公認会計士が中小企業診断士を取得するメリットは?
公認会計士の仕事は、独占業務の監査をはじめ、会計、税務などですが、経営戦略立案や組織再編など、経営全般に関わるコンサルティング業務を行う場合もあります。そのため、公認会計士の中には、中小企業の経営課題に対応する中小企業診断士とのダブルライセンスでキャリアの幅を広げる人もいます。
ここでは、公認会計士が中小企業診断士の資格を取るメリットや、中小企業診断士試験についてご紹介しましょう。
マイナビ会計士編集部
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中小企業の経営状況を診断・改善する中小企業診断士
中小企業診断士とは、中小企業の経営状況について診断を行い、経営の問題点を解決したり、業務を改善したりするためのアドバイスを行う専門家のこと。経営コンサルタントといえばわかりやすいでしょう。中小企業支援法に基づき、経済産業大臣が登録する国家資格です。
診断やアドバイスを行う範囲は、「経営企画・戦略立案」「財務」「人事労務」「生産管理」「販売・マーケティング」「IT化・情報化」など多岐にわたります。また、専門知識を活かして、中小企業と行政や金融機関をつないだり、行政の中小企業向け施策の活用を支援したりする役割も期待されています。
公認会計士と中小企業診断士は何が違う?
企業の経営支援という観点で見たとき、公認会計士は財務・会計、中小企業診断士は経営診断の専門家です。それぞれ役割は異なりますが、企業の成長にとって欠かせない支援領域といえます。
続いては、公認会計士と中小企業診断士の違いについて見ていきましょう。
公認会計士でも経営コンサルティングはできる
中小企業診断士は、経営コンサルタントに位置付けられる仕事です。中小企業診断士は国家資格ですから、資格を持たない人は経営コンサルタントになれないように思えます。しかし、実際は経営コンサルタントを名乗る上で法律上の決まりはなく、資格も不要で、能力があれば誰でもできるのが経営コンサルタントです。
そのため、中小企業診断士の資格とのダブルライセンスでなくても、公認会計士が経営コンサルティング業務を行うことができます。公認会計士の中に、経営層へのトップマネジメントコンサルティングや内部統制、情報システムコンサルティングなど、経営領域のコンサルタントとして活躍する人がいるのは、こうした理由があるからです。
公認会計士と中小企業診断士の仕事内容を比較
公認会計士と中小企業診断士の仕事内容の違いは、具体的にどのような点にあるのでしょうか。
公認会計士の仕事は、企業が作成した財務諸表を監査し、それが適正か不適正かを判断して結果を報告します。一方、中小企業診断士の仕事は、企業の経営状況を診断し、問題点を解決するためのアドバイスをします。つまり、どちらも企業に対して診断を行いますが、公認会計士は「問題かどうかを見分ける」仕事であり、中小企業診断士は「問題を解決する」仕事という違いがあるのです。
また、公認会計士は「財務」をベースに診断していますが、中小企業診断士は「財務」だけでなく「経営企画・戦略立案」「人事労務」「生産管理」など、多角的に経営を診断するのが仕事です。
大前提として、法律で監査が義務付けられているのは上場企業や大企業などですから、公認会計士が監査を行う対象はおもに「大企業」で、中小企業診断士の診断対象は「中小企業」という違いもあります。
中小企業診断士の年収・報酬
公認会計士とのダブルライセンスではありませんが、中小企業診断士のみの場合の年収・報酬の目安を見てみましょう。
中小企業診断士のうち、年間100日以上の業務を行っている人の場合、年収で最も多い層は501万~800万円(約20%)です。次いで、1,001万~1,500万円(約15%)、801万~1,000万円(約13%)となっています。また、コンサルティング報酬の1日あたりの平均額を見ると、経営指導が97,000円、診断業務が108,000円、講演・教育訓練が130,000円でした。
なお、この目安は少し古いデータで、中小企業診断士試験の指定試験機関である一般社団法人中小企業診断協会が会員向けに実施したアンケート(2005年調査)結果を参照しています。最新の年収情報を知りたい場合は、転職エージェントなどへ相談してみるのがいいでしょう。
公認会計士が中小企業診断士の試験に合格するのは簡単なのか?
