令和2年(2020年)公認会計士試験(論文式)合格発表速報|傾向と受験後の流れ
マイナビ会計士編集部
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令和2年(2020年)公認会計士試験「論文式試験」の総括と推移
2020年論文式試験は3,719名が受験し、1,335名が合格
2021年2月16日、令和2年(2020年)公認会計士試験「論文式試験」の合格発表が行われました。3,719名が受験し、1,335名合格(合格率35.8%)という結果になりました。
2020年は新型コロナウィルスの感染拡大を受けて、スケジュールの変更がありました。
公認会計士試験「論文式試験」は例年8月に行われ、1日2科目、計3日のスケジュールで6科目を受験します。しかし、2020年は11月中旬と3か月後ろ倒しになり、試験日数も3日から2日に短縮され、1日3科目のスケジュールで行われました。
そして試験の延期に伴い、合格結果の発表も11月中旬から2月16日に変更となりました。
そのため、論文式試験を受験された皆さんにとって、不安や戸惑いを感じながらの挑戦だったと思います。
このような状況を乗り越えて合格された方、本当におめでとうございます。また、残念ながら不合格だった方も、本当に頑張ってこられたと思います。お疲れさまでした。
どのような結果であれ、皆さんが論文式試験に向けて努力を重ねてきた道のりは、決して無駄にはなりません。今回のご経験をぜひ、今後のキャリアに大きく活かしていきましょう。
第Ⅰ回短答式試験の受験者・合格者数の推移
合格率15~16%台で推移し、2020年も例年並み
では、短答式試験・論文式試験の過去10年間の推移を見ていきましょう。まずは第Ⅰ回短答式試験から。
■第Ⅰ回短答式試験 願書出願者数・受験者数(答案提出者数)・合格者数・合格率の推移
年度 | 第Ⅰ回願書提出者数 | 第Ⅰ回受験者数※平成25年から答案提出者数 | 第Ⅰ回合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|---|
平成23(2011)年 | 17,244人 | 17,244人 | 1,708人 | 9.9% |
平成24(2012)年 | 13,573人 | 13,573人 | 820人 | 6.0% |
平成25(2013)年 | 9,984人 | 7,850人 | 1,071人 | 13.6% |
平成26(2014)年 | 7,689人 | 5,971人 | 1,003人 | 16.8% |
平成27(2015)年 | 7,207人 | 5,548人 | 883人 | 15.9% |
平成28(2016)年 | 7,030人 | 5,479人 | 863人 | 15.8% |
平成29(2017)年 | 7,818人 | 6,045人 | 1,194人 | 19.8% |
平成30(2018)年 | 8,373人 | 6,569人 | 1,090人 | 16.6% |
令和元年(2019) | 8,515人 | 6,610人 | 1,097人 | 16.6% |
令和2(2020)年 | 9,393人 | 7,245人 | 1,139人 | 15.7% |
願書提出者数は2016年まで減少傾向にありましたが、その後は増加し、2018年には8,000人を突破しました。受験者数・合格者数もそれに伴って上昇しており、合格率は15~16%台で推移しています。
まだコロナの影響のなかった2020年第Ⅰ回短答式試験は、願書提出者数・答案提出者数ともに例年並み。合格率も前年と変わらず15.7%という結果になりました。
第Ⅱ回短答式試験の受験者・合格者数の推移
年によって合格率にばらつきが。2020年は前年比0.2ポイント上昇
次に、第Ⅱ回短答式試験のデータを見ていきましょう。
■第Ⅱ回短答式試験 願書出願者数・受験者数(答案提出者数)・合格者数・合格率の推移
年度 | 第Ⅱ回願書 提出者数 |
第Ⅱ回受験者数 ※平成25年から 答案提出者数 |
第Ⅱ回合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|---|
平成23(2011)年 | 17,374人 | 14,970人 | 523人 | 3.5% |
