監査からコンサルへ転職した会計士が考える「公認会計士の価値」とは
公認会計士の転職活動は、ほとんどの場合「公認会計士として」行うものだ。したがって、転職先では経理や経営企画、あるいは内部監査などの部署に配属されるのが典型的なパターンである。仮に、そうではない部署に配属されたり、全く畑の違う職場に移った時、公認会計士はどういう形でバリューを出せばいいのだろうか。
堀田さんの話を聞くと、公認会計士の価値は必ずしも「数字に強い」だけではない、ということが見えてくる。
プロフィール
堀田 みどり(仮名) 30代女性公認会計士
2011年に公認会計士試験に合格後、大手監査法人に就職し、国内企業の監査業務やコンサルティング業務に従事。その後、コンサルティングファームに転職。現在は戦略コンサルティングファームのメンバーとして、マーケティング、ブランディングを中心とした経営計画、経営戦略等の策定のほか、公認会計士としてのバックボーンを活かしてデューデリジェンス業務などに携わる。
「見えないもの」を見るべく、会計士を志す
眞山:堀田さんは、一度就職活動を経験されているんですよね。それなのに、途中で方向転換をして公認会計士になった、と。
堀田(敬称略):はい。大学の学部にいたときに、一度広告代理店に内定をもらっていたんですが、リーマンショックがきっかけで「手に職を付けたい」と思うようになり、大学院に進学しました。
そこで会計に出会って、公認会計士という資格を知りました。なので、監査そのものにあこがれていたというよりは、手に職を付けたい、目に見えない価値を見えるようにしたかった、というのが当初の目的でした。
眞山:見えない価値、というのは面白い言葉ですね。例えばどういうものを指すのでしょうか?
堀田:例えば、クリエイティブなものの価値って、後から値段がついていくじゃないですか。あるいは、ビジネスが将来的にもたらす価値もそう。会計を突き詰めて学ぶとそういうものが見えるんじゃないかと思っていたんです。
眞山:なるほど…そういう想いを持っていたのであれば、確かにやりたいことは「監査」とは違うものかもしれないですね。
堀田:そうですね。2014年に大手の監査法人に入所したのですが、その頃から早く監査法人の外に出たいと思っていたので、クライアントの規模が小さくて、経営者層とも話しやすく、ビジネスモデルを俯瞰しやすい部署を選びました。
仕事をする時は、一言で言えば「監査をする頭で監査をしない」ことを心がけていました。売り上げという数字だけではなく、将来何を目指そうとしているのか、とか、そういうものを見たかったんです。役員議事録にしても、単に日付や決裁印を見るだけではなくて、どういった経路で意思決定が行われているのか?を見るようにすると、面白いんですよね。
眞山:まさに先ほどの「見えないもの」を見ようとする意識ですね。監査以外の仕事にもチャレンジしていたんでしょうか?
堀田:はい。…というより、監査に2年くらいで飽きちゃったんですよね(笑)で、部署内で監査関連業務…要するにコンサルティング業務の案件に取り組んでいこうという流れがあって、そこに手を挙げさせてもらっていくつかのプロジェクトを経験しました。ただ、そこでの案件もたくさんあったわけではないのと、ちょうど修了考査のタイミングでキリが良かったこともあり、監査法人の外にキャリアを求めて、今の職場に移ったのが2018年の夏ごろでした。
新天地で切りひらいた会計士としての存在感
眞山:今の職場はどうやって見つけられたのでしょうか?
堀田:ブランディング・マーケティングを専門にしたコンサルティングに興味を持っていたので、自力で検索してたどり着きました。トップがコンサル業界のビッグファーム出身ということもあり、いいな、と思って。前職時代に培った経験も活かせると思った。もっと言えば、広告代理店系のコンサルファームなので、大学生時代に興味を持っていた分野でもあったんですよね。
眞山:面白いですね。一度経験された就職活動が、その時点になって活きてきているというか…。新しい職場は一般的な会計業界とは畑が違っているようですが、戸惑いはありませんでしたか?