公認会計士の資格とのダブルライセンスを目指す場合、気になるのは中小企業診断士試験の難度です。ただ、すでに公認会計士試験に合格した人であれば、中小企業診断士の試験の勉強は、それほど苦ではないかもしれません。
特に、公認会計士が中小企業診断士の試験を受ける場合、第1次試験の科目免除の申請が可能です。公認会計士試験または旧公認会計士試験第2次試験の「経済学」に合格していれば、「経済学・経済政策」が免除になります。また、公認会計士や公認会計士試験合格者であれば「財務・会計」が免除になります。
つまり、公認会計士であれば、中小企業診断士第1次試験7科目中、最大2科目の受験を免除されることになるのです。
公認会計士が中小企業診断士の資格を取るメリット
前述したように、公認会計士でも中小企業診断士と同じように、経営コンサルティング業務ができます。しかし、中小企業診断士の資格を取得し、経営コンサルタントとして活躍する公認会計士もいます。公認会計士が中小企業診断士の資格を取るメリットには、どのようなものがあるのでしょうか。
経営コンサルタントとしての仕事の幅が広がる
公認会計士が経営コンサルタントとして仕事をする場合、監査法人などでの業務経験や知識を活かせる専門領域は「財務・会計」です。中小企業診断士の資格を取得することで、財務・会計に加えて、経営全般の専門知識を活かしたコンサルティング業務ができるようになります。
中小企業診断士の資格を取ることで転職に有利になる
経営コンサルタントとしての幅が広がるということは、転職時のスキルや強みが増えることになります。特に、財務・会計系コンサルティングファームに転職する場合は有利になるでしょう。また、ベンチャー企業や会計事務所などに転職する際にも、評価ポイントとなる可能性があります。
中小企業診断士になるための方法や試験の合格基準
中小企業診断士になるためには、一般社団法人中小企業診断協会が実施する中小企業診断士試験に合格し、合格者を対象とした実務補習を受けた後、中小企業診断士登録を行う必要があります。
中小企業診断士試験は、第1次試験(筆記試験)、第2次試験(筆記試験と口述試験)に分かれているだけでなく、有資格者に対する試験科目の免除もあるため、少し複雑です。2020年度の試験案内をもとに、中小企業診断士試験について詳しくご紹介しましょう。
中小企業診断士試験の受験資格
中小企業診断士試験の受験資格ですが、まず第1次試験については、年齢・性別・学歴などの制限は一切ありません。
理論上は、小中学生でも受けられることになりますが、試験科目の経済学や企業経営理論を理解できる高校生くらいからが現実的でしょう。なお、2020年度の第1次試験申込者数20,169名のうち、20歳未満の申込者数は150名、合格者数は19名でした。最年少の合格者は16歳です。
男女比を試験申込者数で見ると、男性が18,146名に対し、女性は2,023名となっており、圧倒的に男性が多くなっています。
第2次試験以降は、第1次試験合格後、一定の期間内のみ受験資格が与えられます。詳細は下記のとおりです。
<第1次試験 受験資格>
年齢・性別・学歴などの制限はありません。
<第2次試験(筆記試験) 受験資格>
第1次試験合格者(ただし、第1次試験に合格した年度と翌年度の2年間)
※2000年度以前の第1次試験合格者は、1回に限り第1次試験が免除されて第2次試験(筆記試験)の受験資格があります。
<第2次試験(口述試験) 受験資格>
当該年度の第2次試験(筆記試験)合格者
中小企業診断士試験の試験日程
中小企業診断士試験の試験日程は、例年ほぼ同じ時期に行われていましたが、2020年度の試験日程は東京オリンピック・パラリンピック開催の影響を考慮して、事前に変更されました。
ここでは、例年の実施月と2020年度の実施月について記載しますが、2021年度の試験日程については、「一般社団法人中小企業診断協会」のWebサイトなどでご確認ください。
<第1次試験 日程>
例年8月上旬(2020年度は7月11日、12日)
<第2次試験(筆記試験) 日程>
例年10月中旬~下旬(2020年度は10月25日)
<第2次試験(口述試験) 日程>
例年12月中旬(2020年度は12月20日)
中小企業診断士試験の受験料
中小企業診断士試験の受験料は、第1次試験が13,000円、第2次試験が17,200円です(2020年度現在)。
なお、受験料は変更になる場合がありますので、試験日程などと併せて事前にご確認ください。
中小企業診断士試験の試験内容
中小企業診断士試験の試験内容は、下記のようになります。
<第1次試験 内容>
・経済学・経済政策
・財務・会計
・企業経営理論
・運営管理(オペレーション・マネジメント)
・経営法務
・経営情報システム
・中小企業経営・中小企業政策
<第2次試験(筆記試験) 内容>
・中小企業の診断および助言に関する実務の事例I(組織・人事に関するテーマ)
