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落語家会計士が語る、AI時代の独立の極意
2018/04/27
コラム
落語家会計士が語る、AI時代の独立の極意

公認会計士の基本的な業務といえば監査法人での監査を第一に挙げることができます。また、それ以外に、一般事業会社やコンサルティング会社への転職など、様々なキャリアが考えられます。

そのような中で「公認会計士として独立する」という選択はアリなのかナシなのか。
独立して事務所を構え、公認会計士として活躍する傍ら、社会人落語家としても存在感を増してきた石倉英樹先生が、独立開業に対する本音を語ってくれました。

独立するなら税理士開業が一般的でしたが・・・・・・

結論から申し上げますと、公認会計士一本で独立することはオススメしません。
その理由は簡単で、公認会計士の主な業務では、上場企業など一定以上の規模の企業を顧客にするわけですから、監査法人やコンサルティング会社など、ある程度規模の大きい組織の中にいないとその能力を発揮できないためです。つまり、公認会計士の資格だけを持って独立することは一般的にハードルが高いと考えたほうが良いでしょう。

このため、独立する際は税理士としても登録し、税務業務を実施している公認会計士が多いと思います。中小企業を中心とした会計顧問や記帳代行、法人税・所得税の確定申告業務を受注しながら、独立後の事業を大きくしていくというスタイルが一般的でしょう。

そして今後は、税理士業務で開業することも難しくなっていくと思います。

監査や単純業務は機械に取って代わられる?

私が監査法人に勤務していた際に、ぼんやりと抱いていたのは”危機感“。

それは、監査という仕事はいずれ無くなるのではないか、という危機感です。短期的には全て無くならないまでも、ルーティン業務は徐々に機械に取って代わられ、その結果、仕事の報酬は下がっていくだろうという漠然とした不安がありました。

近年、『AIによって奪われる職業ランキング』という話題の上位に公認会計士が含まれていることは、すでにご存知のことと思います。つまり私が10年以上前に漠然と感じていたこの危機感が、ここ数年の間に現実味を帯び始めているということです。

特に、仮想通貨の根幹として発明されたブロックチェーン技術によって、監査に限らず、単純作業や繰り返しの手続きなどは機械に置き換えられていく可能性が日々高まっています。

公認会計士の可能性はプラスルファにあり!
落語家会計士が語る、AI時代の独立の極意

監査法人に残り監査業務を続けていても、高度な専門的判断を除いて、やがては機械に取って代わられる可能性がある。
独立し税理士事務所を開業したとしても同様の不安を拭うことはできず、定型的な記帳代行、申告業務についても機械化の波に飲み込まれてしまうかもしれない。
このように考えると、公認会計士の未来は明るくないように思われます。

しかし、監査が機械化されたとしても、公認会計士として培われた「数字を捉える感覚」や「決算書を読み取る力」は、いつの時代もビジネスをしていく上で基礎となる能力。皆さんが自分では当たり前と思っているその能力は、様々なビジネスをしていく上での重要なベースとなることは間違いありません。

つまり、その能力をベースとして「別の能力」を掛け合わせることが出来れば公認会計士の未来は明るいと言えるでしょう。

例えば、「公認会計士×経営力」、「公認会計士×マーケティング」、「公認会計士×IT」など、自分にとってのプラスアルファさえあれば、独立という選択肢を含め、人とは異なる道が見えてくるかもしれません。

プラスアルファを見つけるためには食わず嫌いをやめること

私自身は、公認会計士試験合格後に監査法人で監査業務を経験したのち、会計系コンサルティング会社に転職して経験を積み、その後、独立をするに至りました。
会計系コンサルティング会社では、IPO準備支援、J-SOX対策、経理業務の効率化支援等のプロジェクトに関わったりセミナー講師をしたりしました。ここでの経験は、公認会計士として当たり前と言えるものではありません。でも、今振り返るとその「意外な経験」が現在の強み、つまりプラスアルファへとつながっています。

