自分らしさを見つけるキャリア

この度、こういった場所で自分の話をする機会を頂き、とてもありがたく思っています。自分の歩いてきた道がどれくらい皆さんのお役に立てるか分かりませんが、出来る限り有りのままを話したいと思います。

「生い立ち」から話すと長くなりそうですが、私は愛知県の名古屋市で生まれ、育ちました。皆さんも幼稚園や保育園くらいのときに、大きくなったらなりたいものを考えて、紙に書いたりすることがありませんでしたか？男の子であれば、警察官や運転手など、そして女の子であれば、お花屋さんやケーキ屋さん、習い事をしていればピアノの先生という人もいたかもしれません。結局、子どもの頃の職業というのは、自分に見える範囲の大人がしている仕事の中から、素敵そうに感じるものを選んでいるんだな、と思います。

私も女の子にとって大人気の「ケーキ屋」、今風に言えばパティシエールになりたいと思っていました。台所に立つのが好きで、小学校に入ってからお菓子作りを続け、高校生になって進路を選ぶことになったとき、ようやく我に返ったのです（笑）

そのまま自分の夢を貫いて製菓の専門学校に通うか、それとも皆と同じように大学に入学するか。私が選んだのは、後者の道でした。

高校生くらいになると、私の周囲の女の子たちのキャリア選択も変わっていくのですが、看護師になりたいとか、デザイナーになりたいとか、実は本質は子どものころからあまり変わっていなかったりします。そう、相変わらず、自分に見える範囲の大人がしている仕事の中から、素敵そうに感じるものを選んでいる。

看護師を目指す友達に「ケーキ屋さんなんて子どもみたい」と笑われたとき、少し嫌な気持ちになりながらも、確かに私は世の中の仕事をもっと知らないといけないとも思ったのです。そのためには「自分に見える範囲の大人」を出来る限り広げなければいけない。父に相談したら、「それなら公認会計士を目指してみなさい」と言われ、商学部のある大学に入学して、在学中に運よく試験に合格しました。

合格後、大手監査法人の大阪事務所に就職しました。国内上場企業の監査業務に加え、当時導入の機運が高まっていたIFRS対応のためのプロジェクトにも参画したりと、もともとケーキ屋さんを目指していた私からは想像もできないような、スケールの大きな仕事に取り組むようになりましたが、毎日が非常に刺激的で充実していました。

監査法人の働き方の中で特に気に入っているのが、毎週のように赴くクライアントが変わるということです。今週はA社、来週はB社というように、行き先が目まぐるしく変わっていく働き方は自分にとって飽きの来ない楽しいものでしたし、A社の仕事で業務フローの書き方を先輩に教わったら、それをB社でも活かしてみる、といった小刻みなPDCAができることも成長を実感しやすい環境だと思っています。

それ以上に面白いと思ったのは、企業同士の取引のつながりでした。例えば小売業の会社は日ごろ消費者として買い物をしているので名前を良く知っているのですが、そこに商品をおさめる卸業者の存在があったり、あるいはその小売業の親会社が大手の総合商社であったり、企業同士が取引関係や資本関係で繋がっている構図を知った時に「ああこの仕事を選んでよかった」と思ったのです。

公認会計士になることで「自分に見える範囲の大人」を広げたいと思っていた私の気持ちは、色々なクライアントに話を聞く機会に恵まれたおかげで、十分すぎるほどに充足されました。

就職人気ランキングに出てくる会社のほとんどは、BtoCの企業です。私が大学を卒業するころの人気企業と言えば、都市銀行や航空会社、人気テーマパークの運営会社などで、言ってみれば大学生が直に接することができる企業です。それはやはり「自分に見える範囲の大人」から就職先を選んでいるわけですが、学業と並行してそういった視野を広げるための時間を持つことはそう簡単でもありません。私のように働きながら世の中を学ばせてもらえる立場は、すごくありがたいものだと改めて感じます。そしてそれこそが、公認会計士という資格の持つ最大の魅力なのではないかと思います。

そんな私が今興味を持っているのが教育の分野です。大人になる前に色々な職業や働き方、生き方があるということを、少しでも多くの子どもたちに伝えたいと思っています。監査法人でのキャリアはまだ継続中ではありますが、その中で日本公認会計士協会が主催している子ども向けのイベント「ハロー！会計」などを手伝ったりして、子どもたちにとっての「自分に見える範囲の大人」を広げる活動をしています。

いつかは教育業界に身を置いてみたいと思いつつ、色々な企業のビジネスに触れることのできる監査法人の仕事はやはり魅力的で、なかなか自分の身の振り方を決めることができません（笑）

ただ一つ確かなことがあります。実はこの記事を書いている今、私は産休を頂いている身です。生まれてくる子がどんな仕事に興味を持ち、大人になっていくのか。かつて父がそうしてくれたように、私も我が子のためにしっかりと道を示してあげられるように、これからも勉強を続けたいと思っています。

※記事内容などは取材時のものになります。