・中小企業の診断および助言に関する実務の事例II(マーケティング・流通に関するテーマ)
・中小企業の診断および助言に関する実務の事例III(生産・技術に関するテーマ)
・中小企業の診断および助言に関する実務の事例IV(財務・会計に関するテーマ)
><第2次試験(口述試験) 内容>
中小企業の診断および助言に関する能力について、第2次試験(筆記試験)の事例などをもとに面接方式で実施(試験時間は1人あたり約10分間)
第1次試験、第2次試験(筆記試験)の過去問題は、一般社団法人中小企業診断協会のWebサイトの「中小企業診断士試験問題」のページで公開されています。
なお、第2次試験(口述試験)の過去問題についての情報公開はありません。
中小企業診断士試験の合格基準
中小企業診断士試験の合格基準は、筆記試験では総点数の60%以上が条件です。100点満点の60%なので、60点以上という言い方もできます。
しかし、これはあくまで基準で、第1次試験には「試験委員会が相当と認めた得点比率とします」という断り書きがあります。わかりにくい文章ですが、意味合いとしては、もしも試験が難しくて100点の受験者がいない場合は、合格ラインの得点比率を変更する調整が入ることを示唆しています。
実際に2016年度試験では調整が入り、総点数の59%が合格ラインになりました。
通常の合格基準の詳細は、下記のとおりです。
<第1次試験 合格基準>
総点数の60%以上であって、かつ1科目でも満点の40%未満がないことを基準として、試験委員会が相当と認めた得点比率
<第2次試験(筆記試験) 合格基準>
総点数の60%以上であって、かつ1科目でも満点の40%未満がないこと
<第2次試験(口述試験) 合格基準>
口述試験の評定が60%以上であること
中小企業診断士試験には、条件を満たせば試験科目の一部免除がある
中小企業診断士試験には、過去の試験結果や保有資格などの条件を満たせば、第1次試験の試験科目が免除される「一部免除」があります。一部免除を受けるためには、受験申込みの際に受験者から申請する必要があります。
<科目合格による第1次試験の科目免除>
中小企業診断士試験には「科目合格」という制度があります。第1次試験を受験して不合格となり、第2次試験の受験資格を得られなかった場合でも、合格基準を満たした科目だけ合格扱いされるというものです。
これにより、再度第1次試験を受験する際に科目免除の申請をすることで、科目合格している試験科目は受験しなくてもよくなります。
なお、科目免除となった科目は、合否判定の対象外です。例えば、昨年度に科目合格した科目の点数は、次年度の合格基準の対象にはなりません。
科目合格の合格基準 | 満点の60%を基準として、試験委員会が相当と認めた得点比率 |
---|---|
科目合格の有効期間(科目免除の申請ができる期間) | 3年間 |
科目免除の申請をした場合の第1次試験の合格条件 | 3年以内(3回の受験)のあいだに全7科目に合格すること |
<保有資格などによる第1次試験の科目免除> 科目免除対象者として指定された資格保有者などの場合、第1次試験の試験科目が免除されます。詳細は下記のとおりです。 ■科目免除対象者と免除科目
科目免除対象者
免除科目
大学などの経済学の教授、准教授・旧助教授(通算3年以上)
経済学・経済政策
経済学博士
公認会計士試験または旧公認会計士試験第2次試験において経済学を受験して合格した者
不動産鑑定士、不動産鑑定士試験合格者、不動産鑑定士補、旧不動産鑑定士試験の第2次試験合格者
公認会計士、公認会計士試験合格者、会計士補、会計士補となる有資格者
財務・会計
税理士、税理士法第3条第1項第1号に規定する者(税理士試験合格者)、税理士法第3条第1項第2号に規定する者(税理士試験免除者)、税理士法第3条第1項第3号に規定する者(弁護士または弁護士となる資格を有する者)
弁護士、司法試験合格者、旧司法試験第2次試験合格者
経営法務
技術士(情報工学部門登録者に限る)、情報工学部門に関わる技術士となる資格を有する者
経営情報システム
次の区分の情報処理技術者試験合格者(ITストラテジスト、システムアーキテクト、応用情報技術者、システムアナリスト、アプリケーションエンジニア、システム監査、プロジェクトマネージャ、ソフトウェア開発、第1種、情報処理システム監査、特種)
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公認会計士にとって中小企業診断士の資格取得は、財務・会計領域だけでなく、経営全般のコンサルティング業務を行うなど、キャリアの幅を広げてくれる可能性があります。監査法人などで実務経験を積んだ後に転職を検討する際にも、ダブルライセンスが有利な条件となるかもしれません。
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