堀田:入社当初は、いわゆるコンサルとしての頭の使い方基本スキルのようなものが身についていなかったことと、私の思い描いていた「ブランディング」という仕事と、実際の業務にちょっとギャップがあったので戸惑いましたね。事業戦略とか、会社をどう大きくしていくのか?ではなく、クリエイティブなアウトプットがゴールになってしまっているような気がしたんです。なので、もっと自分らしいバリューを出したいと思って、案件の区切りがついたときに上司に直訴したんです。
眞山:直訴!?すごいですね。で、どうなったんですか?
堀田:最近はビジネスデューデリジェンス(以下DD)とか、自分のキャリアを活かせる業務が回ってくるようになりました。回ってくるというより、今の職場では今まであまりDDをしていなかったようなんですが、私が加わってからDDができるようになって、そういう意味では業務のすそ野を広げる結果になったので、直訴してよかったな、と思ってます。
眞山:自分のやりたいことを主張して、それが組織にとってもパイを広げることにつながったのであれば素晴らしいですね。そう言ったコミュニケーションの取り方というのは、監査法人時代の仕事の中で学んだことなんですか?
堀田:そういう部分もあるかもしれません。会計士の仕事をしている時って、クライアントとの折衝業務が若いうちから積めるじゃないですか。そして、小さいながらも何らかの勘定科目とか、何らかの業務プロセスの責任者になったりする。そういう姿勢が、仕事への当事者意識として活きてくると思っています。コンサルファームの若手は、あまりクライアントと接する機会がないらしいのですが、会計士だとそうではないんですよね。
眞山:確かに、そうかもしれませんね。今はDDもやりつつ、ブランディングやマーケティング関連のコンサルもされているわけですが、会計士としてのアイデンティティって、何%くらい残っていますか?
堀田:今話したようなマインドセットの部分も含めれば、少なくとも半分くらいは残っていると思います。ただ、実は今、あまり「公認会計士」を名乗っていないんですよね。残念ながらブランディング・マーケティングの手伝いをする時に、公認会計士という肩書は、思い切って言えばちょっと邪魔になることがあって。
やはり公認会計士というのは理詰めであったり数的な部分に強いのであって、そっち側の仕事には向かないと思われがちなのかな、と。でも、もちろん公認会計士であることに誇りもあるし、実際にDDの仕事もあるわけで、会計士であることを十分に活かせているとも思っています。
存在感を価値に変えたい
眞山:なるほど…堀田さんは今後、どういう道に興味がありますか?
堀田:ずばり、社外取締役になってみたいです…なぜかというと、楽して稼ぎたいから(笑)。っていうと、冗談っぽくなりますが、自分の時間を切り売りするところから脱却して、自分の経験・知識、そしてそこから生まれる存在感のようなものでバリューを出せたらいいな、と思っています。
私がロールモデルにしているのは、秋池玲子さんというコンサルタントの方なのですが、柔らかさ、しなやかさ、発想力の豊かさを兼ね備えている人なんです。佇まいやお人柄は柔らかな雰囲気があるのに、著書や政府向けレポートなどで書かれている文章が、切れ味が鋭くて、本当にすごいんです。
そうなるためにはどうしたら良いんだろう…と考えると、今まではどちらかというと一つのことを突き詰めるよりも、広く色々なことに取り組むことをやってきた気がしているので、今後は何かスペシャリティを持ちたいです。
例えばB2Cのブランディングだったら堀田!とか。その一方で、会計士として「数字って楽しい」ということも味わっていけたらな、と思います。
眞山:ありがとうございました。ここまでこのインタビューを読み進めてくださった方って、おそらく転職すべきか悩んでいたり、自分のキャリアをはっきり描き切れていない方が多いんじゃないかと思うんですが、堀田さんからそういった方々にお伝えしたいメッセージは何かありますか?
堀田:正直、監査法人にいる人たちを見ていると、「何となく、ここにいる」人が多い気がするんですよね。一歩を踏み出せない。でも、私がそうであったように、一度踏み出しても会計士というバックボーンがなくなるわけではないし、戻ってくることもできるじゃないですか。
会計士が一人もいない職場に移った私でさえ、会計士であることを活かせるようになった。やりたいことがあるなら、「いったん」やってみるのもいいんじゃないの?と思います。
※記事内容などは取材時のものになります。
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