平成24(2012)年 | 12,991人 | 10,722人 | 454人 | 4.2% |
平成25(2013)年 | 9,477人 | 6,000人 | 695人 | 11.6% |
平成26(2014)年 | 8,156人 | 4,927人 | 402人 | 8.2% |
平成27(2015)年 | 7,637人 | 4,503人 | 624人 | 13.9% |
平成28(2016)年 | 7,968人 | 4,740人 | 638人 | 13.5% |
平成29(2017)年 | 8,214人 | 4,916人 | 475人 | 9.7% |
平成30(2018)年 | 8,793人 | 5,346人 | 975人 | 18.2% |
令和元年(2019) | 9,531人 | 5,604人 | 709人 | 12.7% |
令和2(2020)年 | 9,383人 | 5,616人 | 722人 | 12.9% |
第Ⅰ回短答式試験の合格率は15~16%台で安定しているのに対して、第Ⅱ回短答式試験の合格率は年によってばらつきがあり、2017年は9.7%と10%を切っています。
また、日程が大幅延期となった2020年は、ふたを開けてみると、願書提出者数、答案提出者数ともに例年並みで、コロナの影響はさほどなかったようです。合格者は前年の2019年の709人より13名増え、合格率も12.7%から12.9%と0.2ポイント上昇しています。
論文式試験の受験者・合格者数の推移
ここ10年、合格率は35%前後で安定
論文式試験の推移も見ていきましょう。
■論文式試験 願書出願者数・受験者数・合格者数等の推移
年度 | 願書提出者数 | 受験者数 | 合格者数 | 前年度比 | 合格率 |
---|---|---|---|---|---|
平成23(2011)年 | 23,151 | 4,632 | 1,511 | 530人減 | 32.6% |
平成24(2012)年 | 17,894 | 3,542 | 1,347 | 164人減 | 38.0% |
平成25(2013)年 | 13,224 | 3,277 | 1,178 | 169人減 | 35.9% |
平成26(2014)年 | 10,870 | 2,994 | 1,102 | 76人減 | 36.8% |
平成27(2015)年 | 10,180 | 3,086 | 1,051 | 51人減 | 34.1% |
平成28(2016)年 | 10,256 | 3,138 | 1,108 | 57人増 | 35.3% |
平成29(2017)年 | 11,032 | 3,306 | 1,231 | 123人増 | 37.2% |
平成30(2018)年 | 11,742 | 3,678 | 1,305 | 74人増 | 35.5% |
令和元年(2019) | 12,532 | 3,792 | 1,337 | 32人増 | 35.3% |
令和2(2020)年 | 13,231 | 3,719 | 1,335 | 2人減 | 35.8% |
過去8年間、願書提出者数は10,000~12,000人、受験者数は3,000人台で推移しています。合格者数は減少傾向にありましたが、2016年以降は増加に転じています。合格率は、例年35%前後で推移しています。
合格ラインの推移
短答式試験の合格ラインは70%を切る年が多く、2020年は57%に
次に、短答式試験の合格ラインについて見ていきましょう。
■短答式試験の合格ライン
年度 | 第Ⅰ回短答式試験 | 第Ⅱ回短答式試験 |
---|---|---|
平成23(2011)年 | 73% | 73% |
平成24(2012)年 | 70% | 67% |
平成25(2013)年 | 67% | 67% |
平成26(2014)年 | 70% | 68% |
平成27(2015)年 | 60% | 67% |
平成28(2016)年 | 67% | 66% |
平成29(2017)年 | 71% | 64% |
平成30(2018)年 | 70% | 64% |
令和元年(2019) | 63% | 63% |
令和2年(2020)年 | 57% | 64% |
短答式試験の合格ラインは総点数の70%と言われていますが、受験者数や難易度により多少の調整がされます。2012年以降は70%を切る年が多く、2020年は第Ⅰ回で57%という結果が出ています。
