最近は、20代・30代の会計士が、ベンチャー企業へ転職する事例が増えています。その背景には、ベンチャー企業側の会計士に対するニーズが高いことと、会計士のマインドの変化があるといわれています。
そこで、会計士のベンチャー企業への転職事情や、転職動向について解説します。

目次

ベンチャー企業の定義と特徴

一口にベンチャー企業といっても、多様なスタイルがあります。まだ起業したばかりで従業員数人のスタートアップベンチャーから、事業を拡大化・多角化して数千人規模で従業員を抱えるメガベンチャーまで、さまざまです。

そこで、まずはベンチャー企業の定義や特徴について、改めて確認しておきましょう。

ベンチャー企業とは?

「ベンチャー(venture)」は、冒険的な試みや投機的事業という意味の英語です。これが転じて、収益が確定していない新規事業や、それに取り組む会社などのことを、ベンチャー企業と呼ぶようになりました。

ベンチャー企業は近年、増加傾向です。その背景として、それまでの産業構造が古くなって時代に対応できなくなっていたり、技術革新に追い付けていなかったりする状況があります。一方で、IT技術の発展とともに育った若い世代の経営者がベンチャー企業を起業し、新しい商品やサービスを生み出しています。

ベンチャー企業の特徴

ベンチャー企業の多くが新興企業であるため、長い歴史を持つ従来型の企業とは多くの点で異なります。では、ベンチャー企業の具体的な特徴について見ていきましょう。

・革新的サービスを提供
ベンチャー企業は、従来にない革新的な技術や商品、サービスを提供することが大きな特徴です。それまでにはなかった利便性の高いサービスやビジネスを提供し、社会に貢献することをミッションに掲げるベンチャー企業も多くあります。

・独自の人事評価や昇進システム
従来の年功序列型の企業とは異なり、ベンチャー企業では実力主義の企業が多いことも特徴のひとつです。経験や年齢を問わず活躍できるチャンスが与えられたり、独自の人事評価や昇進システムを導入していたりする企業も数多くあります。

そのような企業では、成果を上げれば昇進のスピードも早く、任される仕事の裁量も大きくなるため、やる気があって能力がある人にとっては、働きやすい環境が整っています。

・仕事のスタイルを自分自身で確立できる
新しい技術やサービスの開発に取り組むベンチャー企業では、自分の裁量で仕事を動かせる範囲が広く、みずから考えて仕事をしていくタイプであれば、働きやすい環境であることがほとんどです。しかし、指示待ちタイプの場合には、不向きな職場となることもあります。

・経営陣と従業員との垣根が低い
ベンチャー企業の場合、経営陣が若いことが多く、従業員との垣根が低い傾向があります。新入社員が経営陣のノウハウや働き方を直接学ぶことができ、自分の意見をダイレクトに伝えることができるなど、風通しの良い職場が多いといえるでしょう。

・経営が安定するまでの資金調達が課題
革新的な商品・サービスを提供するといっても、顧客が増えて収益が上がり、経営が安定するまでのフェーズでは、資金調達がベンチャー企業の課題となります。ただし、昔であれば銀行からの融資が一般的でしたが、現在では規制緩和が実施されたことで、投資銀行やベンチャーキャピタルからの資金調達がしやすくなりました。

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ベンチャー企業の転職市場

最初にご説明したように、ベンチャー企業にはさまざまな規模の企業があります。転職市場も、成長途上のスタートアップのベンチャー企業なのか、メガベンチャーのように成熟した企業なのかによって、採用の動向が大きく異なります。

小規模のベンチャー企業の場合、スタートアップ直後は会社組織を確立するために必要な人材を獲得しなければなりません。ただし、積極的に採用枠が大きくなるのは、資金調達ができてからです。また、会社組織が整い、経営が軌道にのった後は、必要な人材だけに採用を絞り込む傾向が強くなります。

一方、メガベンチャーの場合には、常に新規事業の開拓に取り組んでいる企業が多く、さらに退職者も多いため、新卒採用だけでは補えない人材を、第二新卒や経験者採用で大量に補う傾向があります。

