり、計算問題は出題されません。監査論は他の科目と比較して、知識でなく監査基準に対する理解や関連規則に対する暗記力とケースに応じた思考力が問われる試験と言われています。そのため、勉強量を増やしても本質的な理解がされていないと点数が伸びにくい科目です。

監査論の試験概要

監査論の内容とポイント

監査論は他の科目と比較して比較的試験内容のボリュームが少ない科目です。テキストを見ても他の科目より薄いですし、予備校ではカリキュラムの最後に始まる授業である場合が多いです。しかし、内容は抽象的で、実務経験の無い受験者だと教科書に書いている意味がイメージできない場合もあり、難易度としては高い科目です。

まず短答式試験では、出題範囲である監査基準、品質管理基準、四半期レビュー基準等に記載された事項について、その結論を暗記する必要があります。論文式試験では、それだけでなく、その結論が導かれる背景や具体的な事例をもとに監査基準を参照しながら文章で記述する試験です。

監査論の出題範囲例および試験内容

監査論の出題範囲としては、公認会計士・監査審査会から示される「出題範囲の要旨」を参考にすると良いでしょう。例えば、令和3年の監査論の出題範囲は以下の通りです。

「監査論の分野には、公認会計士又は監査法人(以下、公認会計士)による財務諸表(財務諸表、財務表及び財務諸表項目等)の監査を中心とした理論、制度及び実務が含まれる。すなわち、財務諸表監査、中間監査、四半期レビュー及び内部統制監査の理論、制度及び実務を出題範囲とする。」

また、制度に関する問題は、監査基準等(監査基準、中間監査基準、監査に関する品質管理基準、四半期レビュー基準など)と、諸法令から出題されると記載されています。

監査論の出題形式

監査論の試験は、短答式試験は試験時間1時間で100点満点、論文式試験では試験時間は2時間で100点満点となっています。どちらの試験も計算問題は無く、理論問題のみが出題されます。配点は、短答式試験では5点の問題が20問、論文式試験では大問4問で計100点であることが一般的です。ただし、配点は年度によって変わる可能性がありますので、ご自身が試験を受ける際には十分気を付けてください。

監査論の短答式試験と論文式試験

監査論の短答式試験

監査論の短答式試験では、監査論に関する4つの記述のうち、正しいもの(間違っているもの)の組み合わせとして適切な番号を選択する形式の問題が出題されます。問題となる記述は、出題範囲内の論点や規定の一部が改変されて出題されます。例えば「〇〇とは、✕✕ということである」という記述を見て、正誤を判断するという問題です。

4つの記述の中の、適切な2つの記述さえわかればよいので、4つ全ての正誤を判定する必要はありません。「必ずマル」を二つ見つけるか、「必ずバツ」を二つ見つけられれば、その問題は解けたことになります。

監査論の論文式試験

論文式試験では、監査の諸概念や、あるシチュエーションで適用される監査手続きが示され、その背後にある理論を説明させる問題が出題されます。例えば、「〇〇の際には✕✕が適用される。✕✕が適用される理由を3つ答えろ。」といった構成です。

短答式試験のように答えだけ知っていてもダメで、「なぜそうなるか」を学習した論点や理論を用いて説明できなければなりません。試験本番では、法令基準集が配布され、法令等を調べることが可能です。ただし、試験時間は問題量に比して短いため、時間をかけて調べることは出来ず、確認のために基準集を活用できるにとどまるようです。

監査論の難易度・合格率

監査論の合格率

公認会計士試験の短答式試験・論文式試験では、4科目ないし5科目の平均得点が合格基準点を上回っているかどうかで合否が決まります。そのため、監査論1科目の合格率を計算することは出来ません。

ただし、短答式試験については、公認会計士・監査審査会のホームページ上に、各科目の受験者の平均点が掲載されているため、他の科目と比較した難易度を測ることが可能です。

平均得点比率 2021年(※) 2020年Ⅱ 2020年Ⅰ 2019年Ⅱ 2019年Ⅰ
総合 47.3% 46.1% 38.9% 42.6% 44.2%
財務会計論 47.0% 43.7% 33.8% 43.0% 38.1%
監査論 40.9% 46.0% 34.5% 37.4% 44.1%
監査論 52.3% 52.2% 48.2% 42.9% 54.3%
企業法 47.8% 43.5% 44.2% 46.4% 46.9%
合格基準点 62% 64% 57% 63% 63%

監査論の難易度

上記の表から、監査論は、過去5回の短答式試験の内4回で平均得点率が最も高い科目となっています。そのため、短答式の四科目の中では難易度が比較的低い科目と言えます。もちろん、その分平均点が高くなり高いレベルでの争いになりますので、頭一つ抜き出ることは難しいですが、計算問題がない科目であることから得点源にすることは十分可能でしょう。

監査論合格までの道のり

下記にて詳しく解説しますが、監査論の合格には短答式と論文式あわせて400時間程度の学習時間が必要と言われています。そのため、監査論合格のためにはまずは、短答式・論文式試験を通じて一定の学習時間を確保することが必要です。

