「会計監査で培ったスキルは、事業再生支援において大きなアドバンテージになります」

公認会計士の専門性を活かせるフィールドは、監査法人やFAS(財務系コンサルティングファーム)、事業会社の経営企画担当など多様にあります。私は外資系のコンサルティングファームやBIG4監査法人、FASで経験を積んだ後、EY新日本有限責任監査法人の大阪事務所に転職し、アドバイザリー部門でM&Aや事業再生支援のプロジェクトに従事してきました。

どのプロジェクトもやりがいをもって取り組んでいましたが、一方では、「自ら調査・提案した内容が本当に的を射たものなのか、確かめてみたい」という思いもありました。ちょうど、タイミングよく官民ファンドから声掛けをいただいたこともあり、「自分自身がプレイヤーとなって活動し、新たな知見を得よう」と決意しました。

官民ファンドとは、政府と民間企業の合同出資により設立したファンドのことです。ここで私は、投資検討や投資判断を下す際に必要となる「財務分析」において、公認会計士の専門性を発揮しました。

そして、官民ファンドでの経験を活かすべく、2018年にEY新日本有限責任監査法人大阪事務所に戻ってきたのです。

EYストラテジー・アンド・コンサルティング（以下・EYSC）大阪事務所のTurnaround & Restructuring Strategy（以下・TRS）では、公認会計士を始め、さまざまな専門性を備えたメンバーが、事業再生に関わるご相談に応じています。大阪事務所では、関西を中心に西日本全域を担当エリアとしています。

案件の多くが金融機関からの紹介であり、債務の弁済が困難であるなど、クライアントが何かしらの窮境状態に陥っています。そのため、金融取引を安定化させることが、一義的な目的となります。

私たちTRSのメンバーは、事業・財務デューデリジェンスによって窮境要因を分析することからスタートします。窮境要因を洗い出したら、要因を除去するための施策を検討し、事業計画の策定支援に入ります。近年は金融機関の要請もあり、クロージング後のモニタリングを行うケースも少なくありません。

近年、新型コロナウィルスの感染拡大によるサプライチェーンの寸断をはじめ、世界規模で経済状況が混迷を極めています。消費者の行動も大きく様変わりし、ビジネスの不確実性がますます高まりつつあります。危機的状況に置かれた企業もあり、コロナ禍において緊急の資金繰り対応を担ったケースもあります。

もちろん、私たちの使命は、コロナ禍での緊急支援に限ったものではありません。平時・有事の別なく、いかなる時も私たちはクライアントと真正面から向き合います。特に近年は、事業・財務デューデリジェンスや再生計画の策定、金融調整、クロージングのモニタリングといった従来型の事業再生業務に加えて、プラスαの役割が求められるようになってきました。

それはすなわち、企業の本質的な再生・再成長に向けた支援になります。たとえば営業プロセスに課題がある場合、従来型の再生支援では、クライアント主導で対応してもらっていましたが、今後は私たちTRSがある程度介入し、クライアントに伴走しながらプロセス改善に取り組んでいくようなかかわり方が求められています。

このように、事業再生支援において、より質の高いサービスが求められていますが、TRSには、公認会計士をはじめさまざまな領域のプロフェッショナルが集結しています。そして、EY Japanは税務や法務、監査など、多彩な領域をカバーするメンバーファームで構成されています。

こうしたEYならではのネットワークを活かすことで、私たちTRSは事業再生支援において質の高いサービスを提供することができるのだと自負しています。

これまで数多くの事業再生プロジェクトに携わってきましたが、そのたびに、「クライアントの事業と雇用を守ることこそが、私たちの使命である」と感じます。事業再生支援は、決して華々しい仕事ではありません。時には、クライアントの再生において債権放棄を要請せざるを得ない状況と判断し、金融機関と激しい議論を交わすこともあります。幾度となく苦しいシーンと向き合ってきましたが、それらを乗り越えた先には、大きな達成感が待っています。クライアントはもちろん、金融機関から感謝の言葉をちょうだいすることもあり、すべての苦労が報われた気持ちになります。

EYSC大阪事務所は専門領域別に部門が分かれていますが、部門間の隔たりが一切なく、状況に応じて部門を横断したプロジェクトに携わることも可能です。そのため、好奇心が旺盛で、「幅広い領域を経験できる」点に惹かれて入社する人が多いですね。

また、EYSCでは、所属部門という縦軸に加えて、セクターという横軸の活動もあります。たとえば私は消費財セクターを担当しており、消費財関連企業のビジネスアジェンダについて話し合っているほか、最新の市場動向などを共有しています。この活動により、どの部門のメンバーもあらゆるセクターの最新情報や検討課題について知ることができます。

各セクターは若手スタッフも含め、さまざまな年代で構成されていますが、EYは上下の関係がフラットなので誰もが活発に意見交換しています。もちろん、ダイバーシティの考えも定着していますし、ワークライフバランスも充実しています。休日休暇をしっかり取って、メリハリある働き方をするのが、EYに共通したスタイルです。

これまで申し上げてきたとおり、私たちTRSは従来型の事業再生支援だけではなく、企業が抱えている本質的な課題と向き合いながら、クライアントの思考や行動に変化を促すようなご支援もしていきます。このような取り組みや考えに共感してくれた仲間と、共にクライアントの再生・再成長を支えていきたいと考えています。

もしも皆さんが事業再生支援に興味がおありなら、ぜひチャレンジしていただけたらと願っています。コンサルティング経験の有無は問いません。監査経験のある方であれば、そのスキルを大いに発揮できるはずです。たとえば担当してきた業種の事業理解と業務プロセスの知見。特に、事業活動を数値化し、財務諸表に落とし込んでいくスキルは会計士ならでは。これらのスキルは、事業再生支援において間違いなく大きなアドバンテージとなることでしょう。

※役職、記事内容などは取材時のものになります。