なお、論文式試験の合格ラインは、ここ数年、偏差値換算で「52.0%以上の得点比率を取得した者」となっています。
公認会計士試験合格者の概要
平均年齢は25~27歳、「学生」・「専修学校・各種学校受講生」が圧倒的に多い
最後に、公認会計士試験合格者の平均年齢や職業について見ていきましょう。
■公認会計士試験合格者の概要
年度 | 平均年齢 | 最高年齢 | 最低年齢 | 学生及び専修学校・各種学校受講生 | 会社員 |
---|---|---|---|---|---|
平成23(2011)年 | 25.6歳 | 64歳 | 19歳 | 1,156人 | 55人 |
平成24(2012)年 | 26.6歳 | 59歳 | 18歳 | 981人 | 52人 |
平成25(2013)年 | 26.2歳 | 57歳 | 19歳 | 899人 | 54人 |
平成26(2014)年 | 26.8歳 | 67歳 | 17歳 | 803人 | 63人 |
平成27(2015)年 | 27.1歳 | 67歳 | 19歳 | 718人 | 94人 |
平成28(2016)年 | 26.2歳 | 67歳 | 19歳 | 795人 | 70人 |
平成29(2017)年 | 26.3歳 | 62歳 | 19歳 | 840人 | 106人 |
平成30(2018)年 | 25.0歳 | 55歳 | 18歳 | 940人 | 86人 |
令和元年(2019) | 25.2歳 | 62歳 | 18歳 | 921人 | 83人 |
令和2年(2020)年 | 25.5 | 61歳 | 18歳 | 893人 | 95人 |
合格者の平均年齢は25~27歳前後で推移しています。これを合格者の職業で見ていくと、「学生」・「専修学校・各種学校受講生」が圧倒的に多く、2020年は893人という結果。公認会計士試験は難易度が高く、出題範囲も広いため、集中的に勉強に取り組んで合格を勝ち取った受験者が多いことがわかります。
公認会計士試験「論文式試験」に合格した後のスケジュールは?
2年間の実務経験と3年間の実務補修を経て、修了考査に合格する
晴れて論文式試験に合格しても、さらに複数のハードルを越える必要があります。
公認会計士の資格を取得するには、2年間の実務経験と3年間の実務補習を受講し、論文式試験合格後の修了考査に合格しなければなりません。
中には、公認会計士試験を受ける前に実務経験を積んでいる合格者もいらっしゃいますが、多くは論文式試験合格後に実務経験を積んでいます。
また、修了考査は例年、12月に行われます。試験科目は「監査」「会計」「税務」「経営・IT」「法規・職業倫理」の5科目で、試験日程は2日間となっています。
修了考査合格者の推移は以下の通りです。
■修了考査 願書出願者数・受験者数・合格者数等の推移
年度 | 願書提出者数 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|---|
平成23(2011)年 | 3,636人 | 3,468人 | 2,378人 | 68.6% |
平成24(2012)年 | 2,814人 | 2,593人 | 1,846人 | 71.2% |
平成25(2013)年 | 2,468人 | 2,262人 | 1,528人 | 67.6% |
平成26(2014)年 | 2,201人 | 2,030人 | 1,438人 | 70.8% |
平成27(2015)年 | 1,954人 | 1,811人 | 1,301人 | 71.8% |
平成28(2016)年 | 1,785人 | 1,649人 | 1,147人 | 69.6% |
平成29(2017)年 | 1,653人 | 1,536人 | 1,065人 | 69.3% |
平成30(2018)年 | 1,618人 | 1,495人 | 838人 | 56.1% |
令和元年(2019) | 1,896人 | 1,749人 | 854人 | 48.8% |
修了考査に合格し、公認会計士の登録を済ませることで、晴れて公認会計士を名乗ることができます。論文式試験に比べて合格率が高いからと安心せず、気を引き締めて準備を行いましょう。
不合格だった方は、2021年論文式試験にチャレンジ
