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会計士が独立した後の働き方と、メリット・デメリット

会計士が独立した後の働き方と、メリット・デメリット

会計士のキャリアの1つに、「独立」があります。ここでは独立を視野に入れている会計士の方に向けて、独立後の働き方やメリット・デメリットを解説します。

藤沼 寛夫

藤沼 寛夫

公認会計士・税理士

2014年よりEY新日本有限責任監査法人にて、会計監査に従事。主に上場企業の会計監査・内部統制監査、非上場企業のIPO監査に携わる。 2018年より中堅コンサル系事務所にて、FASコンサルティングング業務に従事。主にM&A・プロジェクトファイナンスに係る会計税務コンサルティング、SOX導入支援等に携わる。
2019年より、藤沼会計事務所を開業。税務顧問サービス等を幅広く展開。 2020年より、アカウントエージェント株式会社を設立。M&Aコンサルティングサービス等を幅広く展開している。

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独立後の会計士の仕事内容

会計士が独立した後に担う、主な仕事内容は次のとおりです。

税理士業務

もっとも潜在顧客が多いのが、税理士業務でしょう。具体的には記帳代行や税務顧問、確定申告などのサービスを指します。個人の顧客が多く、顧客獲得も比較的容易であることから、まずは税理士業務からスタートされる方は少なくありません。一方、専門性の高い税務領域(国際税務・資産税など)以外の一般的な税務領域を主戦場とする場合、顧客単価が低くなりやすいというデメリットがあります。

M&AなどのFAS業務

次に多いのが、M&Aなどの所謂FAS業務です。例として、財務DD、バリュエーション、内部統制支援、IPO支援、IFRS支援などがあります。特にM&Aに関するコンサルティングは、金融機関とのコネクションを持つことで案件を定期的にもらえるでしょう。FASは税理士業務に比べて顧客数が少ないものの、1件あたりの単価が高いという特徴があります。
なお、初めのうちは税理士業務・FAS業務のどちらかに振るのではなく、何でも受けるというスタンスがおすすめです。なぜなら、さまざまな業務を受託し続けることが自らの得意な領域を発掘することに繋がり、その後の会計事務所のブランディングに繋がると考えられるからです。

独立までにやるべきこと

私が実際に独立してみて感じた、「独立までにやるべきこと」を3つ紹介します。

銀行口座・クレジットカード・自宅の賃貸契約などを済ませておく

独立を決めたら、各種金融機関や自宅の賃貸など契約を最優先で済ませておきましょう。なぜなら、独立後は多くの場合収入が減少することで、審査が通りづらくなるからです。そのため、独立後に必要となる手続きは、会社員時代に済ませておくのがおすすめです。なお、個人の銀行口座・クレジットカードを事業用にも使うことはできますが、会計ソフトへの連携時に面倒(個人の利用分も自動で記帳されてしまう)ですので、あまりおすすめしません。

税理士登録

独立後すぐ事業をスタートするためには、税理士登録の申請も済ませておくと良いでしょう。なぜなら、税理士登録には数か月要することがあり、独立してから申請を行うと、独立直後から税理士としての活動をスタートできないからです。
ただし、所属の会社によっては税理士登録を認めていないケースもあります。そのため、この点は会社所属中に申請しても良いか、事前に確認する必要があるでしょう。

事務所を契約する

優先度は高くありませんが、事務所の契約も行ったほうが良いでしょう。もちろん、事務所を契約せず自宅で開業する方も多いですが、個人的にはおすすめしません。なぜなら、自宅とは別に事務所を契約しなかった場合、事務所ホームページなどに自宅住所を明記することになるからです。
もちろん、事務所の住所をホームページに明記しないという選択もあります。しかし、顧客の視点からは(住所の記載がないと)信頼性が低いと判断されることがあり、マーケティングの観点でも望ましくありません。