監査論では、短答式でも論文式でも理論問題のみが出題されます。勉強内容のボリュームは比較的少ないと言われていますが、ただ教科書を眺めるだけでは理解は深まりませんし、問題が解けるようにもなりません。そのため、とにかく問題をこなすことが重要と言われています。この際、市販の監査論の理論問題集をやっても良いですし、予備校が出している模試や答練を使ってもかまいません。

短答式の勉強をする際には、論文式も見据えた学習を行うとより効率が良いでしょう。短答式では単純に監査に関する知識のみがマルバツで問われますが、論文式ではその知識の背景にある理論について問われます。そのため、短答式の問題の答え合わせをする際に、問題の解説をできるだけ覚えながら進めると良いでしょう。

監査論の勉強時間・勉強方法

監査論の勉強時間

合格には、短答式の学習時間として200時間程度、論文式の学習時間として200~300時間程度が必要と言われています。これは短答式の他の科目や論文式の他の科目と比較して最も短い時間です。

学習期間としてみると、公認会計士試験に合格するための必要学習時間は、全科目合計で3000時間から4000時間と言われています。2年間の学習で試験合格を目指す場合、一日あたり4時間~5時間程度の勉強が必要になります。このことから、監査論単体の学習期間は、2年間のうちに短答式と論文式を合わせて3ヵ月から4か月間程度の学習を要します。

1年間で短答式に合格、1年間で論文式に合格というスケジュールで進めるのであれば、毎年1.5ヵ月から2カ月程度は監査論に学習時間を割く必要があります。

もちろん上記の勉強時間はあくまでも目安で、より短時間で済んだ・長時間かかったという人もいます。さらに、本番の試験問題との相性で点数が上下する可能性もありますので、時間のみにとらわれるのではなくしっかりした理解を積み重ねることが重要と考えられます。

監査論の勉強方法

前述の通り、監査論では短答式試験でも論文式試験でも理論問題のみが出題されます。

短答式試験では、理論問題集、予備校の練習問題や市販の肢別問題集等を繰り返し解く勉強方法がおすすめです。単純にマルバツ問題によって知識を増やすことが出来ますし、抽象的理論がどのように問題に落とし込まれているかを知ることで、教科書や基準等の読み込み方もわかるようになるからです。

論文式試験でも同様に、理論問題集や予備校の練習問題等を解く方法がおすすめです。自分で書いてみることで暗記の効率も良くなり、監査の考え方を理解することにもつながります。

監査論の攻略法

監査論の試験本番では、監査論は知識だけでなく論理的思考や常識によって解ける問題が含まれている科目であることを意識しましょう。短答式であれば、一見知識が無くわからないように見える問題でも、自分の知識から類推すれば解けるような場合があります。論文式では、わからない問題でも白紙提出は避け、知っている知識の中で少しでも部分点が見込めるよう可能な限り回答を書くことが重要です。

論文式試験では、他の科目にも言えることですが、理論の重要部分のキーワードは必ず書くようにしましょう。時間が無くて論述を省略して書くときには、その理論の重要なポイントや論点、キーワードを落とすと得点にならないことがあります。普段の学習中から、理論問題を学習する際には、キーワードを抑えて暗記するようにすると良いでしょう。

監査論の試験会場では、会計基準等がまとめられた「法令基準集」が配布されます。ただし、試験中に時間をかけて法令中の文言を調べている暇はありません。理論などを暗記する際には、条文の内容までしっかり覚えて本番中すらすらと出てくるようにしてください。

監査論は実務にどう役立つ?

監査論の実務との関連性について

監査論は公認会計士の独占業務である「監査業務」に関わる科目です。そのため、監査法人にて業務を行うにあたって知識に触れる頻度は、公認会計士試験の科目中でもっとも多いと言って過言ではないでしょう。法定監査、任意監査、内部統制監査、システム監査、金融業監査で行う自己査定監査のいずれにおいても、監査論の知識が出てきます。

その他、実際に監査を行うにあたっては、重要性の基準値、サンプリング、リスクアプローチ等の概念が多く出てきます。これらをしっかり理解し説明できるようにすることで、クライアントに対する信頼の向上やマネージャーやパートナーからの信頼・評価にもつながります。

事業会社の社内会計士となる場合でも、経理部門等の監査を受ける側の立場で役立つだけでなく、内部統制、内部監査、コンプライアンス部門、監査役といった会社の内側から自社の状態をチェックする立場でも監査論の知識が役立ちます。財務・会計・税務コンサルタント等の職業では出てくる頻度は少ないものの、監査に関する知識がある点は信頼感の向上につながります。

まとめ

以上の通り、監査論は理論問題のみが出題されるため多少クセはありますが、きちんと対策をすれば一定以上の高得点を狙える科目です。監査業務を行う上では必須の知識ですので、公認会計士という職業上重要な科目と言えるでしょう。

試験では単に知識だけではなく、思考力や少しでも部分点を取りに行こうという姿勢が重要です。本記事を参考に、学習を進められたという方が一人でもいれば幸いです。

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