すでに上場済みで、市場から資金調達を行い、従業員数が1,000人を超え、資本金が数億円となっているメガベンチャーも存在します。メガベンチャーの代表的な企業にはディー・エヌ・エー(DeNA)やサイバーエージェント、楽天、ヤフーなどがあります。リクルートも、今では歴史を重ねてイメージは薄れてきていますが、1963年設立のベンチャー企業から成長したメガベンチャーのひとつです。

こうしたメガベンチャーは、有名大学を含む新卒者の就職先として人気があるだけではなく、多様な業界からの転職者も積極的に中途採用しています。

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ベンチャー企業での会計士採用ニーズ

それでは、ベンチャー企業における会計士の採用ニーズについて見ていきましょう。ベンチャー企業の規模の大きさによって、採用ニーズはそれぞれ異なります。

スタートアップのベンチャー企業の場合

起業してすぐのベンチャー企業や、まだ規模が小さいベンチャー企業の場合、業務の分業化や専門化があまりされていないため、社員全員がオールラウンダー(万能選手)であることが求められます。会計士の場合も、経理や財務だけでなく、会社の資金繰りや資金調達、経営のアドバイスができる人材が求められます。

場合によっては、経営企画やCFO(最高財務責任者)としての採用もあります。事業を軌道にのせ、会社を大きくしていく、やりがいのある仕事を任されることもあるでしょう。

メガベンチャーの場合

メガベンチャーの場合は、すでに業務内容が部門ごとに確立されており、会計士は経理部門や内部監査部門に採用されることが一般的です。さらに、一定のキャリアがあり、マネジメント能力もある会計士に対しては、役職付きで部門の統括的なポジションとして採用されるケースもあります。

いずれのメガベンチャーの場合も、経理・財務部門での採用活動は3月の決算を控え、夏から秋にかけて活発になる傾向があります。ほかに、企業の成長過程に合わせてIPOを目指すタイミングの採用もあり、上場に向けた社内統制や書類作成のスキルが求められます。また、海外進出や企業合併などを目指す段階での採用では、英語力やM&Aの経験などが求められます。

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CFO(最高財務責任者)になるには?

スタートアップのベンチャー企業では、会計士をCFOとして採用するケースがあることをご紹介しました。ここでは、CFOの特徴や業務内容、そしてCFOになるにはどのようなスキルや能力が求められるのかについて紹介していきます。

CFOは企業財務のトップ

CFOは、Chief Financial Officerの頭文字を取った略称で、最高財務責任者という意味です。近年では、日本でも経営のグローバル化に伴い、財務管理の透明性を求められるようになりました。さらに、経営指標の決定の際にも、欧米の機関投資家を中心とした株主の意見が重視される時代になったため、財務戦略を経営戦略に盛り込める、財務の知識に長けた人材が必要とされるようになりました。

その役割を担うのが、企業財務のトップであるCFOです。欧米の企業では、CEO(最高経営責任者)と同様にその地位が確立されており、CEOへの足がかりとしてCFOでキャリアを積むというケースも少なくありません。

  

CFOに求められるスキルと能力

CFOになるには、専門的なスキルや能力が求められます。具体的には、次のようなスキルや能力が必要となります。

・財務や経理についての深い知識
CFOに求められる最も重要な要素が、会計や税制、ファイナンス、リスクマネジメントなどのさまざまなスキルと知識です。IPOやM&Aを行う場合は、財務の専門家としての立場から、まさに指導者的な立場で動くのがCFOです。日本では財務分野以外からCFOのポジションに就くケースもありますが、海外では会計士の資格を持つ人材がCFOになるケースが圧倒的に多いのが実情です。

・経営者としての視点
CFOは、企業における経営幹部の一員です。財務に関する業務だけではなく、会社の経営戦略を立てたり、M&AやIPOの際にはプロジェクトリーダーとして経営判断を行ったりする場合があります。そのため、経営者としての視点を持つと同時に、社員やプロジェクトメンバーを統率できるリーダーシップが求められます。

・コミュニケーション能力・折衝能力
経営幹部であるCFOは、自分が立てた経営戦略を、従業員にわかりやすく伝えることができる高いコミュニケーション能力が求められます。また、対外的にも、投資家や株主に対して経営状況や経営戦略を説明したり、資金調達やM&Aをまとめたりすることから、折衝能力が必要になります。

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ベンチャー企業に転職する会計士の不安とは?