論文式試験に不合格だった場合は、次の論文式試験にチャレンジすることとなります。短答式試験に合格していれば、2年間の免除期間がありますので、翌年の論文式試験合格を目指して、勉強のスケジュールを組みなおしましょう。
これまでの勉強と論文式試験の結果を振り返り、合格に向けて戦略を練り直すのです。総勉強時間が足りなかったのか、それとも苦手科目を克服できていなかったのか。客観的に敗因を探っていき、そこから、次年度の論文式試験合格に向けた道のりを考えていきましょう。
■2021年論文式試験の日程
日程 | 科目 | 時間 |
---|---|---|
8月20日(金) | 監査論 | 10:30~12:30 |
租税法 | 14:30~16:30 | |
8月21日(土) | 会計学 | 10:30~12:30 |
会計学 | 14:30~17:30 | |
8月22日(日) | 企業法 | 10:30~12:30 |
選択科目 (経営学、経済学、民法、 統計学のいずれか1科目) |
14:30~16:30 |
2020年は試験日が3か月後ろ倒しの11月になり、試験日数も2日に短縮されて行われましたが、2021年は例年通り8月に3日間かけて実施されます。試験日程が例年通りに戻ったことで、次の論文式試験までの期間が短くなっていますので、勉強のスケジュールを組むときにはご注意ください。
なお、2021年論文式試験の合格発表は11月19日(金)を予定しています。
また、たとえ論文式試験に合格していなくても、それまでの勉強で身につけた会計の専門知識は無駄にはなりません。論文式試験を受験せず、会計事務所やコンサルティングファームなどで働くのも一つの選択肢です。
試験合格後、速やかに転職活動を行う
例年、論文式試験の合格発表が行われると、監査法人によるリクルート活動が始まります。どの監査法人も優秀な人材の確保に力を入れており、合格発表当日から説明会の予約を受け付けるなど、論文式試験合格者の採用に意欲的です。この時期に集中して転職活動を行って、望む転職先を手に入れましょう。期間は2~3週間程度と短いので、短期決戦で望むことが大切です。
選考方法は「エントリーシート(書類選考)及び面接」とするところがほとんど。つまり、書類対策と面接対策をしっかり行うことが、内定を勝ち取る一番のポイントとなります。
論文式試験合格者にとって、転職先は実務経験を積む場になります。どの法人でどのような経験を積むかによって、その後のキャリアも変わってくるでしょう。転職活動を行う際には、どのような業務に携わるのかをしっかり確認しておきましょう。
修了考査受験に向けてのフォローなどがあるかどうかも、チェックポイントの一つになります。公認会計士としてどのようなキャリアを積んでいきたいのかイメージしたうえで、教育・研修制度と入社後のキャリアパスの2つの軸で転職先をご検討ください。
以上を踏まえたうえで、転職活動の準備としては、「業界研究」「各法人の研究」「面接の準備」の3つを行うことをお勧めします。特に各法人の研究については、気になる法人に採用ホームページがあったら必ずチェックし、教育・研修やキャリアパスの内容を確認しておきましょう。
面接の準備は、志望動機と自己アピールの内容を固めておくこと。
まずは、あなた自身が築きたいキャリアと志望する法人の特徴を照らし合わせて、「志望動機」をまとめておきましょう。なぜ、その法人を志望するのか。自分の言葉で説明できるようにしておきましょう。そして、自己分析を行って自分の強みや興味ある分野、将来の目標などをまとめましょう。
最後に、合格発表日が例年の11月から2月に変更されたため、監査法人側も採用スケジュールを組み直していることが想定されます。どのような変更があったとしても、動じずに、転職活動に臨みましょう。
無理は禁物。健康管理を十分に行って、長期戦に備えよう
公認会計士は最難関の国家資格であり、短答式試験、論文式試験、そして実務経験と実務補修の後に課される修了考査に合格して初めて、公認会計士の登録を行うことができます。
この長期戦を乗り切るには、心身面の自己管理も大切になってきます。無理をして体調を崩してしまったら、元も子もありません。ところどころ上手に息抜きをしながら、公認会計士登録までの道のりを歩んでいきましょう。
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