例えば、セミナー講師。
始めた当初は緊張の連続で苦労しましたが、回数を重ねるごとにレジュメの作り方や、分かりやすく伝えるための話し方などの経験が蓄積され、気がつけば今ではセミナー講師が独立後の主要業務の一つになっています。

もう一つはメールマガジンの執筆。
これも始めた当初は見よう見まねで取組んでいましたが、継続的に何年もメルマガを書くことで文章を書くことが苦ではなくなりました。独立後の今でも会計事務所のメールマガジンを自分で書き続け、お客様や取引先との継続的な接点作りに大いに役立っています。

これらの経験から言えることは、「食わず嫌いはもったいない」ということ。
始める前から好き嫌いを言わずに取りあえずやってみる。そして、少しでも興味がわいたら自分で少しずつ改良しながら継続してみる。そうすると、気づいた時にはその経験が、「公認会計士×α」のアルファになっていくのです。

「公認会計士」×「相続専門の税理士」×「落語」
落語家会計士が語る、AI時代の独立の極意

さて、セミナー講師を継続的に続けた結果、いつしか人前で話すことが楽しくなり、そのスキルをさらに磨こうと、独立開業と同時に落語を習い始めました。座布団に座った一人の人間が何人もの役を演じていく落語はまさに究極の話芸。声の出し方や間の取り方、説得力を持って話を伝えていくリズムなどは「何かを伝える」というスキルを高めてくれます。

さらに、メルマガを書き続けたことによって養われた文章を書く力が役立ち、今では創作落語のシナリオを書くことにも活かされています。そして実は、創作落語で扱うテーマは、私の本業である「相続」。一見堅苦しく、重いテーマである相続対策を、落語を通じて笑いに変えることで、今では多くの方に必要な情報を届けるコンテンツとして成長しました。

これまでの「意外な経験」がプラスアルファの力となり、プラスアルファの力が本業を支え強化するコンテンツを生み出す。
公認会計士にプラスアルファの作用が働いた時、機械に取って代わられる可能性が低くなる。それだけの付加価値が生まれてくるのです。

自分探しはもうやめる?

自分の得意なことは何か?
自分は何が好きなのか?
自分にとってプラスアルファになる部分は何なのか?

これに気付くことはとても大事です。
そうはいっても「自分では自分の事がよくわからない」のが世の常です。他者からはそれが強みに見えても、自分では当たり前すぎて、それが強みだと思わないことが往々にしてあります。

その場合は、誰かの力を借りること。得てして、外から見た客観的な視点の方があなたの強みを正確に捉えてくれることがあります。そういう意味では、転職エージェントなど外部のカウンセリングを受けることも役立つでしょう。

そしてもう一つ大切なことは、今の職場で与えられたことを楽しんで前のめりにやってみること。「何でこんな仕事を任されるんのだろう?」と前向きになれない場合でも、そこには何らかの意味があります。
そこにこそ、プラスアルファが秘められているかもしれないのですから。

独立は公認会計士にとって1つの選択肢。
「公認会計士×α」として独立することができれば、経済的、精神的、時間的な自由をもたらしてくれるかもしれません。

その「α」はなんなのか。
自分の事ほど自分ではよくわからないものです。あなたの持っている潜在的な能力は、あなたの周りにいる上司や同僚の方が客観的に見ていてくれるものです。
ひとりで考え込む自分探しもいいですが、周りの客観的なアドバイスを聞いたり、任された仕事を前のめりにやってみたりすることが大切です。

実はそれが、独立に向けた大切な歩みになって行くのです。

参遊亭英遊(さんゆうていえいゆう)こと
石倉英樹(いしくらひでき)

石倉英樹さん写真

『笑って学んで健康に!』をモットーとして、一見硬いテーマとなる相続問題や認知症対策、振り込め詐欺対策などを『終活落語』で笑い飛ばす社会人落語家。
主に、東京・埼玉の敬老会や自治会を中心に口コミで噂が広がり、終活落語の高座の数は年間80回を超える。本業は相続対策専門の公認会計士/税理士。石倉公認会計士事務所の代表。
URL https://www.ishikura-cpa.com

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