会計士がベンチャー企業に転職する場合、いろいろ不安なこともあることでしょう。年収が大幅に落ちることがないのか、固い感じの監査法人などから若くカジュアルな雰囲気の職場へすぐになじめるのか、そしてベンチャー企業へ転職した後にはどのようなキャリアパスがあるのか、等々です。

そこで、ベンチャー企業への転職の不安を少しでも解消できるよう、これらの要素について解説しましょう。

ベンチャー企業の給与水準

ベンチャー企業の給与水準の実態は、いったいどのくらいなのでしょうか。気になるところですが、ベンチャー企業で働く会計士の、年収に関する公的な統計データはありません。

そこで、上場を果たしている日本を代表するメガベンチャーの中から、いくつか平均年収を見てみましょう(東洋経済新報社「会社四季報」2019年7月2日時点)。

<平均年収>
・楽天:年収720万円
・サイバーエージェント:年収709万円
・LINE:年収716万円

メガベンチャーの平均年収は、概ね約700万円程度であることがわかります。ただし、ベンチャー企業の場合、伝統的な日本企業の年功序列制や階級制とは異なる給与体系をとっている企業も多く、実績や成果によって大幅な給与アップが見込める可能性があります。ほかにも、ポジションによって年収は大きく異なります。

また、日本でも1997年の商法改正により、ストックオプション制度が認められました。ストックオプションとは、従業員や取締役が、自社株をあらかじめ定められた価格で取得できる権利のこと。入社の条件にストックオプションを付帯すれば、自社が上場したり業績が上がったりした場合に、巨額のインセンティブを得ることが可能です。このように、ベンチャー企業の給与には、年収だけでは測れない要素が多くあります。

ベンチャー企業に向いている会計士とは?

一般的にベンチャー企業に向いているとされる会計士の特徴には、次のようなものが挙げられます。

・勢いのある経営者の右腕として、冷静な判断が行えるブレーキ役になれる
・監査法人の企業風土を引きずって、上から目線で指導者のように振舞うことがなく、コミュニケーション能力がある
・何事にも前向きで、みずから進んで新たな仕事を作り出し、成長する姿勢を持っている

しかし、ベンチャー企業の事業や経営、企業風土は、会社によって千差万別です。そのため、転職に際しては、最終的に自分のキャラクターやキャリアに合った企業を選ぶことが大切です。自分のキャリアとやりたい仕事が、転職先の事業内容や経営理念とマッチしていれば、検討してみてもいいでしょう。

ベンチャー企業でのキャリアパス

ベンチャー企業の場合、年功序列ではなく実力評価主義の会社が多いのが特徴です。ベンチャー企業に転職して会計士としてのキャリアパスを考えるなら、次のようなポイントに留意しておきましょう。

<ベンチャー企業に転職する際の留意点>
・将来的に監査法人への復帰などを考えている場合には、財務畑でキャリアを積むのが得策
・ベンチャー企業でスタートアップを成功させた場合には、他のベンチャー企業からヘッドハンティングを受けるケースが多い
・CFOとして経営者の感覚を磨いて、CEOとして起業するキャリアパスもある

ベンチャー企業に転職する場合には、自分の将来にわたってのキャリアプランをしっかりと持ち、転職先のキャリアとマッチしているか、よく検討することが重要です。

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ベンチャー企業への転職でも、基本となる会計業務は同じ

ベンチャー企業に転職しても、監査法人への復帰の道が絶たれるわけではありません。また、ベンチャー企業でのキャリアは、財務だけではなく、経営者感覚を身に付けるチャンスにもなり、将来的に独立起業するための貴重な経験にもなります。

会計士として、あるいは企業人として、さまざまなキャリアパスにつながる可能性があるベンチャー企業への転職。自分の仕事やキャリアを見つめ直すためにも、ベンチャー企業への転職を検討してみてはいかがでしょうか。

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ベンチャー企業への転職成功事例