独立して感じたメリット

続いて、独立してみて感じた「メリット」を3つご紹介します。

いつどこで働いても良い

クライアントの要望にもよりますが、基本的に公認会計士や税理士の仕事はリモートワークが可能です。また、一人で独立した場合は時間にも拘束されなくなるため、何時に始業しても良いでしょう。そのため、いつどこでも働ける自由さが手に入ります。

クライアントを選べる

会社員時代は、経営陣が獲得したクライアントの要望に応えることが仕事です。そして、基本的に自分でクライアントを選ぶことはできません。しかし、独立後は自らがクライアントを選ぶ立場にあります。そのため、自らが興味のある分野に特化したり、時間効率の良いクライアントのみを残したり等、クライアントを選別することが可能になります。
ただし、無暗にクライアントを切っていると悪評が広がる等、レピュテーションリスクがあるため注意が必要です。

年収に上限がない

一般的に、会社員時代は年収1,000万~2,000万程度が上限になるでしょう。しかし、独立後は年収に上限がなくなります。働いた分だけ自らの収入に繋がるため、やる気が収入に直結し、モチベーションのアップにも繋がるでしょう。

独立して感じたデメリット

ここでは、独立してみて感じた「デメリット」を3つご紹介します。

もう少し税務を勉強しておくべきだった

独立直後は主に税務を中心に活動することになります、勉強不足を痛感するシチュエーションは少なくありませんでした。なぜなら、税務には(専門性を極めると)儲かる領域もあるため、これを見据えたキャリアを経験しておくべきだったと感じたからです。「税務はあまり儲からない」と決めつけず、税務領域での旨味も理解した上でキャリアを構築すると良いでしょう。

モチベーションの維持に工夫が必要

自由であることの裏返しですが、仕事へのモチベーション維持には工夫が必要になります。私の実体験として、独立後に事業が安定してくると、特に営業活動をせずとも既存顧客のみで満足するようになります。
しかし、独立には常に廃業リスクが伴いますから、リスクに見合う水準の収益が必要です。そのため、さらに高い収益を獲得するためのモチベーションのコントロールが求められます。モチベーションのコントロールについては、公認会計士受験生時代の経験が役立つでしょう。

孤独感

会計事務所の一人経営は、常に孤独です。自分一人で誰よりも高い知識を身につけなければならず、自分の成長を見てくれる上司もいません。また、経営者としての生き方に共感できる人は少ないため、同じ目線で悩みを共有できる仲間も減ります。マイノリティとして生きることに抵抗のある方には、独立はおすすめできないかもしれません。

独立に向いている会計士、向いていない会計士

よく、独立を考えている会計士の方から相談されることがあります。しかし、「そもそも独立しないほうが良いのでは…」と感じることも少なくありません。そこで、ここでは私の感じた会計士に向いている人・向いていない人の特徴を簡単にご紹介します。

独立に向いている人

変化への対応力があり、絶えず継続できる人は独立に向いているでしょう。なぜなら、独立自体は誰でもすぐにできるものの、事業を継続させることが大切だからです。
例えば、独立後はテクノロジーの進化に伴い、販売ルートやサービス自体を変容させる必要があります。また、顧客数が増えやすいため、各クライアントニーズの変化に対応しなくてはなりません。このような変化を楽しむことができる方、市場環境・経営環境の変化に常に対応できる方は、独立に向いていると感じます。

独立に向いていない人

私がもっとも多く受けるのが、「独立後にどうやって営業しているのか」「何が一番儲かるのか」という相談です。しかし、残念ながらこのような質問をされる方は、あまり独立に向いていないと感じます。
なぜなら、収益の源泉を競合になり得る人に教えることは、自らの収益を引き下げる要因になり、これをイメージできないことが致命的であると感じるからです。また、独立後に成功している人は、他者に聞く前に自分で行動される人が多いように思います。

まとめ

公認会計士の独立に関して、実体験を交えて解説しました。独立は自由ですが、リスクも伴います。いきなり独立するのではなく、独立に必要なキャリアも考え、場合によっては転職によって新たなスキルを身につけるのも良いでしょう。

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